エルフの村
【23】
「ぁ‥‥‥‥‥‥」
開いた口が塞がらない。
村はとても穏やかな雰囲気で戦火の地域とは思えないものだった。畑を力強く耕す男性たちに、家の前で談笑をする女性たち。そして村を元気に駆け回る子どもたち。平和のオーラであふれた村だ。
だが‥‥‥
「フフフッ。驚きましたか?」
セフィアが俺の『信じられない』といった表情を見て笑っている。
村の人々は一見、普通の人間に見える。しかし体のある一部分だけがおおよそ通常の人間ではありえない形状をしているのだ。
──みみが‥‥‥ミミガ‥‥‥
「耳が長い⁈」
やっと言葉を発した俺を見て、またセフィアがくすくすと笑った。
そう、彼らは耳が異常に長いのだ。通常の人間の三倍はあるだろうか。そして先端が鋭く尖っている。そんな俺たちの世界には存在しない生き物、だが俺はそんな生き物に心当たりがある。
「これはいわゆる‥‥‥」
「はい。ここはエルフの村なんです。亜人族エルフ、爽真さんも聞いたことくらいはあるんじゃないですか?」
聞いたことはある。俺のいる世界でも書物や画面の中では頻出の存在だ。たしかにセフィアが最初にこの世界にはエルフやドワーフがいると言っていた。だが実際に目にするとどうだ。
──ほんとうにエルフだ‥‥‥
違和感とともになんとも言えない感動がこみ上げてくる。その感動は最初にドラゴンと出会った時とは違う、少し何かを期待してしまうようなそんなものだった。
「あ、旅人の方ですか?」
若い女性が寄ってきた。
「はい‥‥‥」
「ここは見ての通り小さな村ですがゆっくりしていってくださいね」
この和やかな雰囲気にさっきまでの死と隣り合わせだった状況が夢だったのではと疑いたくなるほどだ。
「この村は戦争中だというのになんでこんなに平和なんだ?」
さっきまでの状況とのギャップにおそらく今、俺の頭の上にはハテナマークが三つくらい浮いているのだろう。
俺の疑問にはセフィアが答えてくれた。
「ここは敵国が手出しできない、いわば中立地域的な場所なんです」
「中立地域? そんな場所があるのか?」
「厳密にはそういう条例とかがあるわけではないのですが‥‥‥
もともとエルフというのはここから遥か西に領土を持つ種族です。ですがあのように領土から離れて暮らすものたちもいます。
エルフは基本的に温厚な性格で、他の種族の領地に攻め入って、そこを自分たちの領地にしようとはしないですし、この村もどこかしらで人間族に了承をとって作った村だとは思うのですが‥‥‥」
「? それだけではこの村が安全だということにはならないんじゃないか?」
「重要なのはここからです。
かつて一つの国がエルフが村を気に入らず、自国にある村の一つを攻撃したことがあるんです。そしてそれによって人間族はエルフという種族の恐ろしさを知ることになったんです」
「恐ろしさ? エルフというのは恐ろしい種族なのか?」
「攻撃を仕掛けた国は壊滅状態に追い込まれたんです」
「壊滅⁈」
「はい。エルフは温厚な性格と共にとても仲間思いの強い種族なんです。エルフの村を攻撃した国はエルフ本国からの攻撃に遭い、ほぼ一週間で軍隊が全滅したと伝えられています」
「そんなにエルフは強いのか?」
「エルフは強いです。一体のエルフに人間が十人でかかったとしてもまず勝てないでしょう」
──温厚そうな見た目によらず恐ろしい生き物だ‥‥‥その国はなんで攻撃なんて仕掛けようと思っちまったんだか。
「ですから、人間族全体としてエルフには手出しできない。ゆえにエルフの村は中立地域的な場所なんです」
「なるほど。つまりエルフからの反撃を恐れてってわけね」
「ですが見ての通り、普段は本当に温厚な種族です。私たちみたいな旅人も暖かくもてなしてくれますし、強いからといって上から見下してくるようなこともありません。こういった困った時には頼りになる存在です」
「それじゃここではエルフに手出ししない限り、安心して休息を取れるということだな?」
「はい。ここでこれからどうするかを決めましょう」
──そうだ。エルフがもてなしをしてくれるのはありがたいが、今は先を急がなければいけない。のんびりしていたら俺が首都にたどり着く前に国が滅び、彩奈が殺されてしまうかもしれない。
ファンタジーの生き物との遭遇に浮かれていたい気分を押し殺しながら、俺は案内されるまま村の中へと入っていった。
読んでいただきありがとうございます。
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あと‥‥‥本作品、こんな題名の方がいいのでは? というご意見ありましたら教えてください 人´ω`)オネガイ~!




