翼族との戦争!
「村長!村長!」
外が騒がしい。
俺がゆっくりと目を開くとそこには床で寝る武、天野、北条、賢人がいた。
「村長!」
外から賢人を呼ぶ声が聞こえる。
俺はその声に焦りと恐怖が含まれているのを感じて、
急いで扉を開いた。
「あ、そんちょ――――!」
俺を見て小人族の青年は一瞬驚いたようだが、すぐに心を落ち着かせたようで、
「おはようございます。信也様。村長はお見えでしょうか?」
と聞いてきた。
「ああ、そこで寝ているよ。」
というと小人の青年はすぐさま中に駆け入り、
床でいびきを掻いている村長を苦労して起こした。
「む。何事じゃ?」
賢人が寝ぼけ眼で聞くが、次の言葉を聞いて、一気に目が覚めたようだ。
「翼族が宣戦布告を行ってきました。」
「武、これを羽織れ!」
俺は漆黒のコートを武に投げ渡した。俺も同じものを羽織る。
「天野!北条!」
俺は廊下に出て隣の部屋の二人に声をかける。
「何?」
天野が出てきたので先に天野の装備を渡す。
「これを羽織っておけ。」
そう言って純白のマントを渡す。
「これは?」
そう聞いてくるのでささっと説明する。
「なるほど。それは便利だね・・・」
天野は驚いたようにそれの効果についてしきりに感心していた。
「ゆうひ~。」
天野に頼んで北条を廊下に呼び出す。
少しすると北条が出てきた。
「すまない服部。すこし着替えに手間取ってな。」
謝る北条に「いい。」と一言だけ言ってあるものを渡す。
「これは・・・。」
俺の渡したものを見て北条が不可解そうな表情をする。
俺が渡したのは純白のフレームのメガネだ。
「私は目が悪くはないんだが・・・。」
困惑する北条にそのメガネの効果を説明する。
「それは遠視能力の付いたメガネなんだ。それを使えば弓で戦う北条にはピッタリだろう。」
そう言うと北条は納得した顔をして、
「じゃあ広場に行こうか。」
そう言った。
~広場~
広場には俺たち4人と小人族の住人が30人程集まっていた。
「これを使う時が来たか・・・。」
俺は小人族に作ってもらった2丁の拳銃をホルスターにしまう。
俺の2丁の拳銃は1丁はダブルアクション。
そしてもう1丁の拳銃はリボルバーアクションだ。
ダブルアクションの拳銃『ライト』を右手に、
リボルバーアクションの拳銃『レフト』を左手に持つ。
(余談だが俺は自分のネーミングセンスの無さは実感している。)
予備のマガジンを小人に持ってもらい、俺は準備を終えた。
~武side~
武はメリケンサックを両手に嵌めた。
「はぁ。天野さんはいつ俺と話してくれるようになるんだろう。」
ちょっと呟いた声が北条に届いたようで、変態を見るような目をしてきた。
北条は結構美人なのだが、やっぱり俺としては天野さん一筋だな。
などと思いながら坦々と準備を進める。
「これでよし。」
俺は気合を入れるために立ち上がりながら頬を叩いた。
メリケンサックを付けたままで・・・・。
~輪side~
「いって――!」
バカが叫ぶのが聞こえる。
私はうんざりとしながら用意を進めている。
私の武器は鉈だ。
柄の部分は神木で作ってあり、よほどのことがない限り折れる心配はないだろう。
信也からもらった真っ白なコートも羽織り、準備を終える。
「はあ。」ため息を気付けば何度も吐いていた。
理由は単純だ。昨日信也に完膚無きまでに叩きのめされたからだ。
まあ、殴られたわけでもないが。
彼女の人生において敗北という2文字は今まで存在しなかった。
武術に優れた家系の中でも輪は群を抜いており、
物心ついたころには大の大人とでさえ渡り合えた。
そんな彼女が引き分けた、いや、負けたのだ。
天野は鉈をしっかりと持ちながらも、意識はここにあらずと言った面持ちであった。
するといきなり後ろから手が伸びて来て、天野の腋に手を差し込み、くすぐり始めた。
「にゃわ!うひゃ、うひゃひゃひゃ。きゃわ!」
天野はくすぐりが特に苦手らしく、
くすぐりが終わった後もしばらく地面をのたうちまわっていた。
「ゆ、ゆうひ~。」
天野が涙をこぼしながら犯人を見る。
「ごめんね。輪ちゃん。」
北条が微笑みながら天野を見る。
そして、他の人に聞こえないように小さな声で、
「悩まなくても大丈夫。何かあったのなら私が助けるから。ね?」
と優しい声で囁いた。
天野はじっと北条を見ていたかと思うと、いきなり抱きつき、
「ありがとう、夕日。」
とお礼を小さな声で言った。
その頃には昨日の敗北の悲しみなどはすっかりと消え去り、
北条の暖かさに触れて、天野は幸せな気分でいっぱいだった。
~夕日side~
落ち着いた天野をどうにか引き剥がした北条は先ほどとは打って変わり、
真剣な面持ちで信也に話しかける。
「服部。そろそろだな。」
声をかけながら北条はメガネを取り出してかけた。
信也も北条の方を向き、
「ああ。準備はいいな。」
と鋭い視線をこちらに向ける。
「ああ!勿論だ!」
北条は元気よく返事をした。
「ふぅ。」
俺は息を吐きながら銃をホルスターから取り出す。
リボルバーアクションの『レフト』は最高6発しか撃てないため、
今はまだ出さないでおく。
そのかわり『ライト』よりも威力は高いのだ。切り札としては申し分ないだろう。
そんなことを思いながら信也は『レフト』の最終確認を行った。
「来た!」
小さなそれでいて鋭い声を天野が漏らす。
「北条、頼む。」
それだけで伝わったようで北条は矢を弓に番え、放った。
それは宙に浮く翼族の一人に刺さり、絶命させた。
しかし、ここで4人には到底理解できない現象が起こった。
死体が塵となって消えたのだ。
これにはさすがに俺たち4人は驚き、飛び出そうとしていたが、足を止めてしまった。
それが相手に落ち着かせる時間を与えてしまったのである。
「ええい!不意打ちとは卑怯な!!さすが小人だな。
そんなことをしなければ我々の同胞の一人も殺せぬとわ!」
相手のわめき声を聞き、やっと4人は冷静になり、
それぞれの持ち場に駆けて行った。
俺は茂みに隠れ、辺りを窺う。
そして近くにいる翼族に向け、銃を発砲した。
『パン!』
乾いた音が辺りに響き、1人の翼族の命を奪った。
「な、何!?矢は飛んできていないぞ!」
翼族の一人が叫ぶ。さすがに地面に落ちた小さな弾丸は見つけられない様だ。
「あっちから大きな音がしたぞ!」
そう一人が言うと全員が俺のいる方に向かって走ってくる。
しかし俺は『ライト』で全ての敵をしっかりと仕留める。
「死体が無くなるから不意打ちはされないし、楽だな。」
一人で呟きながら俺は全ての敵を片付け、予定通り北条の下に向かった。
遠距離から翼族を貫く。
私はこれで二十人目を撃ち落とした。
「はぁ。はぁ。」
若干息が切れてはいるが、まだいけるだろう。
服部にもらったメガネのおかげで精度が上がっているのがよくわかる。
「おい、北条。」
いきなり後ろから声をかけられてビックリしたがすぐに服部だと分かった。
「ああ、服部。もう行くのか?」
私が問うと服部が頷く。
私は打ち合わせのとおりに輪ちゃんの近くにある木に向かって矢を放った。
「カンッ!」
私が潜んでいる茂みの右斜め前にある木に矢が刺さる。
私はすぐさま茂みから飛び出し、近くの翼族に向かって鉈を振るった。
「ぐぎゃあ!」
敵は吹き飛び、空中で塵に変わる。
そして大声で叫ぶ!
「キャーーーーー!」
突然大きな声で叫んだので、翼族は一斉に天野に注目した。
そんな中武はすぐさまサングラスを取り出して、かけた。
「キャーーーーー!」
天野さんの悲鳴が聞こえる。
俺は急いでサングラスをかけた。
そして天野さんの服から閃光が溢れた。
「うわ!まぶしい!」
隣の北条が叫ぶ。
確かにサングラスをかけているのにその閃光は目を焼くのではないかと思う。
「走れ!」
小さな声で北条に向かって叫び、戦場を横切る。
あの閃光は天野に渡した、『光の加護を受けたコート』によるものだ。
作戦通り、翼族は閃光によって目を焼かれ、地面に蹲っている。
その間を縫うように俺と北条は奥に向かって走った。
そして、サングラスは闇の加護をつけたガラスをフレームに入れただけの代物だ。
「ふぅ。」
俺と北条は奥にある大きな岩の陰に隠れた。
「さて、あと数人だな。」
奥を覗き込んだ北条が告げる。
「行くか。」
俺はそう言うと奥に向かって走り出した。
「ここにいて良かった。」
そう言って俺と北条の前に一人の翼族が立ちはだかる。
「ワシは翼族の二番手、剣。お手合わせ願おう。」
渋い声で剣は喋る。
「あいつは強いな。」
俺が北条に小さく告げる。
「ああ。あの大真槍もそうだが、他にも何かありそうだ。」
戦闘は一瞬で始まった。
剣が一気にこっちに攻撃を仕掛けてきた。
「せい!」
その大真槍で俺を突いてくる。
「おわ!」
俺は横に転がりながら避ける。
「北条!」
俺が叫ぶと北条が矢を放った。
その矢は一直線に剣に飛んで行き翼を貫く。
かのように見えた。
しかし、剣の翼は矢を弾いたのだ。
「な!」
俺が驚愕に声を漏らす。
しかし、北条は一瞬のうちに二本目の矢を番えて、射た。
しかし、もちろん剣は翼で矢を弾く。
だが、俺にも遠距離の攻撃はできる。
俺は『レフト』を抜き、剣の頭に弾丸をぶち込む。
剣は灰になり、風によって吹き飛ばされた。




