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武器作り3

俺が目を覚ますと隣のベッドはもぬけの殻だった。


「はぁ。」

俺はため息を吐きながらも騒がしい友人を探すために部屋を出た。


「服部。おはよう。」

部屋を出てすぐに声をかけられ、若干驚いたがそれが北条のものだとすぐに分かり、

後ろを振り向いた。

「ああ、おはよう北じょ――――」

返事をしようとして、俺は固まってしまった。


「?」

北条は俺が固まったことに気付いてはいるが、何故固まっているかまでは分からない様だ。

「どうした、服部?」

俺はしばらく無言だったが意を決して聞いてみることにした。


「なあ、北条そのパジャマって・・・」


北条は俺がそう言ったので自分の姿をもう一度じっくりと見たようだが、

「何か変なところでもあるか?」

と聞いてきた。ここで「変」と言うのも失礼であろうと思い、

「いや、べ、別に何でもないよ。」

と答え、先を急ぐからと言って、その場を離れた。


俺は宿の外に出ながら一人呟く。

「何で北条は天野の写真がプリントされたパジャマを着てるんだ・・・」


まさか天野も北条の写真がプリントされたパジャマを着てないよな・・・

と俺は内心不安に思いながら広場の方へ歩き始めた。




「おお、信也殿お早いですな。」

賢人の声を聞いて俺は後ろを振り返る。

しかし誰もいない。

俺は一瞬考え、ああ、そうだったと思いながら足元を見やった。

もちろんそこにはこの小人族の族長、賢人がいた。


「さて、今日はなにを作るのですかな?」

賢人がそういきなり聞いてきたが、

その質問が来ることは予想していたのですぐに返答する。


「はい、今日は戦闘時に身に着ける防具を、と思っています。」

「ほう、防具、のぅ。鎧でも作るのですかな?」

「いえ、鎧は俺たち四人の動きを阻害するので、

防具と言うより戦闘装束を作ろうと思っています。」


俺がそう答えると賢人は少し考え、口を開く。

「ならば、いいことをお教えしましょう。こちらへ来てください。」

そう言って賢人は歩き始めた。

いいこととは何だろうか?と首をひねりながら賢人の後を追う。


すると賢人は村から少し外れた森の中に入って行った。

そこには二つの『祠』があった。


「これは一体?」

俺が質問すると賢人がすぐさま答える。


「これは『光の神』と『闇の神』を祭る祠でございます。」

しかし、おれにはこのただの祠のどこに『いいもの』があるのか分からなかった。

する、賢人はそんな俺を見て説明を始める。


「実はこの祠には特殊な効能があるのじゃ。

 この祠に何かものを一晩入れておくと『闇の加護』『光の加護』を受けるのじゃ。

 光の加護を受けた物は暗闇を明るくしたり、身に着けるものに加護があれば、

 それを身に着けた者の視力を強化したりできるのじゃ。

 闇の加護を受けた物は気配を断ち、相手の目から逃れるのに役立つのじゃ。」


そう言って賢人は「ではな。」と去って行った。

「ふむ、光の加護と闇の加護か。」

そう呟くと俺は鍛冶屋に行き、『あるもの』を作ってもらい、

それを二つの祠に入れて宿に戻った。



次の日に目が覚めると目の前に気持ち悪い光景があった。

「なんで武は俺の目の前に顔面を置きながら寝てるんだ。」

俺は不機嫌な顔で立ち上がり、気持ち悪い物体を踏んで部屋を出た。



さて、祠に行くと昨日入れておいた『それ』は色が変わっていた。

闇の祠に入れた『それ』は見事な漆黒に、

光の祠に入れた『それ』は見事な純白に。


「さてと。」

俺は『それ』を自分の部屋に置いて外に出た。

「武はどこかな?」


そう、武はいつの間にか起きていたようで部屋にいなかったのだ。




「おーい!信也!」

俺が森の中に入ろうとしたところで暑苦しい声が後ろから聞こえてきた。


少々面倒だったが後ろを振り向く。

すると予想に違わず武がいた。


しかし、そこには不思議な光景があった。

あの天野が武の隣を歩いているのだ!


もちろん北条もいるのだが、天野を挟む形で三人は並んで歩いてきている。

俺は少し疑問に思いながらも「まぁ、そんなこともあるか。」と思いながら

三人がこちらに来るのを待った。



「よお、何をしてたんだ?」

俺が三人に言うと天野が代表して、

「秘密だよ~。」

と笑いながら楽しそうに答える。


「ふむ。まぁいいか。」

そう言って俺は森に入ろうとする。


「ま、待てよ信也!」

武が慌てて俺を止める。

「ん?」

俺が振り向くと武が言う。

「いや、そこはもう少し聞こうとしないのか?」

と聞いてくる。

「?何を言ってるんだ?秘密と言われたのだから聞かないのが筋だろう。」

俺がそう言うと武はため息を吐き、天野と北条は苦笑していた。

「まあいい。信也、今日の晩飯の前に宿の部屋にいてくれ。」

そう言うと武は村の方に歩いて行き、天野と北条も俺に手を振って武について行った。



その後、俺は森で『あるもの』を集めた後、武に言われたとおりに宿に行った。




日が傾きかけたころ、三人はやって来た。

「お、いたいた。」

武が嬉しそうに言う。


「さて、服部行こうか。」

北条にそう言われたが、俺はどこに行くのか分からない。

それは分かっていたのだろう。

北条がすぐさま教えてくれる。


「賢人の家だよ。」




俺はコートを着て外に出た。


「結構寒いな。」

俺は隣の天野に話しかける。


あの後、北条と武は先に賢人の家に行ってしまった。



「ねぇ、服部君。」

天野が後ろから俺に声をかける。

「ん?」

俺は後ろを向き、「何だ?」と言おうとして、

体を思いっきり反らした。


さっきまで俺の頭があったところを天野の拳が通過した。

「おっとっと。あれを避けるんだ~。」

天野が笑顔でそう言う。

「なんのつもりだ?天野。」

俺は静かに聞く。


「え?服部君の力試しだよ。」

天野は嬉しそうに言う。


「ふぅ。まだ俺のことを疑っているのか?」

俺はバスの中での会話を思い出しながら尋ねる。


「もちろん。そしてこれから私と戦ってもらうから。」

そう言うと天野は俺の方に走ってくる。


最初の天野の正拳突きを俺は楽々掌で受け止める。

しかし、当たり前だがそれはただのジャブだ。

俺の掌を殴った反動で天野は体を回転させながら回し蹴りを放つ。

俺はそれを後ろに躱しながら距離を取った。

相変わらず天野の戦闘センスには驚かされる。

常人では今の動きなどはできないだろう。

いや、人知を超えてると言ってもよかった。


「やはりそうか。この地は重力がやや弱い。」

俺は確信をもってそう呟く。

流石に天野といえどもさっきの動きは通常なら無理であろう。


そんなことを俺は一秒にも満たない時間で考え、天野に向き直る。

「天野。」俺が呼びかける。

「何?服部君。」

俺は呼吸を整えながら言う。

「恨むなよ。」

俺はそう言うと天野に向けて走り出す。



「ふっ!」俺は息を吐きながら横から天野の側頭部にめがけて拳を突き出す。

天野はそれを屈んで避けたが、その避け方はよくなかった。

俺はそれを予想していたのだ。

ノーモーションでありながら勢いのある蹴りを前方にくり出す。


しかし、次の瞬間俺は天野を侮っていたことを知った。

天野は俺の蹴りを腹に受け、あろうことか俺の脚にしがみついた。

「ふふっ。」天野が不敵に笑う。

そして天野は俺の振り上げたままの脚に乗った!

そして一瞬の間も置かず、体をひねりながら蹴りを放つ。

驚愕のあまり、俺は動きが鈍くなり結果天野の蹴りを側頭部に受け、

吹き飛ばされた・・・


「くっ。」頭がクラクラする。しかし俺は驚くほど冷静だった。

ゆっくりと俺は立ち上がる。

天野は俺を見て、息をのんだ。


正確には俺の眼だ。

俺の眼は蒼かったのだ。


暗闇の中、俺の眼を見れる天野は凄いだろう。

しかし、俺にもある特殊な力はあるのだ。


単純な能力だが効果は絶大だ。

天野は何かを感じたのだろう。俺に向かって肉薄し、こぶしを振るう。

しかし、今の俺には一撃も当らない。いや、かすりもしなかった。


「な!」天野も驚く。当たり前だ。彼女の戦闘センスの高さは本人が一番知っている。

しかし、今の俺では天野の攻撃を避けるのは容易い。


五分後、天野は地に伏していた。意外と殴ったときの空振りは体力の消費が激しい。

彼女は五分間一度も攻撃を当てれなかったのだから、流石に疲れたのだろう。


「これで終わりだな。」俺はそう言って、さっき拾っておいたカラーコンタクトを

近くの井戸の水で洗って、付け直した。


「その眼は?」

天野に聞かれる。


「この眼か。俺は生まれつき眼が異常なほど良かったんだ。

 視力、動体視力が異常にな。

だから若干度の入ったカラーコンタクトでそれを抑えていたんだ。」


俺がそう言うと天野は

「どこのアニメの主人公よ。」

と笑っていた。


「さて、賢人の家行かないとね!」

そう言って天野は歩き出す。

しかし、すぐにフラフラと足取りがおぼつかなくなり、倒れた。

俺が地面に倒れる前に天野を支えると、彼女は寝ていた。


「しょうがないな。」

俺は苦笑しながら天野を背負い、賢人の家に向かった。



賢人の家に着くと、天野は目が覚めたようで、

俺の背中で寝ていたことに気づき、慌てて降りた。


「ゆうひ~。着いたよ~。」

天野が家の中に向かってそう叫び、ドアを開ける。


そして俺が天野に続いて賢人の家に入ると、

「パーン」と大きな音がした。

俺は驚き、身構えたがすぐに構えを解いた。


目の前には、クラッカーの様な物を構えた北条と天野と武と賢人がいた。

俺は意味が分からず立ち尽くしていたが、唐突に思い出した。

「今日は俺の誕生日か・・・」

そう言うと北条がニコリと笑い、

「服部!誕生日おめでとう!」

と言ってくれた。


俺は「ああ、ありがとう。」と素っ気なく言ったが、

内心とてもうれしかった・・・


「さあ、ご飯もあるから一緒に食べようぜ!」

武の声に迎え入れられながら、俺は机の前に座る。



その日はこの世界に来て、もっとも充実していたことは言うまでもないだろう。


俺は少し笑みを見せながらその夜を過ごした。


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