発見!
体全体に鈍痛が走るのを感じながら、俺は目を覚ました。
「ここは?」
俺は状況を確認しようと、辺りを見渡す。
「武?」
俺の前に武が転がっていた。
「おい、大丈夫か?」
俺が声をかけると、
「天野さ~ん。」
とか言いながら俺にしがみつこうとする。
俺はその手を避けながら、立ち上がって思いっきり武の腹を蹴り上げた。
「ぐふっ!」
武は腹を押さえてそこらじゅうを転がりまわった。
そして、俺はゆっくりと周りを見渡す。
「(北条と天野は大丈夫なのか?そもそもここは一体・・・。)」
俺が心配していると、
「やあ、目が覚めたか。」
そう言って北条が天野とやってきた。
「無事だったか。」
俺はすこし安堵しながら言った。
「ああ、ところで佐藤が死にそうな顔をしているが、
大丈夫なのか?」
北条にそう問われ、俺はどう答えようかと思うと、
突然天野が武の近くに歩いて行き、
体重を乗せた踵落としを腹にきれいに決めた。
「ぐふぅ!!」
武が一瞬で覚醒し、天野の足が自分に乗っているのを見て、
「天国だ。」
と満ち足りた表情で言った。
流石にこれには全員が顔をひきつらせ、
天野にいたっては、「キモい」と言って、
武の後頭部に再び蹴りを入れて武を再び眠りにつかせた。
武はそれでも輝く笑顔をしていたが…。
「さて、これからどうしようか。」
10分後、武がようやく回復したので、俺はそう切り出した。
先ほど確認ところ、携帯は圏外で通信手段は何もなかった。
天野は
「とりあえず、そこらへんを歩いてみようよ!」
北条は
「危険だが、探索を行うべきだろう。」
武は
「天野さんの言うことには全て従うぜ!」
と天野が嫌そうな顔をしているのに気付かず、そう言っていた。
武は自分に対する天野からの評価を自分で下げていることに
全く気付いていない様だ。
「どうやら、ここらへんを見て回るしかないみたいだな。」
こうして探索を始めることになった。
「天野さん。ねえねえ。」
前では武が天野さんにしつこく話しかけている。
天野がこちらに「こいつをどうにかしろ。」とばかりに、
視線を送ってくるが、俺は北条と話すことで、その視線に気づかないふりをした。
「服部これを見てくれ。」
そう言って北条が木から取った、木の実のようなものを見せてくる。
「…なんだこれは?」
俺はその木の実が何かをじっくり見ながら考えるが、
全く知らない木の実だったので、
「…見たことはないな。」
そう呟くと、
「やはりそうか。」
と北条が険しい顔で返事をした。
「お、出口みたいだぞ!」
武の声が聞こえたので、前方を見ると確かに森が終わっているようで、
その先遠くに家のようなものが見える。
「先に行ってるぜ!」
そう言って武が走り出した。
家のある辺りまで少し距離がありそうだったので、
「あんまり飛ばしすぎてばてるなよ!」
と言おうとすると、それより前に武が
「何だこりゃ!!!」
と叫んだ。
俺たちはどうしたのかと思い、武のところまで駆け足で近づいた。
遠近法を知っているだろうか。
絵などに使われる技術で、遠くにあるものを小さく、
近くにあるものを大きく書くことで、距離感をだす技法である。
そう、俺たちはそれが小さく見えたのでまだまだ遠くにあるだろうと思っていた。
しかし俺たちはその村に着いて愕然とした。
「何なんだよ。これ…」
武が呻く。
俺も、いや、ここにいる4人全員の顔が驚愕に染まっていた。
20秒ほど固まっていただろうか。
「な、」
天野が声を発した。
全員の目が天野に向く。
「何これ!!」
俺たちの心の声を代弁する。
だが、天野は次にびっくりする言葉を放った。
「かわいい~!」
「「「は?」」」
俺たち3人の声が重なる。
そう俺たちの前には、
怪獣映画のセットに使うような小さな家の立ち並ぶ広大な村が広がっていた。
「家だけだな・・・。」
武が疲れたようにつぶやく。
全員落胆の色を隠せない様だ。
「ふむ。こんなものがあるぐらいだから、人ぐらいいそうなものだが。」
俺は自分の背丈よりも小さい家をじっと見ながら、そう呟いた。
すると突然北条が
「おい、なんか聞こえないか。」
と俺たちに話しかけてくる。
「・・・」
じっと耳を澄ますと、「カーン、カーン」と、
音が森の奥の方から聞こえてくる。
「お、行ってみようぜ。」
と武は言って、すぐに駆けて行き、俺たちも武の後を追った。
森の出口の辺りで武が木の陰に隠れるようにして立っていた。
「(どうしたんだ武?)」
俺は近くまで行って囁いた。
「あ、あれ見ろよ・・・。」
武は唖然とした表情で奥を指差した。
俺たち3人は向こうを覗き込むと、
「っ!」声こそ出さなかったが、息をのんだ。
屋台や出店のように幌の付いた建物がいくつも見える。
中で何者かが鍛冶仕事をやっているようで、
そこから先ほどの音が聞こえる。
そう、先ほどの家より更に低く、
1m程しかない小さな建物の中で何者かが鍛冶をしているようだ。
よく見ると、辺りにあるすべての建物から、
「カーン、カーン」という音が聞こえてくる。
俺たちが唖然として見ていると、
「うわっ!」
という声が後ろから聞こえ、
俺たちが反射的に後ろを向くと、小さな人間(?)が少し離れた所に立っていた。
「「「「・・・・・・。」」」」
誰も言葉を発せなかった。
あの後「ついてきて。」
と小人の子供(たぶん10歳くらいだろう。)に連れられて、
村でも一番目立つ大きな家に通された。
(大きいと言っても俺たちが屈まないと入れない大きさだ。)
「疑問がいくつかある。」
俺がそういうと3人がこっちを見た。
「なぜ、小人が存在するのか。
なぜ、彼らは日本語を喋れるのか、
なぜ、俺らがすんなりと受け入れられたのか。」
俺はそういうと、黙り込んで熟考を始めた。
「おい、服部。」
北条が何か言っているようだが、俺は気づかない。
「(こりゃ話しかけてもダメだな。ところで北条さんと天野さんはどう思います?)」
「(日本、ではないだろうな。)」
「(私はここがまだ、日本の山の中だと思ってたんだけどな~。)」
「(いや、さっき歩いている時に辺りを見たが、日本にあるような植物が全く見当たらなかったんだ。)」
「(ふ~ん。でもさぁ、)」
と、天野が何か言おうとしたとき、
「がちゃっ!」と音がして、扉が開いた。
そこから、小人の老人が出てきた。
「ふむ、おぬしらは「日本」から来たのじゃろう?」
開口一番、そう言ってきた。
「「「え?」」」
俺以外の3人が気の抜けたような声を発した。
「やはりそうか。」
だが、俺は今の言葉である確信を得た。
「ほう。」
老人は感嘆したように息を漏らし、俺を値踏みするように見てきた。
「何がわかったのじゃ?」
そう言って家の中に入り、腰を下ろした。
俺たちも恐る恐る中に入り、床に座る。すると、
「さて、我はおぬしらの言うところの「小人族」の族長、「賢人」じゃ。」
そう自己紹介してきた。
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
「賢人?」
俺が代表してそう聞いた。
「ああ、昔から族長につけられる名前じゃよ。さて、おぬしらも名乗らんか。」
そう促してきたので、
「・・・。俺は服部信也だ。」
「私は、天野輪!」
「私は北条夕日と言います。」
「佐藤武だ。」
それぞれが、それぞれのスタイルで自己紹介する。
「ふむ、なるほどのう。」
そう言って、賢人はいつの間にか用意していたお茶のようなものを飲み始めた。
「「「「「・・・・・」」」」」
しばらくの静寂が続いた。
「さて、おぬし。」
そう言って賢人が俺を指す。
「もう一度問おう。先ほど何が「分かった」のじゃ?」
そう聞いてきた。
俺は先ほどの熟考で考え付いた、予想を話し始めた。
「おそらく、この世界には今まで何人もの日本人がやってきたことがあるのだろう。
多分、何百年も前から結構な回数でな。
日本語もその時からこの世界にやってきた日本人によって教え続けられてきたはずだ。
賢人と言う名もその時の族長につけられ、代々受け継がれたのだろう。
だからこそ、俺たちもすんなりと受け入れられた。
俺はそう考えている。」
俺は言い終わって賢人の方をじっと見た。
「「「「「・・・・・」」」」」
沈黙が訪れる。
1分程したころだろうか。
「はははははははは!」
賢人が突然笑い出した。
「いやはや、そこまで聡いとは思わなかったのう。
おぬしの言ったことで概ね正解じゃ!」
族長は嬉しそうにそう言った。
その後教えて貰ったことによると、
この世界には、
武器づくりの得意な「小人族」
身体能力の高い「牙族」
固い皮膚ととてつもない腕力を持つ「竜族」
空を飛び、高い視力を持つ「翼族」
知性を持たない「樹族」
の5種族が住んでいることが教えられた。
また、小人族の村は他の4種族に囲まれているが、
牙族、竜族、翼族には武器を売り、樹族には森の奥へ入って行かないことで、
安全を確保していることも教えて貰った。
だが、俺たちを驚愕させるようなことまで言われた。
賢人曰く、
「日本から来た「人間」は今まで、この世界に来て約半年で必ず病により死んでしまう。」
ということだった。
流石にこれには全員が驚愕し、項垂れた。
「マジかよ。」
武が悲痛な声を出した。
しかし、賢人がそこで、
「一度だけ、日本に帰って行った者がいる。」
と言った。
「本当か!!」
武がすぐさま顔を上げ、満面の笑みをこぼした。
北条と天野も安心したようで2人で嬉しそうに話し始めた。
しかし、俺は未だに顔をしかめていた。
賢人はそんな俺を見てこう続けた。
「(もちろん、本当に帰って行った場所が日本かどうか分からんが。)」
と俺にだけ聞こえるように言った。
しかし、俺が気にしていたこととは関係の無い答えだった。
「(いや、俺が気になるのは、「一度だけ」という部分だ。
行先については、日本で間違いないはずだ。
今まで日本人以外の人種が来たことがないというのなら。
問題なのは、一人だけ、という部分だ。)」
俺がそう言うと、「ふむ。」と賢人は言って、
「確かに帰るのはほとんど無理じゃろうな。」
と今度は3人にも聞こえるように言った。
すると3人がピタッお動きを止め、賢人の方を向いた。
「「「え?ええええええええ!!」」」
3人がオーバーリアクションで叫んだ。
賢人が言うには、帰るためには、ある時期、ある場所に行かなければいけないらしい。
「そこは「神社」という場所で、これから約30日後に行かなければならん。」
そう言った。
「で、その神社はどこにあるんだ?」
俺が聞くと賢人は少し間を置いてこう言った。
「樹族のいる森の奥じゃ。」
「どうしてこうなった」
俺は呟く。
他の3人も何とも言えない顔で佇んでいた。
「お兄さん達は食べないの?」
そう言って、小人の子供が串に刺された鶏肉の様な物を差し出してきた。
「お、ありがとな。」
武が代表して受け取った。
「ま、腹が減っては戦はできぬ。ガッツリ食おうぜ!」
その一言で天野と北条も腹が減っていることに今さらのように気付いたみたいで、
「そうだな。」
と言い、串を受け取って静かに食べ始めた。
広場では、小人たちが屋台で様々な料理を食べている。
「お口に合いますかな。」
賢人が話しかけてきた。
「それは日本の「焼き鳥」というものに似せて作られた料理です。」
「「「「・・・・・」」」」
全員が何となく日本を思い出して無口になる。
「今日は・・もうおなか一杯。夕日、部屋行って寝よ。」
「分かった。じゃあ、服部また明日な。」
そう言って2人は割り振られた部屋に歩いて行った。
「おぬしらは明日どうするのじゃ?」
賢人が聞いてきた。
俺の答えは決まっていた。
「武器を調達に。」




