第6話 先輩と師匠
『防御力はゼロだが知力と体力はカンストしている!防御力がゼロならすべて回避すればいいだけだ――お前たちは俺に触れることすらできない。』の第6部
俺はゆっくりと目を開け、しばらく座ったまま過ごしてから立ち上がり、顔を洗った。
「よし、今日も頑張るぞ!」
そう言って、俺は階下へ朝食を食べに向かった。
「すみません、アイスジュースとフラッグウェクをお願いします!」
遠くから店員の声が聞こえてきた。
「はーい! 少々お待ちください!」
しばらく待っていると、ようやく料理が運ばれてきた。
「どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください」
俺は昨日、見ただけで気持ち悪くなった食べ物を眺めた。しかし、実際に食べてみると、意外にも悪くない味だった。
値段が安いのに、スライムジュースのような奇妙で気持ち悪い味もしない。本当にありがたい。
「よし、それじゃあ、いただきます!」
俺はフラッグウェクを一口ずつ食べ、最後まできれいに平らげた。
「ごちそうさまでした。さて、次はいよいよアイスジュースだ! さらば、奇妙でまずいスライムジュース! そしてこんにちは、とてもおいしそうなアイスジュース!」
俺はすぐにグラスを持ち上げ、アイスジュースを一気に飲んだ。
「うえっ!? なんだ、この味!? こ、これは……スライムジュースと同じじゃないか!!」
俺はすぐに立ち上がり、店員にアイスジュースの材料について尋ねた。
「アイスジュースは、氷属性を持つスライムが進化したものを使って作る飲み物ですよ」
俺はひどく驚いた顔をしたまま、まずいと思いながらもジュースを飲み干した。
「味はスライムジュースと変わらないのに、値段は二倍以上も高いなんて……完全に騙された! 次からは普通の飲み物を注文しよう」
朝食を食べ終えた俺は、代金の150レヴを支払った。
これで、手持ちのお金は残り250レヴになってしまった。
宿を出てギルドへ向かおうとした、そのときだった。
突然、背後から誰かに肩を触られた。反射的に相手を投げ飛ばしてしまい、俺は驚いて振り返った。
そこにいたのは、以前ゴーレムと戦っていたときに助けた冒険者たちだった。
「すまない、わざとじゃなかったんだ。どうして突然、後ろから何の音も立てずに肩に触れたんだ? てっきり、カツアゲでもしようとしている奴かと思ったぞ」
地面に倒れていた剣士は立ち上がり、身につけている鉄の鎧を払った。
「悪かった。驚かせてやろうと思ったんだが、まさか鎧を着た状態で、こんなに簡単に投げ飛ばされるとは思わなかった」
「すまない。身を守るための反射的な行動なんだ」
「気にしなくていいさ。ほら、見てのとおり、どこも怪我していないからな」
その後、彼は俺をカレンの宿へと連れていき、自己紹介を始めた。
「俺は剣士のトラフト。このパーティーのリーダーだ。俺たちのパーティー名はスティック。Cランクの冒険者パーティーだ。こっちの大柄な男がタンクのリト。そして、大きな帽子をかぶって木の杖を持っているのが魔法使いのミラだ。最後に、金色の杖を持っているのがヒーラーのトリファだ。
昨日、俺とリトが気を失っていたとき、君が俺たちを助けてくれたと聞いた。そのうえ、ミラとトリファがゴーレムを倒すのも手伝ってくれたそうだな。本当に感謝している。だから、これは君の取り分だ」
トラフトは突然、膨らんだ小さな袋を置いた。
中を確認すると、そこには大量のお金が入っていた。数えてみると、合計1100レヴもあった。
「えっ、これって、もう分配した後のお金なのか?」
俺が不思議そうに尋ねると、トラフトは答えた。
「ああ。これは君の取り分で、全体の五分の一だ。ゴーレムはBランクのモンスターだから、討伐報酬もかなり高い。それに、昨日はゴーレムの素材も売って追加の収入があった。だから、君の取り分が1100レヴになるのは妥当なんだ」
ちょうど金欠で困っていた俺にとって、これでしばらくは安心できそうだ。
俺は感謝しながら、お金を受け取った。
「それじゃあ、遠慮なく受け取らせてもらうよ。俺はこれからギルドに用があるから、先に失礼する」
礼を言ってから、俺はギルドへ向かった。
実は、最初に会ったときから気になっていたことがある。
あの受付嬢……いや、ミルンさんは、どう考えても普通の人ではない。
初めて会ったとき、俺はスキル【統計】で彼女の才能のポリゴンを確認しようとした。しかし、何かに妨げられているかのように、見ることができなかったのだ。
それに、昨日、彼女が俺に使った魔法。あれも普通の魔法ではないと確信している。
だからこそ、本人に直接尋ねてみようと思った。
「ミルンさん、少しお話ししてもいいですか? できれば、二人きりになれる個室で」
いつもどおり親切な受付嬢は、昨日と同じ部屋へ俺を案内してくれた。
(どうして彼は、私の本当の名前を知っているの!?)
「それで、テンジン君。今日はどうしたの?」
俺はさっそく本題に入った。
「実は、俺には他人のステータスを見るスキルがあるんです。でも、ミルンさんのステータスだけは見ることができません。もしかして、鑑定を妨げるスキルか魔法を使っているんですか?」
ミルンさんは、まるでこうなることを予想していたかのように、落ち着いた様子で答えた。
「ええ。でも、妨げているわけではないわ。魔法を使って、自分のプロフィールを偽装しているの。……それより、テンジン。どうして私の本当の名前を知っているの?」
俺は嘘をつかず、スキルの表示に彼女の名前が記されていたことを、そのまま説明した。特別な仕掛けなどがあったわけではない。
ミルンさんは、どう見ても経験豊富な人物だった。
俺は期待に胸を膨らませながら、彼女に尋ねた。
「ミルンさん……俺を……俺を弟子にしてくれませんか?」
ミルンさんは少し困惑し、驚いたような表情を浮かべた。
まあ、当然だろう。普通の人間を装っている相手に、突然弟子入りを申し込んだのだから。
「どうして私なの?」
「だって、ミルンさんは間違いなく強い人ですよね。あなたから直接、魔法を学びたいんです!」
「いいわ。今日からあなたは私の弟子よ。最初の授業として、今日の夕方に図書館へ来なさい。そこで、あなたの先輩にも会えるわ」
「わかりました! 必ず行きます!」
テンジンがギルドを出ていった後、ミルンは自分の本当の名前が知られてしまった理由について考え込んでいた。
(彼は、私の偽りの身分を知った二人目の人物……。どうしてバレたの? 私のマナの制御が甘かったのかしら? それとも、何かおかしなことをしてしまった?)
そのとき、ミルンは以前、焦ってテンジンに時間を巻き戻す魔法を使ったことを思い出した。
「ああ、あれね……」
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ギルドを出た俺は、すぐに図書館へ向かった。
まだ昼間だったが、せっかくなので本を読んで勉強することにしたのだ。
図書館に到着すると、俺はすぐに受付カウンターへ向かった。
「すみません、会員カードを作りたいのですが」
「かしこまりました。200レヴになります」
料金を支払うと、冷たい雰囲気の司書は、カウンターの上に水晶玉を置き、その下に一枚のカードを差し出した。
ギルドに登録したときと、まったく同じ手順だ。
「では、こちらの水晶に触れてください」
俺が右手を伸ばして水晶に触れると、突然、水晶が光り始めた。
そして、その光は下に置かれたカードへと流れ込み、文字へと変わっていった。
「これで登録は完了です。図書館の会員カードには、離れた場所にいる会員同士で会話したり、起きた出来事を記録して相手に見せたりする機能があります。
また、知力に応じてカードのランクが上がります。ランクが高いほど、下位のランクの会員よりも多くの本を借りて持ち帰ることができます。何か質問があれば、どうぞ」
俺は説明を理解したことを示すように頷き、お礼を言った。
(離れた場所で会話する? 出来事を見せる? えっ、それって電話とカメラのことか? まあ、この世界の電話やカメラは使ったことがないから、具体的にどういうものなのかはわからないけど)
俺はカードの使い方を尋ねるため、再び受付カウンターへ戻った。
「何かご用ですか?」
「カードの使い方がわからないんです」
「そうですか。では、まずはお互いの連絡先を交換しましょう。二枚のカードを重ねて、魔力を注いでください。ただし、カードの持ち主二人が同時に行う必要があります」
言われたとおりにすると、突然、俺のカードに「ヒラ・ニロイド」という文字が表示された。
「これで、あなたのカードにも私の名前が表示されているはずです。では、私の名前を押してみてください」
(名前は……ヒラ・ニロイド、か)
俺が名前を押すと、カードには電話の形をしたアイコンと、人の顔の形をしたアイコンが表示された。
「では、今度は曲がった線の形をしたボタンを押してみてください」
(曲がった線? つまり、この電話の絵のことか?)
俺はそれ以上質問せず、すぐにボタンを押した。
すると、突然、俺のカードが光り始めた。
「これは、離れた場所にいる人と会話するための機能です。ボタンを押すと、相手が通話を受けるか拒否するかを選べます。受ければ離れた場所にいても会話ができますが、拒否された場合は何も起こりません。今回は説明のためなので、受けることにしますね」
「テンジンからの着信を受け付けました」
ヒラが通話を受けると、今度は彼女のカードが突然、光り始めた。
ヒラは俺にカードを耳元へ近づけるよう合図すると、ゆっくりと自分のカードを顔の近くへ持ち上げた。
そして……。
「わあっ!」
突然、俺が持っているカードからヒラの声が聞こえてきた。
本当にカードから声が出ていることにも驚いたが、それ以上に驚いたのは、あの冷たい司書が――いや、ヒラが、とても可愛らしい声をしていたことだった。
ヒラは頬を少し赤く染めながらも、まるで何事もなかったかのように説明を続けた。どうやら、そのことについて触れてほしくないらしい。
「では、最後に、顔の形をしたボタンを押してみてください。これは、出来事を記録するための機能です」
俺はすぐに顔の形をしたボタンを押した。
すると、俺はまたしても驚いた。
まるで本物のカメラのようだ。それも、地球にあったカメラよりずっと性能がいい。
ただ写真を撮るというより、起きた出来事そのものを保存して、あとからもう一度見られるようにする機能のようだった。
「それから、画面を押せば、そのときの映像が保存されます。カードを元の状態に戻したいときは、カードの端を一か所触って、そのまま軽く振れば大丈夫です」
俺は言われたとおりにカードを振ってみた。
すると、本当に元の状態へ戻った。
「詳しく教えてくれて、ありがとうございます、ヒラさん。それでは、失礼します」
ヒラにお礼を言った俺は、いつもの席へ戻り、たくさんの本を読み始めた。
ところが、そこにはすでに先客がいた。
せっかく見つけた静かで居心地のいい席を、他人に奪われたままにするつもりはない。
俺はすぐに、その女性の隣へ座り、何事もなかったかのように本を読み始めた。
女性は、まるで宝石のように輝く紫色の瞳と、肩よりも長く伸びた漆黒の髪を持っていた。とても魅力的な容姿だ。
うーん……体つきから考えると、俺と同じくらいの年齢だろうか。
女性は俺にまったく関心を示さなかった。それどころか、俺と同じように、まるで俺がそこに存在していないかのように振る舞っていた。
しばらくして、俺は読む本がなくなったことで、ようやく時間の経過に気づいた。
いつの間にか、夕方になっていたのだ。気づけば、ここで四時間半も勉強していたらしい。
「うーん、夢中になりすぎたか……」
別の本を取りに行こうと立ち上がった、そのときだった。
全身を黒い服で覆い、顔まで隠した人物が図書館へ入ってきた。
どう見ても怪しい人物だ。
その人物は、突然、俺のいる方向へ歩き始め、どんどん近づいてきた。
そして、俺の座っているテーブルの前まで来た瞬間――。
突然、視界が真っ暗になった。
頭がぐるぐると回っているかのようにひどくめまいがし、吐き気まで込み上げてきた。
視界がぼやけ始め、耳もだんだん聞こえにくくなっていく。
やがて、見ることも聞くことも、ほとんどできなくなった。
そんな最悪の状態に陥っていたとき、目の前に一筋の光が現れた。
俺はその光をつかんだ。
すると突然、意識が戻った。
気がつくと、あの怪しい黒ずくめの人物はどこにもいなかった。
それから間もなく、ミルンが現れ、俺たちの座っているテーブルへとやってきた。
「待たせてごめんなさい、二人とも」
「えっ!?」
俺は少し驚いた。
ということは、さっきから俺の隣に座っていたこの少女が、俺の先輩ということか。
すると、少女が初めて口を開いた。
「師匠、申し訳ありませんが……彼は本当に、師匠の弟子になるにふさわしい人物なのでしょうか?」
隣でそんなことを言われた俺は、腹が立った。
だが、反論することもできなかった。
実際、俺はまだまったく強くない。魔法すら使えず、今できることといえば、基本中の基本である、物体にマナを流し込むことくらいだ。
「大丈夫よ。努力次第で、彼も強くなれると師匠は保証するわ」
俺は感謝の気持ちを込めて、ミルンを見つめた。
ミルンは俺たちの向かい側にある椅子へ座った。
「さて、アザレア。悪いけれど、師匠はもう一度、最初から教えるつもりなの。だから、お手本を見せてくれる?」
アザレア……それが彼女の名前なのか。
ミルンはそう尋ねながら、一つの水晶玉を取り出した。
隣に座っていた少女は軽く頭を下げ、それから立ち上がってミルンのそばへ移動した。
「では、テンジン。よく見ていてね。この水晶玉はエネルギーコアと呼ばれるものよ。人がどの属性に最も適性を持っているのかを調べるために使うの。
ただし、ある属性との相性が悪いからといって、その属性の魔法が使えないわけではないわ。単に、魔法の威力や耐久性が低くなるだけよ。
この属性との相性を『魔法適性』と呼ぶの。誰でもすべての属性の魔法を使うことができるけれど、誰もがすべての魔法を最大限の力で使えるわけではないのよ。
それじゃあ、アザレアが触れたときの様子を見ていて」
少女は水晶玉の上に手を置いた。
すると、水晶玉はまばゆい光を放ち始めた。
やがて光が消えると、水晶玉の中にはいくつもの色が浮かび上がっていた。
青、赤、黒、白、紫、そして茶色。
「見てのとおり、アザレアはすべての属性に適性があるわ。それから、魔法適性は生まれたときの運によって決まるものではないの。本人の性格や行動、そして、これまでに経験してきたことによって決まるのよ」
そう言うと、ミルンは水晶玉を俺のほうへと滑らせた。
「さあ、あなたも試してみて」
俺は自分にどんな属性の適性があるのか、強い好奇心を抱きながら水晶玉に手を置いた。
すると、俺の水晶玉にも、先ほどのアザレアとまったく同じ色が現れた。
ミルンはその様子をじっと観察していた。
「全属性なのね……。まったく、私の弟子は二人とも、とんでもない才能の持ち主だわ。でも、どうして赤と青と黒の色だけ、こんなにも強く輝いているのかしら?」
ミルンは水晶玉を手に取り、再びバッグの中へしまった。
「さて、それじゃあ、さっそく『魔法とは何か』というところから始めましょう」




