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第4話:文字と本、そして冷徹な司書

防御力はゼロだが知力と体力はカンストしている!防御力がゼロならすべて回避すればいいだけだ――お前たちは俺に触れることすらできない。の第4部分です。

「はぁ……。さっきから歩き回っているのに、一向に図書館が見つからないな」

天人は少し疲れた表情で呟いた。

その時、お腹の底から「くぅぅぅ……」と間の抜けた奇妙な音が鳴り響いた。

「へへっ、もう腹ペコだ。よし、まずは飯が食える場所を探そう。ついでに宿も借りて、そこで図書館の場所を聞けばいい」

しばらく歩くと、天人はそれなりに大きな建物を見つけた。

「うーん……文字は読めないけど、看板にベッドの絵が描いてあるな。ってことは、ここは宿屋で間違いないよな? よし、とりあえず入ってみるか。違ったらまた探せばいいし」

天人が扉を開けて中に入ると、そこには疲れ切った様子の冒険者たちや、酒盛りをして賑やかに楽しんでいる者たちで溢れていた。天人はすぐに厨房らしき場所の近くにあるカウンターへと向かった。

「すみません、ここは宿屋ですか?」

天人は、40代ほどに見える年配の女性に声をかけた。

「あぁ、ここは『宿屋カレン』だよ。何か御用かい?」

目的地が宿屋で合っていたことに安堵しながら、天人は宿泊代を尋ねた。

「えっと、一晩泊まりたいんですけど、いくらですか?」

女性は天人の姿をじろじろと品定めするように見つめながら答えた。

「一泊200レヴだよ」

「じゃあ、一人部屋を一泊分お願いします」

天人は宿泊代を支払い、宿屋に併設されている食堂の席へと移動した。

席に座り、メニュー表を開いた天人は、やはりそこに並ぶ見慣れない文字に頭を抱えた。

「そうだった……俺、この世界の文字が読めないんだ。でも、もう腹が減って死にそうだし……よし、他の冒険者の真似をしよう!」

天人は周囲の冒険者たちを観察した。すると、大柄な冒険者が仲間たちと美味そうに料理を食べているのが目に留まった。それは、白い濃厚なスープに刻んだ野菜と綺麗に盛り付けられた肉スライスが入った、食欲をそそる香りのスープだった。さらに、隣には見るからに冷たくて爽快そうな青い飲み物が添えられている。天人は深く考えず、すぐにその冒険者と同じものを注文することにした。

「すみません! あそこの人と同じものをください!」

しばらく待つと、料理が運ばれてきた。

「お待たせしました。『コルスウルフのスープ』と『スライムジュース』です」

天人は目を輝かせながら料理を見つめた。

「おおっ! コルスウルフとスライムジュースか! ……えっ、スライムジュース? まぁ、とりあえず食べてみるか!」

天人はまずスライムジュースを一口すすってみた。しかし、その瞬間、強烈な違和感が襲った。ドロっとしたゼリーのような粘り気と、喉を通る滑り気。おまけに甘さは中途半端で、妙にひんやりとしている。

「えっ!? なんだこの飲み物……!? めちゃくちゃ不味いぞ……。口が拒絶してる。でも、せっかく注文したんだから残しちゃダメだ。もったいないし、全部飲み干さないと!」

天人は顔をしかめながらも、気合でスライムジュースを一気に胃の中に流し込んだ。

「うぅ……胃がむかむかするし、喉の奥が変な感じだ。あんな食感の飲み物、二度と御免だぜ……。よし、ジュースのことは忘れて、次はコルスウルフのスープだ。『いただきます!』」

天人はスプーンでスープを掬い、口へと運んだ。咀嚼した次の瞬間、天人の目から自然と涙が溢れ出た。彼は静かに、感動を噛みしめるように小さく呟いた。

「これが、この世界に来て初めてまともに食べる料理か……。しかも、こんなに美味いなんて……。こっちに来てからずっと、あの赤い毒果実ばかり食べていたからな。やっとまともな肉が食えた……。スープのコクとミルクのまろやかさが絶妙にマッチしていて、じっくり煮込まれたスープは本当に濃厚で美味い。それに肉もすごく柔らかくて、スープの旨味がしっかりと染み込んでいる。肉を噛みしめるたびに、染み込んだスープの旨味が口の中でジュワッと弾けて広がるぞ……!」

あっという間に平らげた天人は席を立ち、会計のカウンターへと向かった。

「さっきコルスウルフのスープとスライムジュースを頼んだんですけど、合計でいくらですか?」

受付の女性が答えた。

「合計で200レヴだよ。スープが150レヴで、ジュースが50レヴだね」

天人はその安さに驚きながらもお金を支払い、質問を投げかけた。

「あの、もしよければ、図書館がどこにあるか教えてもらえませんか?」

女性は親切に一枚の地図を渡してくれた。天人はお礼を言って宿屋の外へと出た。

「ふむふむ。ここが『宿屋カレン』だから……ここから真っ直ぐ行って、右に曲がって、また真っ直ぐ行ってから左か。よし、行こう! それにしても、あの美味いスープがたったの150レヴなんて……。よし、あの宿屋の常連になろう」

意気揚々と歩き出した天人だったが、ふと足を止め、顔を引きつらせた。

「待てよ……お金のことで思い出したけど、確か街の門のところで400レヴの入場料を借りてたっけ。今、俺の手元にいくら残ってるんだ?」

天人がポケットの中の硬貨を取り出して数えてみると、残金は550レヴだった。

「550レヴか……。ふぅ、よかった。これなら長引かせずに、すぐに借金を返済できるな」

天人は急いで街の城門へと引き返した。遠くから門番の姿が見えると、天人は声を張り上げた。

「門番の旦那ー!」

近くまで駆け寄ると、天人は借金を返しに来た旨を伝えた。

門番は少し驚いたように言った。

「ほう、もう金を用意できたのか? ほら、金を見せてみな」

天人はポケットから硬貨を取り出し、門番に手渡した。

「よし、それじゃあもう一度この魔石のタブレットに触れてくれ。返済が確認できたから、契約を解除する」

天人が手を伸ばすと、タブレットは最初と同じように淡い光を放った。門番が少し操作を終えると、彼は満足そうに頷いた。

「よし、これで契約完了だ。もう君に借金はない。ところで、もうギルドの登録は済ませたのか?」

天人は不思議そうな顔で答えた。

「ええ、登録してきましたけど……それが何か?」

門番は笑って言った。

「いや、ギルドに登録していれば、街の入場料や出入国の手続きはすべてギルドが代行してくれるからな。次からは面倒な手続きをしなくて済むぞ」

天人は嬉しそうに顔をほころばせた。

「そうなんですか! 教えてくれてありがとうございます」

天人は門番にお礼を言うと、城門を離れて目的の図書館へと向かった。

図書館の中に入ると、入り口近くの受付カウンターに、眼鏡をかけた無表情な女性司書が座っていた。透き通るような白い髪に、どこか神秘的な青い瞳。色白の肌と冷ややかな雰囲気は、まるで日本の伝承に登場する『雪女(ゆきおんな)』を彷彿とさせる、冷徹ながらも息をのむような美しさだった。

「入館料は50レヴです。それとも、200レヴで会員カードをお作りになりますか?」

手持ちの資金が心許ないため、天人は会員カードの作成を諦めた。

「50レヴでお願いします」

入館料を支払った後、天人は意を決してその司書に声をかけた。

「あの、すみません。この世界のアルファベット(文字)をすべて書き出して、読み方を教えていただけませんか?」

女性司書は淡々と頷くと、紙とペンを取り出して文字を書き並べ、一つずつの発音を教え始めた。天人は彼女の声を集中して聞き、その音を熱心にメモしていった。

「この文字は『ハ』と読みます。こちらは『カ』です」

すべての文字の読み方を教わり終えると、天人は深く感謝し、すぐに近くの席に座って文字の暗記と書き取りの練習を始めた。

それから数時間後。

「ふぅ……。ぶっ続けで勉強するのは、さすがに結構疲れるな。でも、おかげで基本的な読み書きはできるようになったし、文字もそれなりに滑らかに書けるようになったぞ」

天人は本棚からいくつか本を引っ張り出してくると、さっそく読書に取りかかった。

天人がすっかり集中して本の世界に没頭していると、突如、背中をトントンと叩かれた。

「あの、すみません。もう閉館の時間です」

振り返ると、そこには昼間に文字を教えてくれたあの女性司書が立っていた。

「えっ、すみません! 読書に夢中になりすぎて、もう夜になっていることに気づきませんでした」

女性司書は相変わらずのポーカーフェイスで言った。

「構いませんが……昼間は文字が読めないとおっしゃっていたのに、本当に本を読まれていますか?」

天人は照れくさそうに笑いながら答えた。

「ええ。まだ少し難しい部分もありますが、おかげさまで大体読めるようになりました。あなたが親切に教えてくれたおかげです。本当にありがとうございました」

天人は丁寧にお辞儀をして、感謝の気持ちを伝えた。

すると司書は少し慌てたように首を振った。

「い、いえ。私は大したことはしていません。ただ文字を書いて、読み上げただけですから」

「それでも、俺が読めるようになったのはあなたのおかげです。本当に感謝しています。……もう夜も遅いですし、あなたも疲れているでしょうから、俺はこれで失礼しますね」

天人はそう言い残して図書館を後にし、宿屋への帰路についた。

天人が去った後、それまでずっと冷ややかだった女性司書の表情がふっと緩み、その唇の端に小さな微笑みが浮かんだ。

「私のおかげ、ね……。よし、片付けを終えたら私も休むとしましょう」

宿屋に戻った天人は、極度の疲労からそのままベッドへと飛び込んだ。思いのほかフカフカで心地よい感触に包まれながら、天人は一瞬で深い眠りへと落ちていくのだった。

皆様、第4部分も読んでくださり、ありがとうございます!楽しんでいただけたでしょうか?もし楽しんでいただけたなら、また次のお話で皆様にお会いできたら嬉しいです。

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