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第2話:旅立ち

第二部:防御力はゼロだが知力と体力はカンストしている!防御力がゼロならすべて回避すればいいだけだ――お前たちは俺に触れることすらできない。

「うーん……」

さっきから適当に歩いているが、他の魔物が一向に現れない。

さっきの洞窟の前にいたスライムが最初で最後、それもすでに全滅させてしまった。

一体どこへ向かえばいいのだろうか?

その時、突如として全身に鳥肌が立った。

(えっ? これって【警戒】のスキルか……?)

意識を集中させ、魔物の気配がする方角を探ってみる。

すると驚いたことに、魔物の位置だけでなく、その正確な数までが頭の中に浮かび上がってきた。

「おおっ! つまりこのスキルがあれば、不意打ちを回避できる上に敵の数まで把握できるってことか? これはめちゃくちゃ役に立つぞ」

次の瞬間、何の前触れもなく一匹の黒い狼――ダークウルフが天人に向かって飛びかかってきた。

「一匹だけ? ――いや、違う。

俺を追い詰めて罠にハメようとしてるな? 悪いが、崖の上に別のダークウルフたちが待ち伏せしているのはすでに知っているんだよ!」

ダークウルフは激しい猛攻を仕掛けてくるが、天人はそのすべての攻撃を軽々と回避し、瞬時に鋭い反撃を叩き込んでいく。

しかしその時、ダークウルフが天に向かって遠吠えを轟かせた。

「グルゥゥゥアオォォーーンッ!」

「えっ……!?」

突如、天人の身体が金縛りにあったように動かなくなった。

(くそっ、これは『威嚇(いかく)』のスキルか……!?)

身動きの取れない隙を突かれ、ダークウルフの鋭い爪が天人の身体を容赦なく引き裂く。

その衝撃で、天人はかなりの距離まで吹き飛ばされてしまった。

「ちっ……完全に調子に乗ってたな。悪いが、ここからは本気でいかせてもらうぞ」天人は最大速度で地面を蹴り、ダークウルフに向けて怒涛の連続攻撃を叩き込む。完全に追い詰められたダークウルフは、再び狂ったように遠吠えを上げた。

「アオォォーーンッ!」

吠え声が響き渡った直後、崖の上で待ち伏せしていたダークウルフの群れが一斉に姿を現した。彼らは天人を取り囲み退路を完全に塞ぐ。

「数で押そうってわけか? いいだろう、防御力ゼロで狼の群れをぶちのめす方法を教えてやるよ」

天人は双剣を構え、臆することなく群れの中へと突っ込んでいく。

「防御力がゼロなら、すべて回避すればいいだけだ!」

一匹、また一匹と、ダークウルフの群れを確実に仕留めていく天人。

ついに最後の一匹となった時、そのダークウルフは奇妙な行動に出た。

息絶えた仲間の死体にその顎(あぎと)を近づけたのだ。

「仲間の死体を食べてる? ――待て、違う! あいつ、仲間の『魔石』を喰らおうとしてるのか!? させるかよ!」天人は阻止するために突進したが、一歩遅かった。ダークウルフが魔石を飲み込んだ瞬間、脳内にあの無機質なシステム音声が響き渡る。

『ダークウルフが進化条件を満たしました。

シャドウウルフへと進化します』

「グルルルルル……ッ!」

目の前の狼の身体から、突如として二本目、三本目の尾が生え揃っていく。

その巨体はさらに膨れ上がり、凶悪な爪が禍々しく鋭さを増していく。

「えっ? 進化……? シャドウウルフだと?」

天人は冷や汗を流しながらも、不敵に笑った。

「おもしろい。

見た目以外にどこが変わったのか、確かめさせてもらおうか!」

天人が距離を詰めようと走り出したその時、シャドウウルフの巨体がまるで地面に溶けるようにして消え去った。

「なっ!? どこへ消えた!?」

「ガァッ!」

背後――いや、天人の足元の『影』から、シャドウウルフが奇襲を仕掛けて飛び出してきた。

「危ねぇっ……!」

間一髪、限界まで高めた敏捷性のおかげで直撃を免れる。

「ふぅ……なるほどな。

消えたわけでも、地面に潜ったわけでもない。

あいつ、影の中を行き来してるんだな? ってことは、迂闊に動くのは危険だ。

木の下みたいな影が多い場所を警戒しつつ、あいつの動きを先読みしないと……!」

その思考を肯定するかのように、シャドウウルフは次の影を求めて近くの大木へと猛スピードで駆け出した。

「させるかよ!」

天人はその速度を凌駕する超加速で先回りし、シャドウウルフが目指した木の下へと滑り込む。そして、飛び込んできたシャドウウルフの脇腹めがけて、渾身の力で蹴りを叩き込んだ。

「ギャンッ!」

強烈な一撃を喰らったシャドウウルフは、悲鳴を上げながら遥か彼方へと吹き飛んでいった。

「よしっ、あいつは木のない開けた場所に転がり出たな。

――それじゃあ、年貢の納め時だ!」

天人は全力を振り絞って地を蹴り、一気に距離を詰めると、流れるような連撃でついにシャドウウルフを討ち果たした。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

激しい戦いを終え、天人はたまらず地面に大の字に倒れ込んだ。

激しく肩で息をする。

「くそっ、めちゃくちゃ疲れた……。

始めて早々、まさかこんな強敵と戦う羽目になるとは思わなかったぜ」

その時、再び頭の中にあの無機質なシステム音声が響き渡った。

『経験値が一定に達しました。レベルが7に上昇します』

『レベルが7に達したため、8スタティスティクスポイントを獲得しました』

天人は上体を起こすと、自身のスキルである【統計(スタティスティクス)】の画面を開いた。

「よし……今回も全部『敏捷性』にぶち込むか」

『8スタティスティクスポイントを敏捷性に投入しました』

スキルの割り振りが成功したというアナウンスが流れた直後、天人は勢いよく立ち上がり、試しにその場で走ってみる。

「うおぉっ……! さらに速くなってやがる! よし、それじゃあダークウルフとシャドウウルフのドロップアイテムと魔石を回収するか」

散らばった魔石とドロップアイテムをすべて手際よく拾い集めると、天人は再びあてのない歩みを進め始めた。

しばらく歩いていると、目の前に非常に透き通った美しい川が現れた。都合の良いことに、そのすぐそばには心地よい木陰を作る大きな木が立っている。

天人はその大木の根元に背中を預けた。

そよそよと吹き抜ける心地よい風が、彼の髪を優しく揺らす。

あまりの気持ちよさに、天人はいつの間にか深い眠りへと落ちていった。

目を覚ました時には、辺りはすっかり夕方に染まっていた。他に休めそうな場所も見当たらないため、天人は今夜をこの木の下で明かすことに決めた。少しばかり身体を動かして軽い修練をこなした後、彼は再び穏やかな静寂の中で眠りにつくのだった。

そして、目を覚ますと、すでに新しい一日が始まっており、太陽が心地よく顔を出していた。冷涼で清々しい風が、そよと優しく吹き抜ける。

「ふぅ……空気が美味い。――だけど」

ぐぅぅぅ、と間の抜けた奇妙な音が腹の底から響き渡った。

「そういえば、こっちに来てからまだ何も食べてないな。腹が減って死にそうだ……。まあ、幸いなことにこの木には果実が実っている。感謝していただくとするか」

天人は、その大木に実っていた赤くて丸い果実をいくつか捥(も)ぎ取った。

「よし、いただきます!」

一口目を勢いよくかじりついた、その直後だった。視界の端で、天人の体力(バイタリティ)の数値がじわじわと減少し始めた。

「待てっ! これ、毒があるのか!? ――まあいいや。腹が減ってるし、味も甘くて美味い。俺は体力がカンストしてるんだ、この程度なら大した問題にはならないはずだろ」

天人は気にすることなく、腹がいっぱいになるまでその果実を貪り食った。すると突然、頭の中にあのシステム音声が鳴り響く。

『条件を満たしました。スキル【毒効果軽減】を獲得しました』

『条件を満たしました。スキル【冷静】を獲得しました』

「ぶっ!?」

驚いた天人は、慌てて新しく手に入れた二つのスキルを確認した。

「へぇ、つまり少しだけ毒に強くなったってことか。それで、もう一つの方は……」

【冷静】:精神系の状態異常を無効化する。

「精神攻撃や恐怖、行動不能を防ぐってことか? ――待てよ、それってつまり……あのダークウルフと戦った時みたいな『威嚇』の影響を受けずに、動けなくなることもなくなるってことか!? これはめちゃくちゃ使えるぞ!」

思わぬ収穫にテンションを上げつつ、天人は立ち上がると、非常食用としてさらにいくつかの果実を捥ぎ取って懐にしまい込んだ。そして、再び旅路へと足を進める。

「よし、今度はあの鳥の行く方向へ付いていってみるか!」

天人は、まるで海のように美しい青色をした、小柄で愛らしい一羽の鳥の後を追いかけるようにして、力強く走り出した。

防御力ゼロのテンジンの物語の続きを読んでくれたみんな、ありがとう!


楽しんでもらえたなら、また次の物語で会おう!

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