第57話 変化の兆し
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太陽の光がまぶしい。
だけど、青く澄み渡る空には太陽がひとつだけしか見えなかった。
ノエマは特に気にもとめず、ミノリと一緒に学校へと向かっていつも通りに歩いていた。
「ノエマさー」
「んー?なあに?」
「あたしずっと思ってたんだけど、あんたって
意外と普通だよねー」
「ええ??どーゆう意味?!」
「だってほら、身体能力とか超高くて、体が光る以外だと、勉強もそこそこだし……異星人なのにあんがい」
「普通の女子なんだなって!」
「もっとこう……ダァーッ!て空とんだりさ!」
「ミノリ……なにそれ。へんなの!」
ぷいっと頬をふくらませて我先に歩き出すノエマ。別段あわてる様子もなくミノリがすぐとなりに並んで言う。
「てかさー今日金曜日だし。バイトもちょうど休みだから放課後カラオケでもいかんか?」
「あっごめん。わたしバイト。」
「まじかー……ん?」
「へっへっへ〜あたし良いこと思いつい
ちゃったかも。」
すると
「?」 どんっ
「わっ……!」
「おっす。」
「ハガネちゃん!おはよう。
あれ?髪の色変えた?」
「あ?やっぱ分かるか……どう、かな?」
「うん!かわいいよ!」
「……そか。さんきゅノエマ。」
と、顔を若干赤くするハガネ。
「……ううー無視すんなああ!!」
涙目で叫ぶミノリを見て、確信犯の二人はたまらず吹き出して笑い合った。
『だってミノリ、へんなことばっか
言うんだもん。』
とは言えずに、胸にしまい込むノエマだった。
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その日の放課後。
ノエマはバイト先である
『 メイド喫茶FARCE&TEA 』
(店名の由来は茶番)で着替えていた。
「さて、『 おしごとモード 』っと!」
多分伝わらないかと思う。
だがあえて伝えたい。
ノエマのメイド服姿を!
まず、輝くプラチナヘアーの頭には白くてもふもふした小さいケモミミ。首には純白のリボン付きチョーカー。胸元の露出を最小限にとどめたメイド服は黒地でいたって健全だ。白いフリルは清楚感抜群で正統派。
それでもその爆発的な魅力は、彼女が
『 普通ではない 』ということを、どうしても
隠し切れていなかった。
からんからん
「お帰りなさいませ!ご主人さま……って
ええ〜〜〜?!!」
「よっす〜ノエマ!」 「……おす。」
「……ッ!!?」
ミノリ、ハガネ・ベリル姉弟の突然の来店に
フリーズしてしまうノエマ。
「あれ?どしたノエマ。ほれっ!
はよ案内してくれ!」
「………あっごめん。みんなが急に
お店にきたからびっくりしちゃって。」
こつん⭐︎と、頭に拳をあてながら小さく舌を出してあやまるメイド=ノエマの姿を見たベリルは、
「姉貴……見ろよ……」
「やべえ……俺には天使様が見える」
「ばか!」「……痛えな!」
ごつん!と弟の頭を殴る姉。
もはやそれが慣れっこの弟。
「お席はこちらですっ!ご主人さま♡」
そのようなテンプレでさえ、天啓の様な神々しい響きへと変えてしまうその『 天然無自覚最強天使メイド 』は続ける。
「えーっと……『 本日のオススメ 』は
こちらの」
「『 萌えきゅんWはっぴいパフェ 』でございますっ!ご注文いかがなされますか?」
「だっWはっぴいだってよ……
じゃ、俺とりあえずそれを……」
「あたしオレンジジュースとプリン〜♪」
「……じゃ、私アイスコーヒーで。」
「かしこまりました⭐︎ご主人さまっ♡」
挙手したベリルは中二らしく目も合わせずぶっきらぼうに言い、ミノリは淡々と伝え、ハガネは恥ずかしそうにそう言った。
「はあぁ〜。一時はどうなることかと思ったけど。ノエマがやっとバイトに慣れてくれてさ。良かったよあたしゃあ。ほんと」
「ミノリ、なんか急に老いてね?」
肩をぽんぽんたたきながら、しゃがれた声で言うミノリに、すかさずツッコむハガネ。
「おい……」
「あれじゃあ世の中の男は全員、完全に
参っちまうな!」
「ベリル、ばかじゃないアンタ。」
「姉ちゃんもしかして嫉妬てんの……ーー
ベリルは姉の無言の圧に屈した。
すると
「おまたせいたしましたご主人さまっ♪」
天使メイド=ノエマがみんなの頼んだ品々をおぼんに乗せて運んできた。重いのかグラスがカチャカチャ震えている。
「まずは……えと。
『 萌えきゅんWはっぴいパフェ 』
でございます♡」
「それからっと……
わあっ!!ーー
天使メイドはおぼんを手から滑らせ、ぶどう100%ジュースとホットコーヒーを、手前に座っていたミノリに全部ぶちまけた。
「う熱っつうーーぅ!!!!」
「ああいや!冷たいっ!!!」
その時、飲み物がはね返って
ノエマの肌が淡く光った。
。° °。 。°+ • .•: 〜*.
「ノ〜エ〜マ〜!!」
「あんたねえ!ミスんのはぜんぜん良い!うん。
あたしもよくやってっし……それはゆるせる。」
「けどね……」
「注文したもんとちがうし!!」
「フォローも甘い!!!」
天使メイドはバックヤードの畳の上に正座させられ、先輩メイドのお叱りを静かに受けていた。
「それに……あの時の『 あれ 』も見られたかもしんないし!」
どうやらミノリが言うには『 ノエマが急に光る問題 』についてだった。案の定、
「おーいお前ら大丈夫かっ……ってミノリ!!」
「テメェ!!天使様をこんなとこでいじめてん
じゃねぇぞ!」
「待ちなベリル。」
ベリルの前へ立ち、急に姐御感をかもし出すハガネが弟に聞いた。
「アンタ……さっきの……見た?」
「ああん?天使様が光ったことか?」
「んん〜〜〜それそれそれ!!」
とミノリが言う。
「……チッ。それがなんなんだよ。天使様が
光んのなんて、朝メシ前だろうが」
それを聞いた姉ハガネは頭に手を当てて言う。
「はあああ……こいつが中二で」
「「「良かったあ〜〜〜」」」
と、ベリルを除いた三人の女子たちは、
声をそろえて言ったのであった。
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