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第48話 迷いながらも


アルテナ

 「ジャーベス……あとどんぐらい

登んのこれ……」



ジャーベス

 「ああ?!なにいってんだお前。まだ一合目だろうが!ほら、そこに書いてあんだろ!」



 〈 イフェスティオ山 〉

 〈 標高約3500m 一合目 〉

 〈登山は安全に!ポイ捨て絶対ダメ! 〉



 「え?ちょ待って、それってちなみに

何合目まであんの?」


 「大体……十合目ぐらいだろ!」


 「まじかよ……まだそんなにあんの?!

もう心折れそうなんだけど俺……」


 「てかジャーベス、さっきから王女がどこにもいねえんだけど!!」



 「ああ、リベッラ王女なら麓の『 山小屋カフェ 』で今頃は名物のパンケーキでも食ってんじゃないか?」


 「??!ぜってぇーゆるさん……

あのじゃじゃ馬王女!!」



 「ほれ!油断してると滑落してしぬぞ!

前見ろ前!」


 「はああ……ヒントってもっと簡単に分かると思ってた俺が間違いだったわ。あと完全に山登りなめてた……」



---


 「だああ〜〜っしゃあ!!8合目〜!」


「もう無理。まじでずっと足ぷるぷるしてる

もん。」


 「……情っけねえなあ。お前はそれでも焔翼ギルドの戦士かよ?」


 「いや、ジャーベスほんと一回休憩させて!お願いだから!水も飲めてねえんだよ!」


 「しゃあねえやつだなあ……ほれ!」


 ぱし!


 「おお……かたじけねえ。んぐ。ごくっごくごく……」


 「ぷっは〜〜〜!!はい全回復〜!余裕〜……あ、でももう水空っぽだ……」


 「ばっきゃろおー!!全部飲み干すやつがあるか!!」


 ゴチン!


「ぶべしっ」


 頂上を目前にしてジャーベスからヤキが入った

アルテナだった。


---


 ビュオオオオ!


 遮る物が一切ない稜線を抜けて、強く吹きつける風が二人の髪を激しく揺らしている。


 「おい……見てみろよアルテナ」


 「はあ………ふはあ………ああ?」



 「これが何度でもよみがえってきた街ーー


 『 フェニーチェ島 』だ!」


 「ジャーベス……なんかめちゃくちゃすげえ!!ほんと、きれいだな……」


 「こんな景色、俺は今まで見たことねえよ!」


 時間は丁度正午になる前。ようやく二人はイフェスティオ山の頂上へと辿り着いていた。


 「街が……海が……なんか、全部すげえ!!」


 「フェニーチェの人たちが、こん中でそれぞれ暮らしてんのって……良く分かんねーけどそれって、なんかすっげえ良いな!!」


 「ははは!そうだな。俺もガキの頃以来ここに来るのは久しぶりだ。変わらず美しい景色だな!」


 二人は、二つに重なる太陽の日差しを浴びて赤々と輝くレンガ屋根。白い石灰岩で作られた建物。


 何度でもよみがえる街=『 不死鳥の島 』と、どこまでも青く広がる海を飽きもせずにずっと眺めていた。


♧♧♧ ♧♧♧ ♧♧♧


 その一方で、そんな二人の登頂の感慨などつゆ知らず。


 一人、麓の山小屋カフェでランチをたべていたリベッラ王女は、オシャレで美味しい料理やスイーツにご満悦なご様子だった。



リベッラ

 「はあ。思ってたよりもずっと美味しかったわあ〜〜〜」


 「ところであいつら、まだ戻らないのかしら?」


♧♧♧ ♧♧♧ ♧♧♧



 火山の山頂で腰を下ろし景色を眺めながら

アルテナが言う。


 「ジャーベスそういやさあ、なんかこの島の形ってどっかで……」


 「………!!」


 「ギルドだ……焔翼ギルドの誓いの印

『 不死鳥の片翼 』!!」


 「おお!良く気付いたなアルテナ!こりゃあ、

あの執事が聞いたらぶったまげるかもな!」


 「…………」


 「……どうした?」


 「いやあ、ヒントにしちゃあなんか……

簡単過ぎると思わねえか?」


 「うーん……そうか?そんなもんだろ。」


 「なんか腑に落ちねーんだよな俺は………」


 ザッザッザッ


 「それにしても、ものすごい風ですね。どうです?そろそろ答えは見つかりましたか?」


 「……ってうおおい!!あせったー……なんだよクソ真面目執事じゃねえか。」



執事エスカルド

 「ふんっ!」


 「はあ……相変わらず雑な人ですね君は……もしやこの国の形が不死鳥の片翼だった……なんて答えを言い出すつもりじゃありませんよね?」


 「なぬっ……!!?」


 「図星、ですか………」


 「だったらヒント!そうだよ。もっと分かりやすいヒントを教えろよ。」


 「分かりやすいヒント……ですか。」


 「では、なぜこちらに『 リベッラ王女様はご一緒ではない 』のです?」


 「それはっ……あのじゃじゃ馬王女がまたワガママ言っ」


 アルテナの言葉を片手で制し、その先を引き取ったジャーベスが執事エスカルドに言う。


 「王女の意思を尊重したまでです。」



 ぱふぱふぱふ


 「素晴らしい!」


 シルクの手袋をして手をたたく執事は続けた。


 「まあ、それでも満点とは言い切れませんが、せめて及第点といったところですね。」


 「しかし、それだけでは『 不合格 』であるとしか言わざるを得ませんね。」


 キッと、執事エスカルドはメガネごしに目を鋭くさせる。



 「それでは次のヒントは………」



 『 燃えるような恋の口付け 』



 「とでも言いましょうか。それでは--


 と、山頂からいきなりダイブした執事エスカルドは、あっという間に麓の森に消えてしまった。


 「だあ〜〜!!あのクソ真面目執事〜!」


 「アルテナ、あのヒントだがな……」

「俺にはなんのこっちゃさっぱりだ!」


 と、屈託なく笑うジャーベスを見て、やる気を失くしたアルテナが言った。



 「とりあえず戻るか……」


 二人は考えるのを一旦放棄して、イフェスティオ山を慎重に下りて行ったのであった。

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