第46話 じゃじゃ馬王女争奪戦
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ジャーベス
「……と言うワケなんです。陛下。」
と、玉座の前でビアンテ国王に対し、礼儀正しく事のあらましを伝えるジャーベス。
国王ブルーノ
「君たちも災難だったね……でも、こうして娘をちゃんとここへ連れ帰って来てくれたんだ。本当にありがとう。出来る限りの礼は尽くそう。」
ジャーベス
「……!?そんな、俺たちはただ王女様に助かてもらっただけで……」
謙虚な姿勢を崩さず、ジャーベスが国王の申し出を慌てて断ろうとすると--
国王ブルーノ
「エスカルド!」
執事エスカルド
「は!陛下。こちらに。」
国王ブルーノ
「いつも助かるよ。ありがとう。」
執事エスカルドを自分の隣へと呼んだ
ビアンテ国王は言葉を続ける。
国王ブルーノ
「それでは君たちにはこれから、『 三つの試験 』を受けてもらうよ。」
「まずはこの場で戦ってどちらかが勝てば、我が娘『 リベッラ 』の婚約者にしよう。」
「リベッラもそれで、本当に良い……んだよね?」
王女リベッラ
「お父様!?なにか……勘違いをされているようですが……そう!今回はわたしが彼らを助けたんですよ?!」
『……ああーたしかに『 恋人候補を探しに行ってくる 』なんて適当なウソついて出て来ちゃったからな……』
『……いいわ。また適当にごまかせばいいもの。それに……勝つのはあっちのイケメン男に決まってるし。」
「それで良いわ!お父様!」
こくん
娘の言葉を受け取り、執事にもう一度頷く
ビアンテ国王。
執事エスカルド
「では、両者向かい合え!!」
執事エスカルドが声を張り上げる。
アルテナ
「はあ?……なんなんだよこの流れ……」
ジャーベス
「アルテナ、ちょうど良い腕試しだ。
久しぶりに本気でやろうぜ」
アルテナとジャーベスの二人は玉座の前で、
間隔を空けて向かい合っていた。
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執事エスカルド
「では……始め!!!」
執事エスカルドの声と同時にアルテナが剣を抜き、ジャーベスに向かって突進する。
アルテナ
「……うらあああ!!!」
「ん?あれ?!消えた?」
ごちーーーん!
アルテナは、上から降って来たジャーベスのゲンコツをもろに喰らう。
アルテナ
「っ痛つ〜〜〜……!!」
ジャーベス
「バカ。国王と王女の前で油断するやつが
あるか!」
アルテナ
「くっそ!!……今度こそまじでやってやる……!!」
ジャーベス
「はは。そう来なきゃな」
「来い!!アルテナ!!」
剣先を整え一旦間合いを取るアルテナ。一方のジャーベスは剣を顔の真横に構えて涼しい顔で微笑している。
そんな時だった--
アルテナの耳元で一瞬声が聞こえた
--アルテナ……
誰かを守ろうと想う気持ちはどんな力よりも、ずっと強いよ--
すると左胸が碧く輝き、アルテナの前にバカでかい盾となって現れた--
ガキンッッ!!
ジャーベス
「うおっ?!なっなんだ!!?」
「攻撃が通らなかった……のか?」
アルテナに本気で斬りかかったジャーベスは、驚いて声を上げた。
アルテナが静かに目を見開くと、灰青の瞳に強い光が宿り、碧色の光が爆風を上げて彼の足元から巻き上がった。
そしてアルテナは言う。
「母ちゃん、もう……忘れねえよ。」
瞬間ーー
ジャーベスの足元一帯がぜんぶ氷になって
ツルンッ
とジャーベスが体勢を一瞬くずした。アルテナはそこに向かって爆速で切り込もうと
アルテナ
「うるあああああ!!!」
執事エスカルド
「それまで!!!」
いつの間にか二人の間に入っていた
執事エスカルドの声が玉座の間で響いて。
アルテナの目から強い光が徐々に消えていく。
アルテナ
「あれ?俺……」
ジャーベス
「おいおいおい……!!」
「今のすげえなあーーー!!なあ!?アルテナ!」
アルテナ
「ジャーベス……?俺、今……」
ジャーベス
「正直いって俺は驚いたぜ。お前がこんな力を扱えるようになってたなんてよ。本当に強くなったな。アルテナ」
氷に変えられた地面から、ゆっくりと立ち上がったジャーベスは
ぽんっ
とアルテナの頭に手を置くと、ぐしゃぐしゃになでる。
アルテナ
「……ジャーベスもうやめろって!恥ずいから!」
「俺も、どうやってこうなったのかぶっちゃけ分かんねーけどさ。母ちゃんの声、思い出したら……なんか力があふれてきて……」
国王ブルーノ
「ふおっふおっふおっ」
玉座の上でビアンテ国王がとつぜん笑った。
「これはまた……とんでもないものを見せてもらった。」
国王の視線は、玉座の間一帯に広がった氷に覆われた床と、依然としてなにが起こったのか判断しかねているアルテナを、その柔らかい眼差しで見比べていた。
国王ブルーノ
「エスカルド。」
執事エスカルド
「は!」
国王ブルーノ
「今のは……魔法ではない……ね。」
執事エスカルド
「……はい。国王陛下。あれはある種の『 記憶反応現象 』と思われます。記憶体の激しい感情が本人の記憶と共鳴して発現した……力かと。」
ざわざわざわ
がやがやがや………
と、玉座の間がどよめいている。
アルテナ
「また、『 記憶 』か……」
アルテナは、自分の左胸と両手を交互に見下ろしていた。
「……てかさ、俺……ジャーベスに勝ったのか?」
ふっ と、ジャーベスの表情が綻ぶ。
ジャーベス
「俺たちの『 男の勝負 』は、残念ながら途中で止められた。……けどな」
ジャーベスは少年の頃見せたように、あどけない顔でニッと笑った。
「お前は『 不死鳥の片翼 』として、目覚ましい成長を遂げた。今……そのことが一番やべえ。」
アルテナ
「あ?なんだよそれ……ほめてんのか?」
ジャーベス
「ああ、超褒めてるさ!」
その時--
王女リベッラ
「……ぷぷっ」
人を小馬鹿にしたような小さな笑い声が響いた。
王女リベッラは、笑いをこらえながら口元を押さえて二人を見ていた。
「もう、お父様!これじゃあぜんぜん『 婚約者 』を決める試験になってないじゃない?」
「むむ?!」
ビアンテ国王は、娘=リベッラ王女の指摘に目を白黒させたあと、大きな声で笑った。
「ふおっふおっ!!リベッラ、なるほど。言われてみれば、確かにそうだね。」
ビアンテ国王は玉座から立ち上がり、前に進み出ると、片方の目を閉じた後で言った。
「むん。……おっほん!……では諸君。まず、第一の試験の結果は……」
ビアンテ国王は静かにアルテナの灰青の目を見据えてーー
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静まり返る玉座の間。
凍った床面の冷気など、誰も感じられないほどの緊張感。
国王ブルーノ
「『 合格 』としよう。」
兵たち
「「「えええ〜〜〜〜〜〜!!?」」」
アルテナ&ジャーベス
「「うそおおおおお〜〜〜!?!」」
ジャーベスはだらしなく口をあんぐりと開け、アルテナはその場でひっくり返りそうになった。
リベッラ王女は、そんな二人の様子を見て
王女リベッラ
「……な、なんでそんなに残念そうな顔してんのよ……」
そう呟いて頬を赤く染め、
すぐに視線を逸らした。
執事エスカルドでさえ、ビアンテ国王のまさかの発言にいつものペースを崩されて焦っていた。
執事エスカルド
「ちょっ……ちょっとお待ちください!!国王陛下!!それはいくらなんでも……」
それでもビアンテ国王は言葉を続けた。
「第二の試験も合格だよん。」
アルテナ
「はい?」
国王ブルーノ
「……アルテナ君、君は決してその『 力を驕らず、勝利を奪わず』それでも『 誰かを守るために戦った 』それは我が国が最も重んじる資質だよ。」
そして、ビアンテ王はアルテナに優しく微笑んで告げた。
「君を正式に我が娘『 リベッラ・ヴィヴァーチェ・ビアンテ王女 』の『 婚約者 』としてここに認めよう。」
アルテナは言葉もなく、力が抜けてぺたんとその場に座り込んだ。
リベッラ王女は、床に座り込んだアルテナをこっそり見つめていた。
王女リベッラ
『 なによ……それ…… 』
『 勝ったくせに。誇るでもなく、声を上げて喜ぶんでもなく 』
『 ほんっと、最悪………』
『 そういうのが、いちばん腹立つ』
リベッラ王女はアルテナからぷいっと
顔を背ける。
『 婚約者なんて、冗談じゃないわ!!』
なのに
『 もし、仮によ?本当にそうなったら……?』
そんなありもしない未来を考えそうになって、
リベッラ王女はあわてて首をぶんぶんと振った。
『……ばっバカ!わたしってば……なに考えてんのよ!?』
両手ではさんだ頬がまだ熱い。
『……そうよ!どうせこいつ、すぐ泣きごといっちゃってその時は……』
『……わたしがちゃんと……面倒みてあげるだけよっ!』
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アルテナのすぐ横でジャーベスが言う。
ジャーベス
「アルテナ……良かったな!これはビアンテ国王陛下直々に賜った『 栄誉 』だぞ。」
アルテナ
「……うう……あんな、じゃじゃ馬王女の婚約者になんかなりたくねえ!」
王女リベッラ
「くっ……!!!」
リベッラは凄まじい怒気を浮かべて、
アルテナを睨んでいる。
そしてリベッラ王女は一歩、前に出る。
「こんのチビガキ……!!お父様!でも……
『 第三の試験 』が、まだ終わっていませんわよ?」
アルテナ&ジャーベス
「「『 第三の試験?! 』」」
アルテナとジャーベスが口をそろえる。リベッラ王女の言葉を引き取って、執事エスカルドが続きを話し出す。
執事エスカルド
「君たちが居た『 フェニーチェ島 』にはその名前の所以……『 何度でもよみがえって来た理由 』があるのです。」
執事エスカルドの目が一段と真剣味を帯びる。
「その真意を確かめるのが、あなたたちに与えられる次の『 試験の内容 』」
そして、執事エスカルドは厳かに宣言する。
「第三の試験!!それは……」
「フェニーチェ島が『 不死鳥の街と呼ばれる
理由 』を探し出すこと!!」
アルテナとジャーベスは、
お互いの顔を見合わせた。
アルテナ
「なあ、ジャーベス………」
ジャーベス
「ん?どうした?」
アルテナ
「なんかさ……俺たち、また面倒くせえことに巻き込まれてるっぽくない?」
ジャーベス
「ふっそんなの、今さらだろ?」
ジャーベスはアルテナにそう言って笑った。
アルテナ
「そっか」
「………」
「……だからなんでいつも俺は
こうなんだよお〜〜……!!!」
ビアンテ王城内。アルテナの声が響き渡る玉座の間の窓の外では、潮風に乗って海鳥が青空に高く高く登っていく。
フェニーチェ島は、今日も何事もなかったかのように賑やかで。焔翼ギルドの外に掲げられた『 不死鳥の片翼 』の旗が海風に吹かれて、力強くたなびいていた。
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