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第43話 洗礼


 ..... ..... .....


 キンッ!キンッッ


ガキンッ!



アルテナ

 「ふあ〜〜あ〜あ」


 「ん……なんの音だ?さっきから」



きいー ぱたん



ごしごしごし


ジャーベス

 「ふうー……」


 「……おお、アルテナ。起きてたのか」


 

 どさっと、ジャーベスはくたびれた

ボロいソファに腰を下ろした。



アルテナ

 「なんかさっきからずっと、

外でキンキンなってたんだけど……」


 アルテナがジャーベスに聞く。



ジャーベス

 「ん?ああ、剣の稽古してたんだ。」


 「ほれっ!」


ブンッ!



アルテナ

 「うわあ!?ちょ!!あぶねっ!!」


 おもむろに剣を振り抜くジャーベスに、

アルテナは素で驚いた。



ジャーベス

 「あはは!なーにビビってんだよアルテナ。

 おまえもなんか始めたらどうだ?」


 「そうだ!今日一緒に『 ギルド 』に

 顔出してみるか。」



アルテナ

 「はあ〜?!『 ギルド 』〜!?」


..... ..... .....


ジャーベス

 「シルヴァリオン。じゃあ、俺たちちょいとギルドに行って来るからな」



シルヴァリオン

 「……ブルヒヒン!」


ギイイイ………


 シルヴァリオンを街に待たせ、重厚な鉄で装飾された木の扉をジャーベスが開き切るとーー


 わいわいわい

がやがやがやがや………


 やいのやいのやい!

ざわざわざわ……



アルテナ

 「これまたすんげえ人だな……」



ジャーベス

 「この時期だ。連中はみんな、

 仕事探しにでも来てんだろ。」


 「アルテナこっちだ。付いてこい。」


 アルテナはジャーベスにしっかり付いていき、

二人は広い階段を上がって、二階の奥にあった

黒い扉を開けて中へ入る。



???

 「あら?」


 「ジャーベスじゃなあ〜い?!

 いつ帰って来たのよ?」


 椅子の背にもたれかかり、吸っていた葉巻をそっと置いた美しい黒髪をポニテにしたその女は、ただ者ではないオーラを放っていた。



ジャーベス

 「お久しぶりです。また会えて光栄です。

スヴェツィアーノさん」


ガバッ!



アルテナ

 「……??!」


 無言のジャーベスにいきなり頭を抑えつけられ

一緒に頭を下げさせられるアルテナ。



???

 「もお。名前で呼んでっていつも言ってるのに。そんなに気を遣わないでも良いのよ?ジャーベス。」


「その子もまだ、小さい子どもなんだから。

ところで……その子はだあれ?」



ジャーベス

 「はい。俺がここへ戻って来る時に偶然出会った少年です。……ほれ、名前!」



アルテナ

 「あ……アルテナです!」


 「あっ、アルテナ・フォッティーゾ……」


 「はっ、はじめまして!」



???

 「ふふ……とっても可愛い子ね。」


 「私はここ、『 焔翼(ほむらよく)ギルド 』

 のギルドマスターをやってる


 『 ドナテッラ・スヴェツィアーノ 』よ。


 よろしくね?アルテナちゃん。」


 テーブルに頬杖をつき、大人の色気がある目を細くして、艶やかに笑うギルドマスターに、汗が止まらなくなるアルテナ。


アルテ

 「はっ……はひ!よっよよ、

 よろしくおねがいします!」



ジャーベス

 「それでは。ドン・ドナテッラ」


ドン・ドナテッラ

 「ええ、また会いましょう?ジャーベス」



きいー……ぱたん



ジャーベス

 「……うし。まず、ギルドマスターに挨拶は済ん

 だな。朝メシでも食うか……って、どうした

 アルテナ?!」


 「お前……なんか今にも消えそうだぞ!!?」


 ………



アルテナ

 「あの人、こわすぎて……無理……」


 生まれたての子鹿のように両足をぷるぷるとふるわせ、今にも消えかけているアルテナを見たジャーベスは



ジャーベス

 「ぬあっはっはっは〜〜っ!!」


 「おまっお前!!あっはっは!!」



アルテナ 

 「ばっ……!!バカにしてんのか?!」


ジャーベス

 「はあはあ……わりい。だってよ……」


 「はは。まあ……あの人のオーラはおっかねえけ

 ど。ああは見えるが、本当にやさしい人なんだ

 ぜ?」


 「この街の人たちからも一番尊敬されてんだ。

 俺もガキの頃からよくしてもらっててよ。なんて

 ったって、荒くれ者ばっかのこのギルドを『 たっ

 た数年でまとめあげた女傑 』だ。」


 「だからしょうがねえ!

 あんまビビんなって!な?」


 二人は仲良く肩を組んで、焔翼ギルドの一階食事スペースに並んでどかっと腰を下ろした。



ジャーベス

 「ねえちゃ〜ん!俺、いつもので!」


 「アルテナ!お前はどうする?」



アルテナ

 「あんま食欲ねえ……」


ジャーベス

 「そっか……まかせろ!」


..... ..... .....


ギルド職員のお姉さん

 「おまたせ〜ジャーベスはこれね!

 『 激辛溶岩トマトパスタ大盛り 』と

 『 おにぎりメンチ 』!」


 「あとは、サラダとかてきとうに

 作ったからたべてねっ!」


 「君は『 《《これ》》 』ね!」


ごん!!


ボコっ ブクブク……


アルテナ

 「え?え?!なにこれ……??」



ギルド職員のお姉さん

 「ふふふ……それは飲んでからの」


 「お・た・の・し・み♡」



ギルドの客

 「おい、ねえちゃん!」



ギルド職員のお姉さん

 「はーい!じゃっ、二人ともごゆっくりねっ」


ぱちっ⭐︎


 ウインクして、すぐに他の客のところへと

飛んでいくギルド職員。


アルテナ 

 「ちょっなあ!!ジャーベス……」


ジャーベス

 「むぐっ?」


 アルテナがジャーベスを見ると、彼は口のまわりをケチャップで赤くして、ハムスターみたいに頬をいっぱいにふくらませていた。



ごくん。



ジャーベス

 「まあ、ものはためしだ。いいから飲んでみ!

 元気出っから!」



アルテナ

 「おい……まじかよ……」


 「だって、なんかコレめっちゃ赤いし

 超ブクブクいってんだけど……」


 アルテナはガチガチと鳴る歯ぐきをグラスに当て、おそるおそる一口だけそれを飲み込む。


ごくり


 「………」


 「!!!!!!」


 「ぎゃあああああ〜〜〜!!辛っれえ〜!!!」



ギルドの客たち

 「「「ぶあっはっはっはっは〜〜〜!!!」」」


 冒険者たちの血と汗と涙が染みついた

皮のにおいが充満するその場所で。


 望まぬ『 洗礼 』を浴びた少年の絶叫と、のたうち回るその姿を見て、焔翼ギルド内がどっと沸いたのであった。


 そしてアルテナは、『 焔翼ギルド 』の一員として正式に認められた。


..... ..... .....


アルテナ

 「ああ……」


 「久しぶりにしぬかと……ひっく!!」


 「ひっく!」


 たらこ唇になったアルテナ。



ジャーベス

 「アルテナお前……くっ……

 やっぱ最高にセンスあるわ」



アルテナ

 「ひっく……あれ?さっきは気付かなかったけど

 さ。天井のあの絵ってなんだ?ジャーベス」


 ギルドホールの天井に描かれたものを指すアルテナに



ジャーベス

 「あれか?あれはなあ」


 「この街の象徴でもある『 不死鳥 』

 の絵だな!」



アルテナ

 「『 不死鳥 』ってなんだ?」



ジャーベス

 「それは……この島の名前にもなるぐらい

 すげえ『 伝説上の生き物 』だな!」



アルテナ

 「へー、そしたらギルドの

 『 あの旗 』もそうか?」



ジャーベス

 「ん?おお、お前よく気付いたなあ。あれは焔翼

 ギルドのシンボルマーク。『 不死鳥の片翼 』

 だ。つーか俺もほら……」


 そう言っていきなりシャツの左袖をまくり上げるジャーベス。



アルテナ

 「かっけえ……!!」



ジャーベス

 「これはギルドの誓いの印なんだぜ。

 だれでも入れれるもんじゃねえ。」


 ジャーベスは『 不死鳥 』のタトゥーが入った

左腕を自慢する。


 すると、近くに座っていた見るからにガラのワルい男が酒を片手にアルテナに言った。



冒険者①

 「おい!ちびっこい兄ちゃん!その髪

 どこで磨いてんだ〜!?」


アルテナ

 「髪、みがくってなんだよ!」


ジャーベス

 「まあまあ、気にすんな!ここじゃあ

 ちょっとした挨拶みたいなもんだ。」


冒険者②

 「ようよう、観光客か?ガキは帰ってママに

 抱っこでもしてもらってろって!!」


 「がはははは!!」


 別の荒っぽい男がアルテナに言う。



アルテナ

 「てんめえ……!!なめやがって」


 「やんのか!?」



ジャーベス

 「待てまてまて!!」


 「街に来て二日目でいきなり

 モメんなっての!!!」



アルテナ

 「ご……ごめん……ジャーベス」



その時


???

 「……ふん」


 アルテナ達の様子を、飲食スペースのカウンターでじっと見ていた一人の勤勉そうな少年が、気に食わなさそうにギルドを後にしていた。


 ジャーベスの故郷に来てからは、色々なことが起きまくって、アルテナの頭の中はずっと忙しくて。


 ただ、胸の空白だけはふと立ち止まった時に、

『 自分の存在理由 』を唯一肯定してくれてる気がした。


..... ..... .....

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