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第42話 自慢のソウルフード


 .... ..... .....


ジャーベス

 「ここが、フェニーチェ島の中心街。

 『 州都レーゼ 』だ。」


 「んで、あそこに見えんのが、

 かつての海底火山『 イフェスティオ山 』!」


 漆黒の愛馬=シルヴァリオンの背から、白い石畳の上に降り立ってジャーベスが言う。



 海と山に囲まれたフェニーチェ島の

中心にある街=レーゼは、海の汐風と

様々な食べ物が焼ける香ばしい香りが

ただよっていた。


アルテナ

 「はー」


 「でっけえー山だなあ……っうおあっ!!」


ばたん!


 ジャーベスの手を借り、シルヴァリオンから降りたアルテナは、直後にその馬の鼻先にグッと勢いよく押され


 その圧倒的な巨体の力に負けて倒れた。



ジャーベス

 「って、コラコラ!シルヴァリオン!!

 アルテナにあたんなって!」


シルヴァリオン

 「ブルルルッ……!!」


 「アルテナ、大丈夫だったか?こいつ長旅で機嫌わりいみたいだ。すまなかったな。」



アルテナ

 「お、おお……ちょいびっくりしたけど、

 全然たいしたことねーよ!」


 べろべろべー!と、

シルヴァリオンを挑発するアルテナ。



シルヴァリオン

 「ブルッ!!?ヒヒーーーン!!」


 怒り出すシルヴァリオンを、

ジャーベスがなだめる。



ジャーベス

 「おい、二人とも!!もういい加減に

 しろ!!……仲良くいこう。」


 初めて本気で叱ったジャーベスの姿を見た

アルテナは


アルテナ

 「ちっ……しょうがねえなあ」


 そう言って立ち上がった。



ジャーベス

 「まあ、まずは少し観光でもしよう。」


 「俺が案内すっからさ!」


 ニッ!と少年らしく笑うジャーベスに、シルヴァリオンもアルテナも納得した様子で付いていった。


.... ..... .....



アルテナ

 「すっげーにぎわってんなあ。地球にまだこんなに人がいるなんて思わなかったぜ……」


 アルテナが思わず言う。



ジャーベス

 「まあ、大昔に『 闇色の海 』で地球の大半の生き物は絶滅したって話だからな。」


「だがここは『 生き残った記憶体の人間たち 』が『 長い年月をかけて復興させて来た歴史のある街 』なんだ。」


「アルテナ!ちなみにここはな


『 全ての夢が叶う市場 』


ってよばれてんだぜ?」



アルテナ

 「ふーん」


 「なんかどーりでうまそうなもんが

 いっぱいあると思った!」


ジャーベス

 「あはは!まあ、好きにみてったら良い」


アルテナ

 「おう!」



..... ..... .....


アルテナ

 「なあ、ジャーベス?」



ジャーベス

 「ああ?どうした?」



アルテナ

 「これって、なんて食べもんなんだ?」



ジャーベス

 「ははは!アルテナ」


 「おまえやっぱセンスあんな!これはな……」


 「俺の大好きな『 おにぎりメンチ 』だ!」



アルテナ

 「おにぎりメンチ……だと?!」



[ ここで少年たちに代わって作者が説明しよう。

ジャーベス少年が語った『 おにぎりメンチ 』とは・・・]


[ 見た目は丸くサクサクした揚げもので。

中身の主な具材はミートソースにチーズ、大豆。]


[ その他の具材としてはお好みでエビやレモン、アボカドにナス、キノコなどを入れても美味しい。]


[ お店によって様々なバリエーションがセットされてあり、それを好きなようにカスタマイズ出来る。いわばそれが『 フェニーチェ島 』の定番ソウルフードなのである!]


 [ そしてそれに合わせて飲むと良いとされているのが『 フェニーチェ風レモン炭酸ジュース 』


 濃厚なおにぎりメンチの後に、地元で採れたレモンの爽やかな香りが鼻に抜けていく。街のギルドではどちらも定番となっている食べ物なのだ。]



 アルテナはさっそくソウルフード=

おにぎりメンチにかぶりつく。


 サクッ!と、良い音がして、チーズがとろっとこぼれ落ちる。とたんにその熱とジューシーな香りが、鼻腔いっぱいに広がった。



アルテナ

 「うっ……」



ジャーベス

 「あれ?!口に合わなかったか?」



アルテナ

 「うんめえ〜〜〜!!!」


ごくごくごくっ


 「っかああ〜〜〜〜〜〜!」


 「ジャーベス!!ちょい酸っぱいけど

 これもうまい!!」


 「無限ループ確定だわ。

 『 おにぎりメンチ 』何個でもいける!」


ジャーベス

 「だろ?」


シルヴァリオン

 「ブルルル……」


ジャーベス

 「おっと!……シルヴァリオンにもなんか食べさせないとだな。よし。アルテナ!とりあえず今日から俺たちの家に住んでくれ。」



アルテナ

 ごくっ!


 「……ジャーベス、ほんとーにいいのか?」


ジャーベス

 「あったり前だろ!さて、ここからはそう離れてないし……行くとするか。」


..... ..... .....


 陽が傾き始め、海をオレンジ色に染めている。

街や家々の影がゆっくりと伸びて、遠くで海鳥が鳴き始めた。


 二人は再びシルヴァリオンの背中に乗って、一路ジャーベスの家を目指していた。



アルテナ

 「なあ」


ジャーベス

 「ん?なんだ……お前、また腹へったのか?」



アルテナ

 「ちげえよ。ジャーベス、あのさ」


 「俺……なんか初めて目ぇ覚めてから、

 あんまし腹へらなくなったんだよな……」



ジャーベス

 「ははっ!なんだそんな悩みかよ」



アルテナ

 「ああ?やっぱり、なんかへんなのか?!」


ジャーベス

 「いいや」


 「アルテナ、俺も同じだよ。」



アルテナ

 「!!?」



ジャーベス

 「俺たちの体は生まれつき『 記憶体 』なんだ。

理由は良く分からんが、みんなそうだと思うぜ。」



アルテナ

 「そっ……か」


 「俺……完全になんかの病気だと思ってた……」


べし!


ジャーベス

 「そうあんまり悩むな!まじで病気に

 なっちまうぞ!」


 ぱかっぱかっ ぱかっ


っとん



ジャーベス

 「到着っ……と」


 軽やかに地面に降りるジャーベス。


 「ほれ!」



アルテナ

 「っとと……おう、さんきゅー」


 ジャーベスの手を借り、

地面に着地したアルテナ。



ジャーベス

 「まず俺はシルヴァリオンの体洗って、こいつにメシ用意するから。お前は先に中に入って、てきとーに休んでてくれ」



アルテナ

「おっ、おお……ありがと」



ジャーベス

 「また、あとでな。」



シルヴァリオン

 「ブルルッ」


 そう言ってシルヴァリオンを連れ、馬屋へと向かったジャーベスを見送って。


 アルテナは遠い海の地平に沈んでいく追憶の太陽を、辺り一帯が暗くなるまでずっと見つめていた。


 心の中で、少女と愛くるしい異星生物の顔を、

決して忘れまいと、思い浮かべながら。



..... ..... .....

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