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第37話 逢えない?


 きーんこーんかーんこーん


 きーんこーんかーんこーん


---


 ある日の放課後。


 「ノエマ〜!今日バイトも休みだし、このあと

 ちょっと付き合ってくんない?」


 「うん。良いけど、どこにいくの?」


 「ふふーん。……図書館!」


 「?」


 もったいぶってそう答えたミノリは、ノエマの手を引いて夕暮れに染まる雪道を走って行った。



---


 吐く息が白い。


 それが寒空に溶けて消えていく。


 「はあーはああー」


 「超寒かったねノエマ。だいじょぶ?」


 赤くかじかんだ両手で鼻と口を覆い、何度も息を吹きかけながら、ミノリが言う。


 『この街のかんじ……前にも感じたよう

  な……?』


 『 それにこの道も……知らないはずなのに

 なぜか『 知っていた 』ような気が 』



 「ノ〜エ〜マ〜」


 「わ!!びっくりした!」


 「へっへーん!だってあんたぜんぜん話

 聞いてないんだもん。」


 「ごっ……ごめんミノリ!」


 「ま!ドンマイ!気にすんなっ」


 ノエマにそう言って鼻水をすするミノリ。


 「ほれ、着いたよ。ここ」


 ウィーーーン


 「……わあ!すごい。本がたくさんあるね!」


 「しー!……ノエマ、ここではあんまり

 大きい声は出しちゃだめなんだよ。」


 「! ……ごめん。すごくてびっくり

 しちゃった。」


 こそこそ話す二人がいたのは--


 『 パルスマグナ市立図書館 』


 大きくて広い館内はブラウンで統一されており、モダンで落ち着いた雰囲気の中に書棚がいくつも並び、レンガや木の壁全面に様々な本が所狭しと並んでいた。


 「ミノリ?でも……なんで、ここに?」


 「実はさ……『 部の課題 』で『 テーマを決めて研究発表 』をしなきゃならんのよ。」


 「ぶの?けんきゅう……はっぴょう??」


 「そう。だけど、あたしには何をどうして

 いいのやらさっぱり」


 「!!」


 「そうだ。ノエマ……!!あんたのことを研究

 させて……!おねがい!」


 もはや普通に聞こえる声で話し、両手を合わせてそう懇願してくるミノリに、ノエマが言う。


 「!? 良いけどでも、どうやって……」


 つんつん


 「あああん?!」


 ふいに肩をつつかれて、ヤンキーみたいなリアクションをとったミノリの前に立っていたのは--


 「ええ??!おっ……」


 「お父さん?!」



---


 「……はあああ〜〜〜」


 「んで、先生……あたしたちになんか用?」


 くいっ


 「いやいや、なにか色々と勘違いさせてしまったみたいで……ごめんね。」


 「…………」

 

 ノエマはその男の顔を見て固まっていた。


 「たまたまうちの学園の生徒を見かけたと思って声をかけたら、君だったもんで……ついね。」


 図書館に併設されたカフェスペースで、コーヒーを飲みながらそう静かに語った教師の風貌は、まるでノエマの父親ーー


 『 プルーデンス・シェレトワレ 』と

 瓜二つだった。


 「てか先生さーこれ、色々とまずいんじゃね?」


 「?」


 「こんなところをもし、奥さんとか子どもに

 見られたら………」


 ジェスチャーで親指を首に当て

 横にサッと引くミノリ。


 「……!?」


 「いやいやいやっ!!ぜったいに

 そういうことにはならないから!大丈夫だよ。」


 「ところでヴァンデミア君、

 『 部の課題 』は順調かい?」


 そう顧問から聞かれたミノリは


 「うっ……急に心臓が!!」


 ぱた。


 とテーブルに倒れた。

 フリをする。


 「ははは……その様子じゃまだみたいだね。どうだい?これは僕のアイデアなんだけど。やってみる気はないかい?」


 ミノリの部活『 天文学部 』の顧問

『 リューン・ノクトゥルーヌ先生 』は

丸メガネごしに柔らかく微笑んでそう言った。


 そしてカバンからなにやら分厚い本を

 取り出した。


 「あ?」


 ミノリは倒れた姿勢のまま、

 顔だけ彼を見てそう言った。


---


 「それじゃあ!帰りはくれぐれも気をつけるんだよ。また明日、学園でね。」


 「先生スイーツごちそうさまー!あと本ありがとーまあ、てきとーにがんばるわー!」


 と、手を振る二人を図書館に残し、リューン先生は再び微笑んで一人、帰って行った。



 「さーてと!そしたらいっちょ調べるかー!」


 とブレザーの袖を捲るミノリ。


 「ノエマ?さっきからどした?上の空だぞー」


 「え?あっ……ずっと考えごとしてて……」


 「はあ……ったく。いつものことだけどさ!

 さて、あんたにも一緒に手伝ってもらうよ!」


 「……うん。」


---


 「とっ!届かない……」


 脚立に爪先立ちして本棚に手を伸ばすミノリ。

 だが身長が僅かに足りなかった。


 「だっ!……はあ……はあ。」


 「ノエマ、あれ取って……」


 「ああ、うん!良いよ。わかった。」



 ひょいっ


 「ミノリこれで良い?」


 「うん!ノエマさんきゅー。」


 それは先ほどのカフェでリューン先生が参考になるかも知れないと言っていた『 古代の言語が載っている分厚い本 』だった。


 ぱさっ


 ぱさっ


 「さっき先生に言われてなんか、こんな『 古い言葉 』ばっか調べてるけど。意味あんのかねー。」



 「ん?」


 「どうしたのミノリ?」


 「ノエマ、ちょっとこれ読める?」

 「『 真実 』って書いてるとこ」


 ドクンッ


 ノエマの胸が高鳴る。

 そしてなぜかまたへんな感じがして。


 「『 ヴェリタス 』……?」


 その言葉をノエマが呟いた次の瞬間--


 ペンダントが強く輝いて

 図書館内を包み込んでいた。♢+•・.•:〜♦︎



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