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第36話 夢でさえ


 星が降る夜だった。


 二人と一匹は砂漠地帯を夜遅くまで歩き続けて、ちょうど良い瓦礫の影に寝床を作った。


 三人で川の字になって。めいめい好きな姿勢で、

 夜空を見上げる。


 「空に星がこんだけ

いっぱいあるってことはさ。」


 「きっとそんだけ『 たくさんのだれかがそこで暮らしてて。』同じように、おれたちの方を見てたりするのかも知んねーんだよな……」


 砂漠の夜は冷たい。


 けど少年のその温かい声音だけは夜風に吹かれても、そっと耳に届いた。そして、もじもじし出す少年のことを少女はもどかしく思った。


 「……ノエマ……」


 「おれ、さ………」


 ………待って!!


 「ぜってぇー忘れないからな!!」


 「こんなに星がきれーだってこと。なんでだか

 ずっと忘れた。教えてくれて……」


 「その……えーっと……」


 おねがい………………


 「ありがとな。」


---


 『ッ!……待ってーーー!!!』


 『いかないで!!!--


 がばっ!


 「あれ?」


 「……夢?」


 「あれ、なんでわたし……泣いてるんだろ。」


 ノエマは、冷たくなった頬に触れた指先が震えているのに気付いたが、その理由がどうしてもわからなかった。


---


 『わたしはたぶん。また、大切なことを

 忘れている。』


 思い出すとただ悲しくて。胸が押しつぶされそうで。今すぐにでも会いにいきたくて。叶わないけどそれを一番に伝えたい相手。


 そんな漠然とした想いが、

 彼女の胸を焦がした朝。



---


 わたしは初めて学校の『 教室 』の前に

 立っていた。


 「ノエマ、なにぼけっと突っ立ってんの!

 先に入るよ!」


 がらがらーっ!


 

 「………!」


 格式のある深い紺色のブレザーと、同じ色のスカート。赤いリボンを可憐に着こなして。


 『 女子高生ノエマ 』は、

 鮮烈な高校デビューを果たした。


---


 きーんこーんかーんこーん


 きーんこーんかーんこーん


 がらがらがら


 「はーいみんな座ってー!」


 「今日はまず、海外からの転入生を紹介

 するわねー」


 がやがやがや


 がやがやがやがやーーー


 「それじゃ、ちょっと前にきて。」


 寝不足からか目の下にクマをつくった30代くらいの担任教師が、ほれほれとノエマを教卓の前へと手招く。


 どきどきどきどきどきっ!


 「良いかな?そしたら……まずは、あいさつし

 て、名前をみんなに伝えてくれる?」


 「……はっはい!」


 「こっ……こんにちは!わたしの名前は

 『 ノエマ・リュクシエル 』といいます!

 今日から……よろしくおねがいしますっ!!」


 ぽろっ

 

 「……あっ」


 ノエマの胸からリボンが外れて、

教室の床に落ちた。


 それを拾おうと教壇から半歩前へ出た時ーー


 がっつん!!


 ぴきぴきぴき………!



 「「「…………」」」


 どんがらがっしゃーーーーーーん!!!


 ノエマは落ちたリボンを拾おうとして、教卓に強烈なヘッドバットをお見舞いしたのだった。


 そして哀れな教卓は、真っ二つになった。


 「「「えええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」」」


 どよめく教室内。

 軽傷で済むノエマ。


 「いたたた………。」



 すると一人の男子生徒がーー


 ガタンッ


 「か!」


 「かっ……!!」


 「可愛いい〜〜〜!!!」


 女子たちはみんな何事かとその目を見開いていたが、一人の陽キャっぽい男子が言ったその言葉が、教室にいるすべての男子の総意だった。



---


 「ノエマあんた……」


 「やってくれたわね。」


 「え?」


 「だっはっはっはあ〜〜〜!!!転入初日からぶちかましすぎだって!っく……ぶははっ!」


 「さっすが……ノエマだわ。もう、男子全員あんたのことさっきからチラ見してるし。」


 「ほら!」


 と、ミノリは休み時間に教室内に残っていた男子グループを指差す。


 さっ!ささっ!!!


 とたんに、口笛を吹いたり教室の窓を見たふりをする男子たち。バレバレ過ぎるぜ。



 「おっとー!?ハガネー?おーい!」


 「?」


 ミノリがとつぜん廊下に向かって誰かを呼び止める。すると、丸メガネを頭にのっけた黒髪の女子生徒が一人、こっちに向かって歩いてきた。


 すたすたすた ぴた。


 「ノエマ、紹介すんねー!あたしの幼なじみ」


 「『 ハガネ・カルペンティエーレ 』!」


 そう紹介された彼女=ハガネは、黒髪のウルフで背丈はミノリとノエマより5センチぐらい高い。


ノエマは、クールな印象のハガネを見て、なんかすごくカッコ良いと思った。


 「通称ハガネだよ!」


 「ハガネとあたしはね。幼稚園からずっと

一緒なんだ!」


 急にそう紹介されたハガネは、頭の丸メガネをかけ、目を細くしてノエマを見た。


 「? 通称て。……本名なんだけどね。で。

 ミノリ、この子……誰?」


 「ああ、転入生のノエマだよ。わけあって、あたしん家のとなりに引っ越して来たのよ。」


 ノエマはハガネの様子に、少しだけびくびくしながら二人の話を聞いていると


 「ん。」


 ハガネがノエマに手を差し伸べた。


 「へ?」


 「あっ!のっ、ノエマです。ハガネちゃん?」

 「よ、よろしくね。」


 「おおー。すげえきれーな銀髪だな。

 目もなんか……めっちゃきれい……」


 「ノエマ?……で良い?」

 「こっちこそ、よろしく。」


 二人の女子生徒は互いに握手をかわし合った。


 こうして、晴れて地球の学校に転入したノエマに、ミノリの他にもう一人。新しい友達が出来たのだった。


---

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