第34話 旅は道連れ
誰かの言葉が急に聞こえた気がして。
振り返る前にそっと背中を押してくれたり
する日もある。
そして今日も、彼女の物語が始まる。
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「んん………」
「ふあ〜………」
「あ、良いにおい……!」
ノエマがミノリの部屋で目を覚ますと、
淡い光がカーテン越しに部屋に入っている。
廊下からは食べ物の良い香りと、
かちゃかちゃ鳴る音がする。
ばたばたばた
がちゃっ
「あー!ノエマおはよ。やっと起きたか。」
「ほれっおいで。朝ご飯にしよっ」
「うん。ミノリありがと。」
寝癖でぐちゃぐちゃになったプラチナ超ロングヘアーと、ぴちぴちしたパジャマ姿のノエマの手を引いて、
ミノリが、ノエマをダイニングテーブルのある部屋へと引っ張っていく。
「じゃんじゃじゃ〜〜〜ん!」
「どう? 美味しそうでしょ? 賞賛を
浴びせてくれても良いんだけど?」
と、朝からドヤりまくるミノリ。
「えっ、なんかわたしまで……良いの
……かな?」
「へっへーん! 遠慮はご無用っ!」
「うん。すごいよミノリ。
ぜんぶ自分で作ったの?」
ぎくっ!
「ま、まあ? ほぼあたしが……
作った……よ? うん。作った。」
自分に魔法をかけようとするミノリ。
じと目のノエマ。
「ほっ……ほら! そんなことはいいから座って
座って! 冷めちゃうとあれだからさ!」
とうとうノエマの視線と圧に
耐えきれなくなった家主は、
「もおー!! あたしが作ったのはこれだけ!」
と、黒こげの『 ピーマンだった物 』を
指して言った。
「ウチは両親が普段仕事で忙しいから……
いつもテキトーに作って一人で食べてんのよ。」
「ほぼ、冷凍食品だよ!! わるかったね!
未来の旦那さんのお嫁さん候補にも上がれ
そうになくって!」
「っぷ……あははは!」
「っく……ノエマなんかむかつく。」
ぱくっぱくっ……
自ら用意した朝食をひたすらフォークで
突き刺して口に運ぶミノリ。
「ほんと、ばかみたいっ。アルテナ」
「はああ?! だれと間違えてんのさ。あんた。」
「ほれ、箸がとまっておるぞ小娘。」
『あれ?………』
『 アルテナ 』ってだれのことだっけ?』
ノエマの口からふいに飛び出した
『 だれか 』の名前を、彼女は覚えて
はいなかった。
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ミノリが牛乳を飲みほした後、
ふと思い出したように言った。
「そうだノエマ! 今日さ、日曜日だし……
ちょうどいいかもしんない。」
「え?」
ミノリはなにやら見たことのない
薄型の端末をポチポチといじり始める。
「ウチの親さ、学校の理事やってんのよ。毎年なんか海外からの転校生とか帰国子女とか、ほんと色んな子の手続きとか超しててさー」
「………?」
ノエマはお箸をお皿に置いて、
きょとんとした顔で目をぱちぱちさせた。
「まあ、宇宙人のあんたにも分かるように
すっごく簡単に言うとね……」
ミノリがやたらえらそうな顔で、
ダイニングチェアーの背にもたれかかる。
「要はあんたをこのままウチの学校に
《《合法的》》にぶち込めるってことよ!」
「えっ……わたしが!?
ミノリの『 がっこう 』に??」
ミノリはけらけら笑い、急に真剣になった様子
でテーブルに身を乗り出した。
バンッ!
「そう!!ウチの高校は制服も可愛いし! 生徒もみんなLv.高くておもろいし。しかもあたしと一緒のクラスになれる。……はず!!」
「『 くらす 』?? いっしょに?!」
ノエマはなぜか『 その言葉 』の妙に懐かしい響きに、声を少しだけ弾ませた。
「んで、今日の午後にでも親呼んで確認すれば、
たぶん明日の月曜日にはもう仮編入の手続きが通ると思うって、そんなわけよ。」
「そんなに……すぐ……なの?」
「すぐよ! あたし、そうゆーのだけはやたら仕事
早いんだから。」
ミノリがまるで出来る人みたいに不敵に笑う。
ノエマはテーブルの上の朝食を見つめ、
胸の奥がじんわり温かくなった。
「がっこう。地球のがっこう。
ミノリといっしょに……」
「わたしも行ってみたい。」
ミノリが満面の笑みでテーブルに
さらに身を乗り出して言った。
「うっしゃー!! そうこなきゃねっ!!」
その時、廊下の向こうからパタパタとスリッパの足音がして、ミノリのお母さんがダイニングに顔を出した。
「ミノリ。ちょっと話あるんだけど……あら?
お友だち泊まってたの?」
「外人さん? ほんときれいな子ねえ………」
ミノリがニヤッとして腕を組む。
「お母さん! てかいつ帰ってたの。じゃなくって、ほんとーに最高のタイミングで来てくれましたね。」
「?」
と首を傾けるミノリ母。彼女は続ける。
「急なんだけどこの子、あした転校させるから。
ウチの学校に!」
「はああ〜!?」
ノエマは慌てて立ち上がり
すばやくぺこっと頭を下げた。
「おっおはようございます!ノエマ……
といいます。昨日は泊めてくれて、
ありがとうございました。」
「その、『 がっこう 』のこと……
どうか、おねがいします……!!」
ミノリ母は急展開過ぎて理解が追い付かず、
数回まばたきをして何度か二人を交互に見た後、
ノエマに優しく微笑んだ。
「ふう。まぁ……いいわよ。書類はなんとか私が
早めに用意しとくから。」
「話は帰って来てからまたゆっくり聞くわ。」
「「……!!!」」
ミノリがノエマの方を見てガッツポーズする。
ノエマは安心したように、胸をなでおろした。
「やったああー!! お母さん大好きっ!!!
まじLOVE。そして神!」
「これであんたも『 女子高生ノエマ 』だね!」
「……ほんとにありがと、ミノリ。
お母さんもありがとうございます!!」
「ふふっ。あんたたちなんだか姉妹みたいね。」
こうして、ノエマの新しい物語が
ここから始まった。
「あれ?……そーいえばフィリムは?」




