第33話 転校星
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『 …………!!!! 』
『 遠くでだれかが
わたしを呼んでる声がする。』
『でも、その意味を考える前にーー
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つんつんつん。
びくぅっ!
「おねえちゃん、だあれ?」
目の前には小さな女の子がしゃがんでいて。その子は首をかしげてわたしにそう聞く。
「あ………え?………」
「フィー!」
「きゃっ」
「!」
「かわいい!みたことない動物だあ!」
「わあ。ツノがあるぅ。あ!ぷにぷに!」
「わあ!いっしょにあ〜そぼ〜!」
フィリムとわたしを起こしたその幼い女の子は、夕暮れに染まる公園の砂場で、ずっと楽しそうにはしゃいでいた。
わたしが目覚めた時。
その直前まで見ていた『 夢 』を思い出そうとすればするほど。
なぜか分からないけど。胸の奥がぎゅーっと締めつけられるような
そんな気がした。
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「ミイナちゃ〜ん そろそろ帰るわよ〜」
「あっ!おかあさん!」
「おねえちゃんとぷにちゃん
じゃあまたね〜!」
「おかあさ〜〜〜ん!!」
てちてちてちっ
お母さんがこっちに向かってぺこっと頭を下げて、その女の子は帰ってしまった。
気が付けば暗くなっていた空には星がいくつか浮かんでいて。公園のブランコから立ち上がったわたしは、自分の体がやけに重く感じた。
手を自分の胸に当てて、ペンダントをなでる。
そして指先でそっとそのプラチナの髪をつまんでみた。
それが全部自分の物のはずなのに、
なぜか知らない人の体に思えた。
「ん? あれ……?? ええーーー?!」
目線の高さ、手足の長さ、それに足元を見た時にそれを遮ぎる胸の大きさ。声のかんじ。すべてが以前とはまるで違って。
〈いつのまにか10才から16才(見た目だけ。)になっていたノエマは、時を超えて『 大昔の地球 』へと飛ばされていたのだった。〉
ノエマは行くあてもなく再びブランコに座ると、膝の上にフィリムが乗っかってくる。
「はあ……フィリム……あれからわたしたちって、どうなったの?」
「わたし……なんだか、とっても大事な物を置いて来ちゃったような気がするよ……」
するととつぜん
どんっ!
と、背中を強めにたたかれて、
ノエマはびっくりして振り返った時
そこには同じ年ぐらいのへんな格好を
した女の子が、一人立っていた。
「あんた……なにその格好……」
「超ボロボロじゃん……」
「待って。体も……ずいぶん汚れてんじゃん」
「あの……あなたは……」
「あ、あたし?あたしはミノリ!」
『 ミノリ・ヴァンデミア! 』
「華の女子高生だよ!」
「ちょっと事情は良く分かんないけど、
とりまウチ来る?」
と、ノエマは半ば強制的に初めて出逢った
太古の人類(女子高生)に連行された。
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「………ふう。」
キュッ
ぱたん。
彼女の肌に残った水滴が
キラキラと淡く光っている。
『さっきはお家の玄関に入ったら知らない香りがした。あったかい人とお家のぬくもり。なんだかすごく、ほっとする……』
乾き切らないしっとりとしたプラチナの超ロングヘアーを揺らしながら、ノエマは脱衣場を出る。
「ミノリ……ちゃん?おふろありがと。」
「あーミノリでいいって。そんなことはどうでも……ってあんたその格好」
「思春期の男子にはちょっと刺激強過ぎるわ……」
「やっぱあたしのパジャマじゃおさまりきらないよね……」
ミノリのパジャマを借りたが、ノエマにはだいぶ……いや、かなりサイズが小さかった。
それで彼女のこの発言である。ミノリは軽くへこんだ。
ノエマはほっぺを赤く染め、腕で胸をさっと隠す。すると矢継ぎ早にミノリが質問する。
「で、あんた名前は?どっから来たの?もしかして宇宙人とかだったりしちゃう?」
「あ、えと……わたしの……名前は」
「ノエマ! ノエマ・リュクシエル
っていうの。」
「『 うちゅうじん 』?……かは分からないけど、生まれたのは地球だよ。」
「だけど、お父さんもお母さんも『 フィデリス 』ってここからすっごくはなれた惑星から来たみたい。」
ぴょんっ
「……わっ!で、この子がフィリム。」
「フィー!」
ぼんっ!!!
「ミノリ様。お初にお目に掛かります。」
「わたしの名前は『 フィリム 』と申し上げます。ここよりはるか未来の地球。
砂漠地帯で傷ついていたわたしをノエマ様が助けてくださり、そしてこの素敵な名前をつけてくださいました。」
金髪センター分け。
人間ではないと一目で分かるおでこの小さなツノ。透き通る宝石のように輝く紫色の瞳。
the王子様。
「わたしの出身は『 サッカロ・コンディオ星 』ここからは、そうですね……』
「『 10億光年は離れた小さな惑星 』とでも申しますか、簡単に言わせていただきますと……」
「ノエマ様もわたしも異星人でございます。」
「「………!!?」」
いきなりあの愛くるしい『 おもち 』フォルムから人間っぽくトランスフォームしたフィリムを見た二人の思考は停止した。
「どええ〜〜〜??!」
「情報量よ!!頭んなかまじでどうにかなるって!!……」
「まじで!?それって……まじなの?
ノエマ……」
「う、うん……でもフィリムの
こんな姿はじめてみた……」
「そこ?!そこなの?ちがうちがう!!」
手の平を高速で左右に振りながら
ミノリが続ける。
「あんたらが、『 未来からやって来た宇宙人 』だってことよ。」
フィリムは再び二人になるべく分かりやすく、
ゆっくりと話した。
「はい。その認識で間違いありません。ノエマ様とわたしが元いた地球は……この時代よりも『 遙か遠い未来 』なのです。」
フィリムは頭を抱えるミノリを置き去りにして、あくまでも淡々と話を続け、ノエマもそれに加わった。
「ミノリ……わたし、ね?」
「今、記憶が……ないの。ほとんど。なんで今ここにいるのかも……思い出せない。」
「……ミノリ、ここはほんとに地球……なの?」
「………」
「っぶはあああ〜!!もう脳みそぜんぶ溶けて耳から出そうになったわ〜!」
「アーズ?って呼ぶかは知らんけど、あんた、記憶がないって……そか。そうだったんだね……」
「あんたらに今なにが起きてて、どうしてこうなったのかは、今のところまったくもって超謎だけど。」
「そう!ノエマ、フィリム!とりあえずここは地球だよ。少なくとも『 あんたたちの知ってる地球じゃない 』ってだけで。」
ミノリは続ける。
「ちなみに今は『 西暦5725年 』。ここは、
『 リンシン 』って島国の中にある一番北の方。
『 パルスマグナ 』って街だよ。」
「てかフィリム、今あんたたちが来たっていう
『 あたしがいるこの地球 』は……」
「つまりあんたらにとっては『 大昔の地球 』ってことになるわけ?」
ぼわんっ!
「フィ!」
「リン……シン?」
「パルスマグナ……?」
どこの国の言葉でもない。
どこの時代の景色でもない。
そんな言葉を噛みしめるように、
ノエマはマンションの最上階。
見たこともない夜の灯りが、
部屋の窓の向こう側で煌めくのを
ただ、ずっと見ていた。
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