第26話 『いつかきっと、それを伝えて』
第26話 『いつかきっと、それを伝えて』
(Someday, I Know You’ll Carry This Forward)
△▽ △▽ △▽
スキエンティア
[汝、その光の祭壇へと進むがよい]
[そしてその《《二つの秘宝》》を持ち]
[希望を、再び口にするがいい。]
偉大なる全知の龍がノエマにそう語りかける。
龍の言葉は風を切り裂くようで、プルーデンスは耳鳴りがした。
「お父さん……いっしょにいこう?」
「ノエマ……」
「ああ。一緒に行こうか。」
「っと、その前にこれを君に」
「……? お父さん、これって……」
「ああ。アル……じゃなくて、お母さんがさっき渡してくれた大切な物だ。ノエマ、これは君が持っていなさい。」
「ん。……わかった。」
二人が
白紫色に輝く
光の柱の中へと足を踏み込むと──
バチッ!!
と、
プルーデンスだけが
光の柱から弾き飛ばされた。
「お父さん!?」
「……ってて……ノエマ
大丈夫だよ。今行くからね……」
スキエンティア
[影を背負う者]
[『 観測者 』の影なる者よ]
[お前はここに留まれ]
プルーデンスの体には、『 闇色の影 』が触れた痕がまだほんの僅かに残っていた。
ノエマ&プルーデンス
「「……!!?」」
「スキエンティア!待って!!おねがい!
お父さんも、いっしょに……」
スキエンティア
『ノエマ、きこえる?』
『ぼくだよ。スキエンティアだよ!』
『 真の観測者 』である君の心には、『 龍の言葉 』つまり、ぼくの声が届いているはずだ。』
『……ざんねんだけど。君のお父さんを君と一緒に連れてはいけないんだ。今の幼い君に伝えるのは、ちょっとむずかしいんだけど……』
『ごめんね。そういうふうに、
きめられているんだ。』
「なぜだ?!どういうことか
ちゃんと教えてくれ!!スキエンティア!!」
「お父さん……」
「スキエンティアはごめんね。っていってる……」
「わたし、お父さんといっしょには」
「いけないみたい……」
「なっ、なぜだ?!」
「君は……そう!!!君は偉大なる全知の龍じゃなかったのか?!それなのに……どうして……」
プルーデンスの体はしだいに
淡く光り始めていた。
スキエンティア
[プルーデンス……]
[君は、今や人間ではないんだ。ましてや『 影と一度交わった君 』は、もはや『 否定者 』にさえなり得る。]
[最後に……ノエマと話したらどうだい。]
龍の谷の祭壇で、
父と娘は互いに見つめ合っていた。
プルーデンスは
これまで三人で暮らして来た穏やかで幸せな日々や、毎日成長していく娘ノエマのこと。
アルテイシアの笑った顔を思い返し、それらの想い出が心をいっぱいに満たしていく。
「スキエンティア、さっきはその……」
「取り乱してすまなかったね。うん。……
君の話は……ある程度は理解したよ。」
「僕は」
「これから何が起ころうとも必ず」
「ノエマを護るよ。」
「アルテイシアと……」
「そう、約束したんだ。」
「お父さん……」
ノエマは白紫光の中で、父の言葉を待っている。
胸の上で、母から託されたペンダントを
ぎゅっと握りしめながら。
プルーデンスはしゃがんだまま、
光の中に立つ娘と、掌を合わせた。
「ノエマ、いいかい」
「お父さんが必ず……」
「ノエマがどんなに遠い宇宙の果てに
いたって……」
「未来のずっと先にいたって。」
「きっといつか必ず、君を見つけだして」
「そしてずっと護るから……」
「お父さんもお母さんも君を見守っている。」
「どこにいたってね。」
「ノエマ」
「お父さんとお母さんは、
君の一番の味方だからね。」
「さあ、こわがらないで。
気をつけて……行って来なさい。」
父は最後に娘に笑ってみせた。
その笑顔はいつもノエマが見ていた
どこか寂しそうに笑う父の
大好きな顔だった。
スキエンティア
『ノエマ……じゃあ、
君の希望を言ってみて。』
偉大なる全知の龍=
スキエンティアが
『 真の観測者 』ノエマに伝える。
「お父さん」
「わたしもわすれないよ」
「どこにいても、もうこわくないよ」
「お父さんだらしないし、
いつもぼーっとしちゃうし……」
「もお!!」
「どじなんだから、もっとしゃんとして」
「ちゃんとわたしをまもってね?」
「ああ……ああ。あははは……」
プルーデンスは
微笑みを浮かべたまま何度も頷いた。
涙が止まらなかった。
「ノエマ、お父さんちゃんとするよ。」
「なんだかますます」
「お母さんそっくりになっていくね──
次の瞬間───
すでにプルーデンスの前には
白紫光も娘の姿もなかった。
ただ
ふうーーーっ
と、龍の息吹を真似て
長いため息をついた後で
目を閉じた彼は、再び微笑んだ。
偉大なる全知の龍は
スキエンティア
『ノエマ……」
『いつかまた』
『会えるといいな。』
そんな風にノエマのことを考えていた。
△▽ △▽ △▽
しばらく時間が経ってから
プルーデンスは、偉大なる全知の龍に聞いた。
「ところでスキエンティア……」
「ノエマの望みとは一体」
「なんだったんだい?」
「……僕もいくらしなないとはいえ」
「時間は掛かってもいずれ」
「必ず、あの子と再会したいと
思っているからね。」
スキエンティア
[ん?]
[そうだなあ〜]
[だいたいだけど]
[ノエマは
『 100万年後ぐらい 』に
いるんじゃないかな?]
「??!」
[ぼくが分かるのは『 だいたいの数字 』と、
『ノエマが未来でちゃんと生きてる 』
ってことだけだよ。プルーデンス]
[あくまでぼくは
『 観測者 』に導かれて
《《彼女たちの意思》》にただ
従っているだけなのさ。]
「??!」
「そ……そうか……」
「はは……それは困ったなぁ。」
「これから『 100万年も待つ 』なんて……
僕には想像も出来ないよ。」
スキエンティア
[それじゃあ、プルーデンス]
[ふああ〜〜……ぼくはまた眠るから]
[おやすみ〜〜]
バオンッッッ
と
白銀の翼を羽ばたかせ
偉大なる全知の龍=
スキエンティアは谷底に
降りて行ってしまった。
「………」
「さてと!」
「再会するには途方もなく長い時間だけど。」
「僕もひと眠りするとしようか」
「な ブツッ
急に電源が落ちたように
プルーデンスはそのまま
龍の谷の神殿の前で
うつ伏せになって
倒れたのであった。
ばたっ
…………
───僕は夢の中で
アルテイシアと手を繋いで歩いていた。
光の先で《《君》》は
僕らの方に向かって
手を振っていたね。
ふと気が付くと
となりにはもう
アルテイシアの姿はなくって
すぐそばに
《《君》》が居て。
僕の方を見て笑っている。
「大丈夫さ。」
「なにも心配はいらない。」
「だからどうか恐れないで。」
「それじゃあノエマ」
「お父さん」
「未来で待ってるからね。」
△▽ △▽ △▽




