第200話 暴走
「ふ……ふん! 確かに予想外の展開にはなったが……しかし邪魔者が一人増えた程度の事!
この鬼女紅葉様の怨念から生まれた最強の式神にしてダンジョンボスモンスター、枯葉童子の前では無力な虫けらよ!」
鷲王が勝ち誇る。
この式神に対して絶大な自信を持っているようだ。
「そいつはダンジョンのボスモンスター、だったな」
俺の言葉に鷲王は笑った。
「その通りだ。初代紅葉様の怨念から生まれたボスモンスターを、テイムしたのよ!」
「ボスモンスターをテイムなど出来ないはずだが」
俺はダンジョンの常識を言う。
もちろん例外を何体も見て来たのだけど。
そしておそらくこいつも……。
「その通り! これは陰陽術の秘儀によるものよ!
あのお方によってもたらされたこの力で――この里を正しい姿に戻すのだ!」
……やはり、裏に陰陽師の何ちゃらがいるのか。
この間の沖縄のダンジョンでもそうだった。
あの時はボスモンスターのシーサーをテイムし持ち帰ろうとしていた。
それがここでも行われていたのか。
ということは……。
「各地で似たような事が行われている……と考えていいのか?」
「ククク、その通り。ここはその一端にすぎん!
全国各地のダンジョンで秘密裏にボスモンスターの捕獲が行われて……」
「そうか、ところで秘密にしてるところ悪いけどお前も知ってるようにこれ今絶賛生配信中なんだけど」
「あっ」
……。
こいつ普通に馬鹿なんじゃないだろうか。
『もしかして知らなかったの』
『いやさっき「ダンジョンの配信にキチクがいるだろう!」と言ってたし』
『普通にバカ』
『忘れてたのか……』
『鷲王は鳥頭、ここテストに出ます』
『わっしー今どんな気持ちー?』
『えっもしかして今喋ってることってヒミツだったの』
『聞いた全員殺せばヨシ! とか思ってたパターン』
『そもそも殺人未遂が普通に放映されてますよ鷲王さん』
『普通に通報しといた、このバトルの結果がどうあれ警察動くね!』
『やったねワシちゃん明日はかつ丼だよ!』
……コメントも辛らつである。
あれだね、悪党には生きづらい世の中になったね。そこら中でスマホが監視してる時代だもの。
うん、そりゃあ昔に戻したいっていい出すよね。ああいう怪異や妖怪を知るもの達にとって今はマジ生きづらいだろうし。
「……裏切者とはいえ、かつての同僚がここまで馬鹿とは」
ほら鬼武が悲しそうにしてる。
「まあ、身の丈を越えた力を手に入れた奴ってたいていが増長してしまうしな……」
「然り。やはり力というのは鍛えに鍛えて身に着けるに限ります」
テイマーの弱点はそれである。
偶然強力なモンスターをテイミングしてそれを自分の力と勘違いしてしまい増長し、人間関係がうまくいかずパーティー追放されたり、力を過信して深いダンジョンにもぐって帰らぬ人になったりという話はよく聞く。
水面ちゃんはそうならないように真っ当に成長して欲しい。
「き……貴様ら! ふ、ふんまあいい!
どうせ私は覆面なので正体は隠しおおせる!」
「久慈方孝蔵三十六歳、住所は長野県長野市……」
「わーっ!」
鷲王が叫んだ。いきなり鬼武に個人情報暴露されるとは思っていなかったらしい。
まあ上司は部下の個人情報握ってるよな。当たり前だ。
「貴様ら……ふざけているのか! 状況が解っているのか!」
「わかっていないのはお前だろう」
「なに……?」
俺は言う。
「お前の企みは露見した。生配信されてな。そして犠牲者は出ていない。ここでお前とそいつを倒して全ては終わり、どんとはれ、だ」
俺の言葉に鷲王は……しかし笑った。
「ハッ、ハハハハハッ! バカが! この最強の式神枯葉童子の前ではお前らなど小鬼同然よ!
やれい、枯葉童子! 目に見える全てを殺し尽くし破壊し尽くすのだ!
ハハハハハもう止まらんぞ!」
勝ち誇り号令を下す鷲王。
その命令に枯葉童子は動く。
そして――
「――え?」
肉に爪が刺さる音が響き、鷲王の呆けた声が続く。
そう、枯葉童子は背後から鷲王を貫いたのだ。




