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【コミカライズ連載開始!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第十章 鬼女紅葉と鬼哭里ダンジョン

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第182話 出発前夜

 というわけで。

 俺達は故郷遠野から、長野へと行くことになった。


 朝一に遠野駅を出発して、長野駅まで四時間。そこからバスやローカル線などでで一時間の距離だ。長旅である。


 マヨイガさんと日狭女の妖力でささっと行けないのか、と視聴者コメントにあったけど、正直無理だ。

 マヨイガは全国どこでも行ける便利なものではない。ある程度の距離の場所になら道を繋ぐことはできるけど、長野は遠い。それに……。


「長野って、幾つもの神域、浄土がある場所だからねー。結界に阻まれたりするし」


 と、千百合の言葉だ。

 いや、無理と無茶を重ねれば何とかなるのかもしれないが……。


「せっかくのお呼ばれだし、のんびり旅しましょう。別に襲撃するわけじゃないんだし」


『襲撃なら速攻でマヨイガ&日狭女ちゃんアタックで奇襲かけんのかよ』

『さすがキチクさんwwwwww』

『敵に回したら次の瞬間に背後に立ってそう』

『いや日狭女ちゃんそれ普通にやってたしな』

『いいか……キチクは敵に回すな』


 また好き勝手言ってくれる。


「とにかくどうせだから、初めての旅配信にしようかなと。雑談生配信もやりますけど、旅行風景を後で編集してひとつの動画にしようかなって」


『それは楽しみ』

『でもキチクの編集動画ってつまんねえんだよな……』

『うん、センス無い』

『編集した動画番組ってセンスで目からなあ』

『キチクのは生配信の臨場感が楽しいんだ』


 ……ほっとけ。

 そういう動画のセンスがあまりないのはわかってるよ。


「まあ、だから編集は人に頼もうかと思ってます。

 最近は結構、配信者仲間も増えて来たし、そのツテとかで」

「というかプロに頼んでもいいんじゃない? そのくらいのお金はあるでしょ」


 千百合が言ってくる。

 プロか……確かにそれもアリといえばアリだ。


『ならいい業者知ってるよ』

『編集プロダクションならいくつかあるしな』

『夕菜ちゃんとこも編集はプロに任せてるって話だし聞いてみたら』

『ダンジョン協会で紹介してもらうってのもいいぞ、協会提携会社なら安心できる』


 色々な意見が出て来る。参考になるな。


『しかし長野か……どこだっけ』

『鬼哭里だったよたしか』

『きなり?』

『きこくさと?』

『きなさだよ、鬼の哭く里できなさ。鬼女紅葉伝説で有名』


「鬼女紅葉、ってのはね」


 千百合が説明を始める。


「平安時代に京から信濃……長野県の戸隠へと流罪になった女性の伝説なんだよ。

 平安時代に子供に恵まれなかった夫婦がいて、神仏に、そして……魔王に願ったその祈りは聞き届けられ、女の子を授かる。

 その美貌で有名になったその子、紅葉は時の権力者源経基の寵愛を受けるんだ。

 だけどそのうち、彼女はその寵愛を自分だけのものにしようとして、正妻を呪い殺そうとしてしまい、それが発覚して戸隠へと流される。

 そして流された戸隠の地で山賊たちの頭目となり、村々を荒して鬼女と恐れられ、そして朝廷によって討たれた……という話なんだ」


『そんな話があるのか』

『なんか聞いた事あるな』

『というか色々ほかの話とかぶってるな、玉藻前とかかぐや姫とか』

『まって、ということは紅葉って悪い妖怪なの?』


「ううん、そうとも言い切れないよ」


 千百合が視聴者の質問に答える。


「流された紅葉は、村人たちに様々な知識や読み書きを教えて世話をして病気も治し、都の文化も広めて、村を栄えさせたって言われているんだ。

 これは鬼の話によくある類型だね。

 みんなも知ってる桃太郎の鬼の話。知ってるよね。

 あれに出て来る悪~い鬼も、地元では「温羅さま」と言われ、地元に製鉄技術をもたらし栄えさせた英雄としても伝わってるんだ。

 中央から見たら権力に従わない悪い鬼、だけどその地方から見たら地元を栄えさせてくれたよい英雄。

 そういう話はいろんな所にあるんだよ」


『知らなかった』

『確かにそういう話は聞く』

『キチクだって地元のヒーローだしな』

『えっと、じゃあ紅葉っていい奴なの悪い奴なの結局』


「善悪なんて時代によって変わっちゃうからね。ただ、ひとつ言えるのは……あの紅葉ちゃんは悪い子じゃなかったっぽいね、ってことかな。

 彼女を取り戻しにきた四天王も正々堂々と礼儀正しかったし」

「確かにな。俺を菊池って言ったし」


『wwwwwwwwwwwwwwwwwww』

『キチクお前……名前呼ばれただけでデレるのか』

『ん? 菊池って誰だよキチクサン』

『知らない人ですね』


「やかましいわ。

 まあ、地元に慕われてるってんなら悪い妖怪じゃないだろ。

 というわけで明日から長野に行ってきます。

 朝一に出て、電車でゆっくりと。途中で余裕あったら雑談配信しますよ。

 具体的に言うと、周囲に人がいなければ」


 流石に普通の電車の中で雑談配信は出来ない。

 それは人としてのマナーである。

 周囲にご迷惑でないと判断できる状態だったり、徒歩だったりの時になら出来るだろう。


『そして紅葉ちゃんさんの踊りとか見るんだっけ』

『なんかの儀式だっけ』

『紅葉祭りっていってなかった?』

『それも配信すんのかこのチャンネルで』

『観客以外にリスナーにも見られるのはプレッシャーなのでは?』

『恥ずかしい格好について詳しく(迫真)』

『流石に裸や紐ビキニでの踊りはないだろ』

『ひんぬーだしな』


「まあ、祭を配信できるかどうかはあっちの人に聞きますけどね。でも過去に見学者や地元の人がその祭の動画配信してるから大丈夫とは思いますけど

 」


 俺は言う。遠野の祭りだって普通に公開されてるの多いしな。

 おそらく大丈夫だろう。


「というわけで、明日をお楽しみに。少なくとも昼過ぎには現地につくので、いったん雑談生配信はするので」


『たのしみー』

『待ってる』

『今度は壊さないでね(ダンジョンを)』


「まさか。今回はダンジョン探索にいくわけじゃないですし」


 俺はそう言った。

 いくらダンジョン配信者とはいえ、たまにはダンジョン探索以外を配信することだってあるのだ。

 まあ長野のダンジョンにも興味はあるけど。

 松代象山地下壕ダンジョンとか、森将軍塚古墳ダンジョン、諏訪湖底曽根遺跡ダンジョン、そして七年に一度現れる御柱ダンジョンなど。

 ……まあそういった有名なダンジョンは、俺は協会によって出入り禁止されてるけどさ。

 壊すかもしれないからって。

 ちくしょう。


 ともかく、準備は整った。

 今回行くメンバーは、俺と千百合、鈴珠。あと水面ちゃんに雲外鏡だ。

 日狭女は「こ、今回はちょっと……ライブの日程重なってるし」と断ってきた。配信アイドル活動は順調らしい。


 長野、か。そういやこないだの貧乏神ダンジョンも長野だったな。あれからあのダンジョンは盛況らしい。貧乏神をゲットしたい根性入ったロリコンたちが群がっているとか。

 ダンジョンが盛況なのはいい事である。

 ダンジョンに人の出入りが多いと言う事は、それだけダンジョンが暴走してスタンピードを起こす確率も低いと言う事だからな。


 とにかく、久々のダンジョン関係のない旅行だ。

 気を抜いて、楽しむとしよう。


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