第21話 守りたいもののために
「なー、お前の彼女さー」
学校帰り、ホームで電車を待っているいると隣りに立つ細川から話しかけてくる。
「俺こと嫌いなのかな?」
「なんで?」
「なんていうか、俺を見る目がキツイんだよ」
舞ちゃんのキツイ目? なかなかレアだな。わりといつもニコニコしてるのに。
「そんな事ないだろう?」
「いやあるから」
妙に確信めいて断言してくる。
「気の所為だろ。知り合って間もないから、そう感じるだけで普通じゃないか?」
舞ちゃんが誰かを嫌うのがあまり想像できないので、その主張に疑問を挟んでみる。
「そういうフラットな感じじゃなくて、こう、警戒されてるような感じでさぁ」
しかし、細川はそう言って否定する。
「そうかなー? お前、なんかしたんじゃないか?」
「してねーよ。ていうか、お前もいるじゃないか」
「まあ、そうだな」
それもそうか。
「で、なにか言ってなかった?」
「特になにも言ってなかったけど」
考えてみても思いつかない。
「うーん」
「やっぱり、気の所為じゃないのか?」
「そうかなー?」
結局結論は出ないまま、俺たちはやってきた電車に乗り込んだ。
「一応、今度聞いてみるけど。そんなに気にしなくてもいいだろ」
「でも、可愛い子に嫌われてるって、なんか嫌だろ」
「そんなもんかね」
「そうだよ」
ちょっと様子を気にしてみるかな。
夕食後、俺の部屋で勉強をしている舞ちゃんに声を掛けてみた。
「舞ちゃん、ちょっといい?」
舞ちゃんが顔を上げて笑顔を向ける。
「なになに?」
「あのさ、舞ちゃん、細川のこと苦手だったりする?」
あのあと、帰り道での舞ちゃんの様子を見ていると確かに少し表情が硬いというか、妙に余所余所しかったので気になって聞いてみた。
「苦手ってことはないけど……」
なんか言いにくそうに口ごもっている。
「どうかしたの?」
「えーと……」
「なにか嫌なことでもあった?」
俺が気づいてないだけか?
「なんでそんなこと気にするの?」
少し緊張した面持ちで訊いてくる。
「いやなんか、あいつが嫌われてるかもって気にしてたから。舞ちゃん苦手なのかなって。気の所為だろうとは言っといたんだけど」
「あれ? あの人とそんなお話しするの?」
「うん? するよ」
「え? そうなの?」
なんか意外そうな感じで答えてくる。
「なんで話ししないと思ったの?」
「仲悪いんじゃないの?」
「いやいや。普通に友達だし」
「あ、そうなんだ」
舞ちゃんが気の抜けたようなホッとした表情をする。
「仲悪いって思ってたの?」
「うん。最初、悠くん珍しくケンカしてたし、もしかしたらって」
「あれかー。でもあれはあの日だけで、その後も毎日一緒なのに?」
「今までいなかったし、無理やり付いてきてるだけかもしれないから、なんか気になっちゃって。悠くん嫌がってないかなって」
「それで警戒したような感じになってたのか」
「警戒……、そうだね。そうそう」
舞ちゃんは少し考えてからそう言った。
「そんなこと考えてたんだ」
まさか心配されているなんて、全く思ってもいなかった。
「うん」
「細川はちゃんと友達だから、心配しなくても大丈夫だよ。いつも昼飯一緒に食べるくらいには仲良いよ」
「え? そうなんだ。うん、わかった。今度、謝らないといけないね」
「そうだな」
「悠くんの友達だもんね。仲良くしないと」
「まぁ、普通にしてくれればいいから」
とりあえず一件落着? かな。




