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第20話 恋のプラズマ

 放課後の喧騒の中、帰り支度をしていると細川が陽気な声で話しかけてくる。


「笠原~、帰りカラオケでも行かねーか?」


「は? 何言ってんの?」


「部活なくて暇なんだよ」


「いやお前、部活休みなのは試験前だからだろ? 遊びに行ってどうするんだよ?」


「いいじゃん、別に。大して変わんねーよ」


「え、なに、お前らカラオケ行くの? 余裕だな」


 通りすがりの矢野が話に加わってくる。


「いや、行かねーし」


「えー、行こうぜー」


「一人で行って来い」


「付き合ってやればいいじゃん」


 笑いながら矢野が言う。


「いいわけあるかよ」


「なにカラオケ?」


 そうこうしてると橋本がやって来た。


「行かないからな」


「まー、そうだよね」


「なんだ、行かないのか?」


「当たり前だろ」


 矢野め、他人事だと思いやがって。


「暇なんだよなー、俺」


 まだ言うか。


「勉強しろよ。俺は帰るからな」


 そう言って俺は立ち上がった。


「俺も帰るわ。じゃあな」


 矢野は手を振りながら帰っていった。


「細川ほっといて帰ろうぜ、笠原」


 俺と橋本が歩き出すと渋々といった感じで細川もついてくる。


「へーへー」


 ようやく諦めたようだ。


「それならよー、試験終わったらどっか行こうぜー。気晴らしに」


 でもなかった。


「それいいな。笠原はどう?」


「んー、どうすっかな? 今月もすでに金欠なんだよな」


 舞ちゃんとデートに行ったり、澄華の誕生日プレゼント買ったりしてたら結構使ってしまった。


「いいだろー。パーっといこう」


「もう金ないのかよ? バイトしてんだろ」


「始めたばっかりだから、給料日まだなんだ。まぁ、カラオケくらいならいいか」


「よし、決定な!」






 駅で橋本と別れて細川と電車に乗り込む。


「なぁ」


「んー?」


「今日も愛しの彼女と一緒に帰るのか?」


「そうだな」


 約束してるわけじゃないけど、そうなるだろう。


「それじゃ、やっとしっかり顔が見れるのか」


 ……そうか、そうなるのか。畜生、こいつほっといて先に帰ればよかった。


「……なんでそんなに嬉しそうなんだよ」


「駅で二時間も抱き合うような美少女なんだろ? どんな女の子か楽しみじゃないか」


「……二時間も抱き合ってない」


 ……たぶん。


「目撃者は多いぞ」


「…………一時間半くらいだ」


 ……きっと。


「変わんねーよ」


 ……………………なんとかこいつを撒く方法は無いのか?。






 考える時間も無く、数分も掛からず駅に到着してしまう。


「楽しみだなー」


「……」


 階段を降りるとすぐに改札があり、その向こうに笑顔で手を振る舞ちゃんが見える。

 不意に肩を掴まれて振り向くと細川だった。


「おい!」


「なんだ?」


「めっちゃ可愛いじゃなか!」


 あたりまえだろ? 舞ちゃんだぞ?


「お、おぅ」


「聞いてないぞ!」


 言ってないからな。


「そうか」


「姉のほうはどっちかーて言うと凛々しいって感じだけど、妹はなんていうか、如何にも女の子って感じでふんわりしてて、いいな!」


「落ち着けよ」


「本当、可愛いな。今から告白していいか?」


「あ? ダメに決まってんだろ!」


「わかってるよ、言ってみただけだから。そんな怒んなよ」


「ふざけたこと言うからだろーが!」


「悪かったから、落ち着けって」


「落ち着いてるよ」


「『いい相手が見つかる』って言ってた割にめっちゃ怒るのな」


 痛いところを突いてくる。


「……お前だからだよ」


「ふーん……」


 なんだその目は。


「まぁ、いいけど」


「NBAにでも入ったら考えてやるよ」


「ハードル高っけえな!」


「当然だ」


 改札を抜けると舞ちゃんが不安げに訪ねてくる。


「どうしたの? 喧嘩?」


「なんでも無い」


「そう? 大丈夫」


「ああ、大丈夫」


「紹介してくれないのか?」


「……コイツは細川。友達かな?」


「なんで疑問形なんだよ」


「考え直したほうがいいかもと思って」


「なんでだよ」


「……えと、笠原先輩の恋人の結城です。はじめまして」


 舞ちゃんがおずおずと話しかけると、細川はそちらに向き直した。


「よろしく。笠原の友達の細川だ。それに、お姉さんとも中二の時にクラスメイトだったんで顔見知りなんだよ」


「あ、そうなんですね。姉がお世話になってます」


 そう言って、お辞儀をしている。


「うん。よろしくね」


「はい、それじゃあ解散。じゃあな細川。行こう、舞ちゃん」


 話を打ち切るように声を出して歩き出す。


「うん」


「えらく冷たいな」


「どうせ、駅出たらすぐに分かれるだろ」


「そこまで一緒にいこうぜ」


「いやだ」


「根に持ってんな」


「そうだよ、悪いか」


「悪いわ」


 言ってる間に分かれ道に着いた。


「まあしょうがないな。また明日な」


「じゃあな」


「さようなら、細川さん」


 そう言って細川は角を曲がっていく。ろくでもない目にあった。


「喧嘩?」


 舞ちゃんが少し不安げに訊いてくる。


「喧嘩ってほどじゃないよ、別に」


 理由はとてもじゃないが言えないけど。


「悠くんが言い合いしてるから、何かあったのと思っちゃった」


「大したこと無いよ」


「仲、悪いの?」


「悪いわけじゃないから。大丈夫」


 舞ちゃんに手を出しさえしなければ。


「それならいいけど」


「気にしない、気にしない。さ、帰ろう」


「うん、帰ろう」


 しかし、やっちまった。

 明日、またからかわれるんだろうな……。


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