第13話 ごまかし
昼休み
「なぁ、笠原」
一緒に弁当を食べていた細川が聞いてきた。
「お前、結城の幼馴染だったよな?」
「そうだけど、何だ?」
「結城の妹の方って、彼氏いるかどうか知ってるか?」
突然なに言い出すんだ、コイツ。
「結城って、隣のクラスの結城さん?」
もう一人、一緒に食べていた橋本が話に加わる。
「そうそう、コイツ幼馴染なんだぜ」
「へ~。仲良いの?」
橋本は高校からの友人なので、そのことを知らなかったらしい。
「まぁ、それなりに。昔ほどじゃないけど」
「結城さん、妹いたんだ。何年生? やっぱり可愛い?」
「今、中学二年だな。俺は最近見てないけど、可愛くなってきたらしいぞ。実際どうなんだ?」
俺に聞くな、俺に。可愛いけど。
「ノーコメント。それより、さっきの質問はなんだ?」
話を最初に戻して、細川に尋ねる。
「中学の部活の後輩の小田ってやつが、今度、結城の妹に告白するらしいんだけど」
爆弾ぶっこんできやがった。
「他の後輩連中から、告白が成功するかどうか、一口乗らないかって、連絡がきたんだよ」
「は?」
呆れて物が言えない。
「睨むなよ、俺のせいじゃないし。それで、どうなんだ?」
「人の、…………幼馴染を掛けの対象にするなよ」
無理に隠す気はないけど、わざわざ俺と付き合っているなんて広める必要はないな。
「掛けになるってことは、恋人寸前って感じゃないんだよな」
「それどころか、アイツ話したことすらないらしいぞ」
それは無茶だな。俺のことがなくても、そんな相手の告白を受けるとは思えない。
「それで告白するの? 勇者だな。そんなに自信あるのか。その、オダってのはモテるのか? どんな感じのヤツなんだ?」
橋本が興味深々で食いつている。
「俺も気になるな。変なヤツに舞ちゃんはやれないからな」
「父親か? お前は」
「せめて兄と言ってくれ。で、どうなんだ?」
「少なくともウチの部じゃ将来有望だし、顔も悪くない。今はともかく、三年が引退してレギュラーになれば、すぐにモテるようにはなるだろうな」
「成績は? それなりに優秀じゃないとダメだからな」
「やっぱり父親じゃないか」
「成績は知らん。赤点で困ってるって感じじゃないけど」
「イケメン候補か。そうなるとやっぱり、結城さんの妹が気になるな。写真とかないの?」
コチラに矛先が向いてきた、が。
「見せてやる義理はないな」
「隠すあたり怪しいな、やっぱり可愛いのか」
ちっ、勘のいい奴め。
「イケメン候補が、話もしたことも無いのに好きになるってことだし、きっと可愛いんだろ?」
「一目惚れだってよ。先月、佐竹が、同じ部活のやつなんだけど、そいつが告白した時に覗きに行ってて惚れたらしい」
「モテモテじゃないか、その子。笠原、それ知ってたか?」
「いや、知らない。そういう話はしたことないから」
「そのサタケとかは、なにか聞いてないのか?」
「聞いてるかもしれないけど、どうなんだろう? 俺の所まで細かい話は来てないからな。部外者だし」
「それもそうか」
「で、どうよ、彼氏いるのか?」
さて、どう答えようか?
「そもそも、笠原は知ってるのか?」
「たぶん知ってるだろ? 結構仲良いみたいだぞ。去年、並んで登校してるのよく見たし」
「……それって、笠原が付き合ってるってオチじゃないだろうな」
…………勘のいい奴め。
「家が近いからな」
「それだけか?」
「そういや、怪しいのか? ……幼馴染ってそんなモンだと思ってたけど。言われてみれば気になるな」
細川まで怪しみ出し始めた。
「小学生の頃から一緒だったから」
「それでもなー」
「いや、確かに、なんか距離が近かったな」
なんてこと事言いやがる。
「なんにしても、話もしたことも無い相手の告白を受けることはないんじゃないか」
「露骨に誤魔化しやがった。どうよ細川?」
「ちょっと、去年コイツと同じクラスだったヤツに連絡取って見るわ」
「わかった、話す……」
一通り、これまでの話を二人にする。
「それで、付き合っている、と……」
「リア充がココに居た」
「まぁ、一応、そういうことになってる」
「一応ってなんだ?」
「え~と…」
せっかくだし、舞ちゃんについて考えていることを聞いてもらうか。澄華は全く理解してくれないしな。
「ほら、あの年頃って年上に憧れたりするだろ?」
「漫画でみかける展開だな」
「年上の女の人、とか? あるある」
「たぶん、それで俺のこと好きだと勘違いしてるだけなんじゃないかって」
「ほう」
「そのうち、それに気づいて振られるかな、と思ってる」
「それで一応、か」
「そう」
「有りそうって言えば、有りそうだけど……。どうなんだろう?」
「それは本人にしか解らないなー。俺は会ったことすらないし、何とも言えないな」
「俺だって見たことしか無いぞ」
う~ん、イマイチ賛同してくれないな。
「まぁ、せっかく付き合ってるんだから、楽しめばいいんじゃないか?」
「楽しいのは楽しいぞ」
「リア充め」
「ドコまでいった?」
「キスは?」
「するかよ」
「なんで?」
「ファーストキスなんか一生の思い出になるんだから、取っておかないと」
「そんなもんか?」
「そうそう」
「お前が相手じゃダメなのか?」
「ダメだろ」
「そんな事考えて付き合ってるやつなんかいねーぞ」
「笠原くらいだな」
「そうだ、俺と付き合っていることは、後輩たちには言い触らさないでくれよ」
「なんで?」
「彼女が誰かを好きなった時に、俺のことが知られてたら困るかもしれないだろ?」
「俺はいいけど……」
「彼女が告白されてもいいのか?」
…………考えたくは無い、でも。
「……当たり前だろ。舞ちゃんの幸せが一番だからな」
――きっとそれが正解だ。




