第22話 ブラッシングとお風呂
side レオン(狼騎士さん)
「私と軍馬くんはお風呂に入ろうと思うけど、狼騎士さんはどうする?」
サクラはそういいながら、ブラシや石鹸を出してきた。
「俺も入っていいのか?」
こういう、外で風呂に入れることはまずない。
せいぜい、水で濡らしたタオルで体をふくか、夏なら川で水浴びだ。
貴重な水を体を綺麗にするのに使えないからだ。
しかも、3番隊の騎士は大勢で寝泊まりすることが多いからその人数、風呂に入るのは難しい。
「うん。いいよ。」
サクラは不思議そうな顔をする。
当たり前だと言うように。
「そうか、なら俺は後で入らせてもらう。見張りをしておくが、この周りには隠すものはないのか?」
見張りをするにしても、サクラは女の子だ。
隠すものは必要だ。
「あ!!ない。」
「、、そう、か。」
俺は、顔が赤くなるのがわかった。
のぞくつもりはないが、サクラがこれまで、なにも隠さず風呂に入っていたと思うと顔が赤くなる。
「!!そうだ。獣人は人間に比べて、五感が鋭いから、目隠しでもしよう。そうすれば、安心だな。目が隠れていようと魔物を発見できる。よし、そうしよう。」
サクラに言い聞かせてるのか、自分に言い聞かせてるのかよく分からない。
慌てていて、とても早口になっている気がする。
「別に目隠ししなくても、信じてるから大丈夫だよ。」
笑みをもらしながらサクラは言った。
そういってくれるのは嬉しいが、サクラはかわいい。
俺も男だ。
少しは警戒をして欲しいとも思う。
「今からは軍馬くんを洗うから、手伝ってくれる?」
「あぁ、わかった。」
風呂に入らせてもらうのに、何もしないわけにはいかない。
「とりあえず、このブラシで軍馬くんの毛を梳いてくれる?それで、今脱いで持っている洋服貸して?落ちるかわからないけど、洗うから。」
「分かった。ありがとう。助かる。」
俺の服の汚れはすごい。
サクラに洗わせるのは、可笑しいとも思うが、この場で俺は綺麗にできる自信が無い。
俺はサクラに服を渡し、軍馬くんをブラッシングするために、移動した。
軍馬くんは、頭がいいように見える。
サクラが俺を追いかけた後も、繋がれていないのに、サクラの後を追いかけて、草を食べてた。
愛馬は呼べば来るが、それは訓練したからであるし、他の騎士の愛馬を呼んでも来ない。
それはどの軍馬にも共通することである。
それに、この草原で、軍馬を1人にしたとしても、生きていける。
そんな状態で、繋がれてもいないのに、追いかけるのは、長年一緒にいる普通の愛馬でも、出来ない。
この軍馬くんは普通の軍馬ではないのかもしれない。
丁寧に、軍馬くんをブラッシングしていく。
助けてくれた、サクラが大切にしている軍馬くんだからだ。
俺がいつも軍馬をブラッシングするより丁寧にブラッシングする。
俺は愛馬を持たないが、軍馬は乗る。
その時その時軍馬は違うが、どの軍馬の時にも丁寧にブラッシングする。
軍馬くんが気に入るといいけど。
軍馬くんのブラッシングを終えて、サクラの方に戻ってきた。
軍馬くんは満足したようだった。
良かった。
「ありがとう。この石鹸で、軍馬くんのことを洗ってもらってもいい?まだ、洗濯できてないもんで、先にお風呂入っていいよ。これ頭洗うやつで、こっちが体洗うやつだから、間違えないようにね。はい、これタオルね。」
サクラは、小さい桶に長方形の小さな板で薄くした石鹸を作っているようだ。
「この高級そうな石鹸を使ってもいいのか?ありがたい。こんな高級そうな石鹸見たことない。本当にいいのか?軍馬くんのことは任せてくれ。」
俺は驚いた。
あったばかりの俺にこんな高級そうな石鹸を渡していいのか?
軍馬くんをしっかり洗おう。
任務を得た時と同じか、いや、それ以上に気合いを入れた。
「気にせず、使ってくれていいよ。軍馬くんを洗ってくれた、お礼だとでも思ってくれてどんどん使っていいよ。軍馬くんのことをよろしくね。」
サクラは、優しいな。
安心して、任してほしい。
石鹸などを受け取り、サクラの位置から見えない所にある特大桶のお風呂に向かった。
軍馬くんと一緒にお湯に浸かった。
高級そうな、ではなく、本当に高級な石鹸だった。
サクラは異世界人だからか、ここでの常識を知らないようだ。
色々教えていきたいと思う。
異世界人ってことを隠す常識があって、良かった。
こんなに世話になったんだ。
できることは、全部してあげたい。
サクラを無事に送り届けるまでの短い期間だけど、精一杯やろう。
俺の国の王様は常識的だからサクラを任せられる。
迷い人は国に保護されて、だいたいは、そこで自由に生きていく。隣の国は知らないが、だいたいの国は国で保護する。
俺はサクラのことが気に入っているようだ。
送り届けるまでの期間が短いのが嫌だ、なんて考えるほど。
それにしても、『ヒール』には驚いた。
こんなに綺麗に傷がなくなるとは思わなかった。
さすが、迷い人、異世界人というべきか。
そんなことをひとりで考えていると、急に軍馬くんが外に出た。
驚いたが、逃げるわけではないようで安心した。
任せてくれと言っときながら、逃がすなんてことはできない。
あんなに、気合いを入れたのに、軍馬くんが賢すぎて安心していたようだ。
だが、なぜ外に出たのだろうか?
あぁ、のぼせたのか?もう、お湯には浸からないようだ。
俺のことを待っているみたいだ。
俺も湯船から出て、体をふいた。
軍馬くんが体をブルブルして、水を落としたせいで、俺はもう一度体を拭くことになった。




