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博之43歳異世界14か月目終盤。エレナに部屋に招かれ今後の関係について話される。恋人以上でお願いしますwww

十四か月目の終わり、エレナとの約束


 十四か月目も、そろそろ終わろうとしていた。

 横丁は大きな揉め事もなく回り、二号店も少しずつ形になってきた。

 商会には求人や融資希望の紙が積み上がり、博之の仕事は減るどころか、

 いつの間にか種類だけ増えている。

 そんなある日の夜。

「博之さん、少しいいですか?」

「はい?」

 仕事を終えて二階へ上がろうとしたところで、エレナに声を掛けられた。

「部屋に来てください」

「……怒られるやつ?」

「どうでしょう」

「怖いなあ」

・・・・・・・・・・・

 エレナの部屋へ入ると、小さな卓の上にワインと二つの杯が用意されていた。

「どうぞ」

「ありがとうございます」

 向かい合って、少しだけワインを飲む。

 仕事場で見るエレナと違い、今はどこか柔らかい。

「博之さん」

「はい」

「最近、仕事ばかりですね」

「まあ……増えましたな」

「自分で増やしてますけどね」

「それ言われると何も言えへん」

 エレナが笑う。

 少しして、不意に聞いた。

「忙しくなると、また女性のいるお店に行きたくなります?」

「え?」

「この前みたいに」

「あれは社会勉強やったやん!」

「はいはい」

「ほんまやって」

 博之は苦笑し、それから少し考える。

「でも、まあ……」

「まあ?」

「俺はエレナさんがええですよ」

 エレナが一瞬止まった。

「……そうですか」

「何?」

「いえ」

 明らかに機嫌が良くなった。

「なら、よかったです」

 二人でまたワインを飲む。

 しばらくして、エレナがゆっくり言った。

「私、この関係はありがたいと思っています」

「うん」

「一緒に働けて、同じ建物にいて、こうやって時々一緒に過ごせて」

「うん」

「でも、できればそのうち責任は取ってほしいな、とも思っています」

「……え?」

「え、じゃないです」

「いや、責任って」

「やることやっておいて、そんな顔するんですか?」

「それ言われたら弱いな!」

 エレナが声を上げて笑った。

「そういや、この辺って結婚どうなってるん?」

「どうなってる、とは?」

「俺がいたところでもな、基本一人の夫に一人の妻ってところもあれば、複数の妻を持つことが

 認められてるところもあったんよ」

「へえ」

「前者で他の女の人作ったら、浮気とか愛人とか言われるやろ。後者なら、

 養えるならそういう家もある、みたいな」

 エレナがじっと見る。

「博之さん、そんなにたくさん女性をはべらせたいんですか?」

「ちゃうちゃう!」

 慌てて手を振る。

「そういう願望が強いわけちゃうねん。ただ……」

「ただ?」

「俺、今まであまりにもモテへんかったからな」

「はい」

「そこ即答する?」

「続けてください」

「だから誰かにぐいっと来られた時、どうしたらええか分からんねん」

 今まで経験してこなかったことが、四十三歳になって急に起きている。

「エレナさんもそうやし……セラさんも最近、まあ……」

「セラさんならいいですよ」

「……え?」

 今度は本気で固まった。

「何その顔」

「いや、そこええん?」

「私はセラさんまでなら、です」

「なるほど……」

「納得しないでください」

「いや、今エレナさんが言うたんやん!」

 エレナは杯を置いた。

「でも、そこから先ですよ」

「はい」

「また綺麗な女性が現れたからって、博之さんがほいほい行ったら」

「行ったら?」

「拗ねます」

「拗ねるんや」

「かなり拗ねるかもしれません」

「分かりました」

「本当に?」

「はい」

 博之は少し笑った。

「俺も別に、誰彼構わずって気はないですよ」

「ならいいです」

 エレナは満足そうに頷いた。

「私はね」

「うん」

「いろんな人を助けようとしている博之さんも好きですよ」

「大したことしてへんけどな」

「そういうところも含めてです」

 子供に金を貸し。

 仕事を作り。

 怪我した冒険者を助け。

 教会へ金を出し。

 近所の商人と揉めないように頭を下げる。

「だから、博之さんを好きになる人が出てくるのは仕方ないと思ってます」

「なんか俺、えらい評価高いな」

「でも、だからといって何でも許すわけではありません」

「そこは分かりました」

「よろしい」

 エレナが少し笑った。

「今日はこうして、ゆっくり話せただけでも嬉しいです」

「俺もですよ」

「では」

「はい?」

「もう少しこっちへ」

 エレナが布団の方を見た。

「……分かりました」

「素直ですね」

「ここで断るほど鈍くないです」

「少しは成長しましたね」

 二人で笑う。

 布団へ入る前に、エレナがもう一つだけ言った。

「博之さん」

「何?」

「今度から私のことを聞かれたら、『恋人に近い』は禁止です」

「じゃあ何て言うん?」

「恋人以上です」

「以上?」

「はい」

「範囲広ない?」

「文句あります?」

「ありません」

「ならよろしいです」

 その晩は、仕事の話をほとんどしなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 翌朝。

「おはようございます」

「おはよう」

 二人は何事もなかったように一階へ降りた。

 帳簿係は帳面を開き、店からは朝の仕込みの音が聞こえる。

 いつもの商会だった。

 ただ。

「博之さん、朝ご飯食べました?」

「まだ」

「では、持ってきますね」

「ありがとうございます」

 エレナの機嫌だけは、明らかにいつもより良かった。

 それを見た博之は何も言わず。

「……まあ、ええか」

 小さく笑って、今日も積み上がった仕事の紙を手に取った。

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