↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/169

博之43歳異世界14か月目。ミサキの修行先と、小さな治療院の話

 ミサキに治癒魔法の適性が出た翌日。

「ほな、リクん時と一緒や」

「何が?」

「最初の動線だけ、おっちゃんが作ったる」

 博之はミサキを連れて、まず横丁からそう遠くない治療院へ向かった。

「すいません。ちょっと相談なんですけど」

「はい?」

「この子、鑑定で治癒魔法の適性が出まして」

 院主がミサキを見る。

「それは良かったですね」

「ただ、適性だけあっても使い方分からへんので。修行というか、働きながら

 教えてもらうことってできます?」

「できますよ」

「お金払って習う感じ?」

「いえ。基礎を覚えれば、こちらとしても助かります」

「え?」

「治癒魔法を使える者自体が少ないんです。軽い切り傷や打ち身など、

 練習を兼ねて治してもらうだけでも仕事になりますから」

 博之がミサキを見る。

「ええやん。給料までもらえるやん」

「まだ何もできへんで?」

「せやから覚えるんやろ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 次は教会だった。

 神父も結果を聞くと素直に喜んだ。

「ミサキさんが治癒ですか。それは素晴らしい」

「こっちでも教えてもらえます?」

「もちろんです」

 博之は気になっていたことを聞いた。

「ダンジョンで使う治癒と、教会とか治療院で使うんって違うんです?」

「基本は同じです。ただ、求められるものが違いますね」

 ダンジョンでは短時間で傷を塞ぐことが優先される。

 一方、治療院では症状を見ながら丁寧に魔力を使う。

「肩や腰が痛いとか、そういうんも?」

「治癒で完全に治せないものもありますが、痛みを和らげられる場合はありますよ」

「ほう……」

「博之さん」

 ミサキが横から睨む。

「また商売考えてるやろ」

「ばれた?」

「顔がそうなってる」

 博之は笑った。

「いやな、将来お前が簡単な治療できるようになったら、横丁に小さい治療所あってもええやん」

「私の?」

「そう」

 神父も考える。

「悪くないですね。こちらや治療院から、ミサキさんでも対応できる

 軽い患者さんを回すこともできます」

「それええやん」

「ただし、できない治療まで引き受けないことです」

「そこは絶対やな」

 何ができるのかを明示する。

 できないものは既存の治療院へ紹介する。

 周囲の商売と揉めないというのは、洗濯や散髪でも学んだばかりだった。

「顔役さんにも頭下げて、横丁でやらせてもらえるか聞こ」

「場所代は?」

「月銀貨一枚くらいは払ってもらうで」

「私から取るん!?」

「商売やから!」

・・・・・・・・・・・・・・・・

 帰り道。

「でもな」

 博之は少し真面目になる。

「お前、今は銀貨百十枚の借金あるからな」

「分かってるって」

「治療院と教会で修行して、ちょっとずつ稼いで返す」

「うん」

「返ってきた金で、また次の子の鑑定できるやろ」

 リクも、薬草商売から毎月銀貨七枚ほど返せる流れが見え始めている。

「リクなんか、自分で薬草集めるだけちゃうぞ。教会の子とかじいちゃんらに採ってきてもらって、

 鑑定して買い取って、それを売ってる」

「リク、結構すごいな」

「せやろ? それ考えたら、お前は元手ほとんどいらん」

 治癒魔法を使い、その対価を受け取る。

 治療後に必要な薬があれば、

「リクから仕入れたらええ」

「リクから?」

「友達価格にしてもらえ」

「リク、絶対取るで」

「俺に似てきたからな」

 ミサキが笑った。

「薬を仕入れて、治療代と薬代をもらう。ちょっと利益乗せてもええ」

「また商売の話や」

「大事やぞ。借金返さなあかんねんから」

 ただ、そうなると帳簿も必要になる。

「お前にいきなり帳簿全部覚えろ言うても大変やしな」

「じゃあどうするん?」

「商会の帳簿係、二人くらい増やそかな」

「また人雇うん?」

「リクとお前の分も見れる人間作っとく」

「……おっちゃん過保護ちゃう?」

「ちょっと思ってる」

「思ってるんや」

「特別サービスや」

 最初だけ道を作る。

 その後は本人たちに任せる。

 博之なりに、少しずつその距離を覚えようとしていた。

「最後、顔役さんとこ行こ」

「今日?」

「勢いあるうちにな」

「おっちゃん、ほんま格好ええな」

「いやいや、おっちゃんやぞ?」

「それ関係ある?」

「あるやろ。四十三のおっさんやで」

 するとミサキがニヤッとする。

「でも最近、エレナさんとセラさんから結構来られてるやん」

「……それは、さすがに俺も分かってきた」

「お、自覚あるんや」

「あるわ」

 エレナとは、もう友達だけではない。

 セラとも、少しずつ距離が近づいている。

「ただなあ」

「何?」

「『俺なんかでええんかな』が抜けへんねん」

「めんどくさいおっちゃんやな」

「うるさい」

「しゃあないな。私がアドバイスしたるわ」

「お前、何目線やねん!」

「女の子目線」

「十歳そこそこに恋愛相談する四十三歳は嫌や!」

 ミサキが声を上げて笑った。

「ほら、顔役さん行くで」

「はいはい」

「まず恋愛より借金銀貨百十枚や」

「急に現実に戻すな!」

 治癒魔法を得たミサキにも、ようやく進む道が見え始めた。

 あとはその道を、本人がどこまで広げるかだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。