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博之43歳。異世界13か月目後半。次はミサキの番やで。鑑定。いろいろ思うところがあるミサキ

 リクの薬草買い取り所がどうにか黒字になった頃。

 博之は、横丁で皿を片付けていたミサキを見つけて声をかけた。

「ミサキ、ちょっとええ?」

「何?」

「最近ちょっとリクに付きっきりやったからな」

「……別に」

「なんや、その顔」

「別にって言ってるやん」

「拗ねんなよ」

「拗ねてへん!」

 博之は笑った。

 ソラはもう冒険者として、セラとユーリに付いて依頼へ出ている。

 リクはリクで、薬草の採取と鑑定を使った商売を始めた。

「とりあえずリクの方も黒字にはなった」

「ほんま?」

「半月で売上銀貨二十二枚。自分の給料も取って、経費も払って、それでも利益出た」

「すごいやん」

「まだ最初やからな。どこまで続くか分からんけど、しばらく商会で見とく」

 ソラについても心配していないわけではない。

 魔物と戦う仕事なのだ。

 だが、セラとユーリという経験者がいる。

「せやからな」

 博之はミサキを見る。

「次、お前や」

「……鑑定?」

「そう」

 ミサキの顔が明るくなった。

 だが、すぐに少し遠慮したような表情に戻る。

「でも私、待てるで」

「なんで?」

「だって、おっちゃんに拾ってもろて、仕事もらって、飯も食えてるやん。

 それだけでも前と全然違うし」

「そういう話ちゃうねん」

「でも鑑定も、そのうちしてくれるんやろ?」

「そのうちが、もう見えてきたって話や」

 ミサキは首を傾げた。

「この前の締めな。半月の利益が銀貨三十五枚やった」

「三十五!?」

「甘いもんが意外と売れてな」

 このままもう半月同じ程度残れば、月で銀貨七十枚ほどになる。

「もちろん毎回そうはいかんで。雨もあるし、壊れるもんもあるし」

「でも、結構あるやん」

「せやろ?」

 さらに借金の返済も入る。

「今度、リクが三枚。ソラが八枚。ユーリさんが八枚。エレナさんも三枚」

 合わせれば銀貨二十二枚。

「二十枚以上返ってくる」

「そんなに?」

「せやから、それ持ってまたギルド行く」

 返済実績を積む。

 預金を少し増やす。

「あと銀貨何枚預けたら、もう一人分の金貨一枚貸してもらえるか相談する」

「……私の?」

「お前以外誰おんねん」

 ミサキが黙った。

「ほんまに?」

「まだギルドが貸す言うてへんから絶対とは言わん。でも、かなり近いと思う」

「おっちゃん……」

「泣くなよ」

「泣いてへん!」

「リクと同じやん」

「一緒にすんな!」

 二人で笑った。

 しばらくして、ミサキがぽつりと言った。

「でも、おっちゃんさ」

「ん?」

「人のことばっかり考えてへん?」

「そう?」

「ソラの鑑定して、リクの商売作って、今度私やろ?」

「まあな」

「おっちゃんの幸せは?」

 思いもしなかった質問に、博之が止まった。

「俺?」

「うん」

「俺は……結構楽しいで」

「ほんま?」

「ほんまほんま」

 最近は一日中店に立つ必要もなくなった。

 商会の人間が帳簿を見てくれる。

 その分、料理を考える。

 横丁を歩く。

 変な商売を思いつく。

「ホットケーキ作ったり、薬草の商売考えたり、服売ってみたり。俺、こういうん考えてる時

 結構楽しいねん」

「でも自分のために何か買ったりせえへんやん」

「飯食えて酒飲めたらええよ」

「女の人は?」

「お前、子供が何聞いてんねん」

 ミサキが笑う。

「だっておっちゃん、酒、金、女とか言うやん」

「言うけどなあ」

 実際には店を増やし、人の借金を気にし、子供の将来を考えている時間の方が長い。

「まあ、あんま子供がそこまで心配せんでええ」

「でもな」

「何?」

「おっちゃんみたいなんやったら、そらみんな惚れるわ」

「……そうか?」

「そうやで」

 博之は真顔で考える。

「全然そんな雰囲気ないけどな」

「おっちゃん鈍すぎるねん」

「いやいや」

「何人かおるやろ?」

「何人かって何や」

「知らんけど」

「知らんのかい!」

 ミサキは楽しそうに笑った。

「でもエレナさんは分かるやろ?」

「……まあ、それは」

 さすがの博之も分かっている。

 あれだけはっきり言葉にされ、一緒に過ごすようになったのだ。

「強烈にアプローチされたからな」

「それぐらいせんと分からへんの?」

「多分」

「終わってるやん」

「うるさい!」

 ミサキが腹を抱えて笑う。

「セラさんも大変やなあ」

「なんで急にセラさん出てくんねん」

「ほら、それや」

「何が?」

「もうええわ」

「なんやねん!」

 しばらく笑ったあと、博之は少しだけ真面目な声に戻った。

「まあ、お前の鑑定終わったらな」

「うん」

「そこで終わりちゃうから」

「どういうこと?」

「ソラが返す。リクが返す。お前も稼げるようになったら少しずつ返す」

 返ってきた金を、次へ回す。

「この地区には、お前らみたいに鑑定受けられへん子、まだおるやろ」

「いっぱいおる」

「その中から一人ずつでも回せたらええ」

 冒険者になるかもしれない。

 リクのように商売を始めるかもしれない。

 料理人かもしれない。

 裁縫かもしれない。

「何になるかは知らん」

「また知らん言うてる」

「分からんもんは分からん」

 博之は笑った。

「でも一個ずつやればええねん」

「……うん」

「とりあえず次はミサキ」

「うん!」

「どんな適性出ても落ち込むなよ。リクで懲りたからな」

「分かった」

「戦えんでも仕事はある」

「分かったって」

 ミサキは嬉しそうに頷いた。

 そして少し間を置いてから、また笑う。

「ほんま、おっちゃん面倒見ええな」

「だから普通やって」

「そら惚れるわ」

「その話もうええ!」

 横丁に、ミサキの笑い声が響いた。

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