博之42歳。異世界4か月目。3軒目も順調やが支払いが増えて2週間で原価、薬代、教会寄付で残り利益銀貨2枚wwwギルドに銀行あるから見に行く。
三軒目を始めてから、一週間ほど。
店の形は、だいぶ固まってきた。
一軒目は博之とミサキ。
二軒目はエレナとソラ。
三軒目は新しく雇ったおばちゃんとリク。
「とりあえず三人とも、一軒ずつ入れ」
「俺も?」
「当たり前や。飯食うだけちゃうぞ」
リクが笑う。
三軒合わせて、一日六十食。
最初はそこまで売れなかった。
一軒目と二軒目はほぼ二十食売れる。
だが三軒目は十食ほど。
「まあ最初はそんなもんや」
残った料理を博之が味見する。
「うーん」
「まずい?」
おばちゃんが心配そうに聞く。
「まずくない。ただ、ちょっと薄いかな」
香辛料を足す。
魚の出汁を少し濃くする。
「これでどう?」
エレナも一口。
「こっちの方がいいですね」
「ほんなら明日はこれで」
残った料理は捨てない。
働いている皆で昼と夜に食べる。
それでも余れば、近所の者にも渡した。
一週間もすると、三軒目の味も安定した。
十食だった売上が十三。
十五。
十八。
そして。
「今日、全部なくなったで!」
リクが空の鍋を抱えて走ってきた。
「ほんま?」
「二十!」
「おお」
三軒合わせて六十食。
初めての完売だった。
それからは、六十食売れる日も珍しくなくなった。
そこで博之は給金も揃えることにした。
「とりあえず今は、一日銅貨二十枚ずつ」
「俺らも?」
「働いたらな」
ソラ、リク、ミサキ。
エレナ。
三軒目のおばちゃん。
一人銅貨二十枚。
「外の日雇いと同じくらいや!」
ソラが嬉しそうに言う。
「店ちゃんと売れんかったら下げるかもしれんぞ」
「頑張る!」
「分かりやすいやつやな」
夕方になると、数人で市場へ行くことも日課になった。
「これ安なってるで」
「芋?」
「うん」
「買っとこ」
売り物とは別に、売れ残った野菜や魚を安く買う。
それで翌朝の賄いや、夜の飯を作った。
時には大鍋いっぱいになる。
当然、近所の子供たちが寄ってくる。
「おっちゃん」
「なんや」
「今日も余ってる?」
「お前ら匂いで来てるやろ」
器を出す。
「ちょっとだけな」
「ありがとう!」
仕事のない男も来る。
「俺にもあるか?」
「あるけど毎日期待すんなよ」
「分かっとる分かっとる」
「将来のお客さんやからな、子供らは」
博之が冗談で言うと、近くのおっちゃんが笑った。
「わしらも客になるかもしれんぞ」
「あんまり期待してへん」
「ひどいやつやな!」
皆が笑う。
そんな日々が、さらに一週間続いた。
夜。
博之は久しぶりに帳簿代わりの紙を広げた。
「さて」
ミサキたちも周りに集まる。
「売上は……銀貨三十二枚ちょい」
「そんなにあるん?」
「売上や。俺の銭ちゃうぞ」
そこから引く。
食材。
薪。
香辛料。
三軒の家賃。
五人分の給金。
エレナの洗濯代。
「……人件費で銀貨十四枚飛んでるやん」
「ジンケンヒ?」
「お前らの給料」
「返す?」
リクが聞いた。
「返さんでええわ」
さらにエレナの薬。
そして教会。
読み書きと計算の勉強は続いていた。
今度からは、三軒目のおばちゃんも一緒に習う。
「私までいいのかい?」
「ええやん。店やるなら数字分かった方が楽やろ」
「この歳で勉強とはねえ」
「俺も四十二からやってるから一緒一緒」
教会にも、また銀貨と銅貨を渡した。
全部計算すると。
「……残り銀貨二枚くらいやな」
「少なっ」
ソラが言った。
「そうやねん」
売上だけ見れば銀貨三十枚以上。
なのに色々払えば二枚程度しか残らない。
「でもな」
博之は紙を見る。
「五人に給料払ってる」
皆が飯を食っている。
エレナは薬を飲めている。
読み書きと計算も習っている。
三軒の家賃も払えている。
「それで銭残ってるんやから、まあええんちゃう?」
エレナが微笑んだ。
「最初は博之さん一人でしたからね」
「そう考えたら増えたなあ」
三軒。
六十食。
五人の働き手。
夕方には近所の者が集まり、飯を食いながらくだらない話をする。
教会へ勉強にも行く。
「なんか日常になってきたな」
博之は呟いた。
異世界へ来た当初は、明日の飯すらなかった。
今は六十人分の飯を毎日作り、人に給料まで払っている。
「次は、もうちょい利益出ること探さんとな」
「店増やす?」
「それもあるけど」
博之は少し考えた。
「そろそろギルド見に行こか」
飯屋だけで終わるつもりはなかった。
というより。
いつの間にか、飯屋だけでは済まなくなり始めていた。




