博之42歳。異世界3か月目。ソラ、リクにも交互で仕事を渡す。ある日ソラが仕事さぼったことがばれて気まずくなるwww
次の一週間を始める前に、博之はソラ、リク、ミサキの三人を店の前に座らせた。
「ちょっと働き方決めよか」
「働き方?」
「そう。今まで適当すぎたからな」
博之の店はミサキが手伝ってくれている。
隣の店はエレナが見ているが、客が増えれば皿洗いも配膳も一人ではしんどい。
「まずミサキ」
「うん」
「お前は今までよう働いてくれてるから、これから一日銅貨十枚。それと昼と夜の飯な」
「銭くれるん?」
「仕事してんねんから当たり前やろ」
ミサキの顔が一気に明るくなる。
「ほんまに私の銭?」
「お前のや。俺は取らん」
「やった!」
「ただし勉強もすること」
「えー」
「そこ込みや」
次にソラとリクを見る。
「お前らは交代」
「何を?」
「一人はこっちで働く。エレナさんの店手伝え」
皿を運ぶ。
机を拭く。
客から器を下げる。
水を汲む。
できる仕事はいくらでもある。
「基本、一日銅貨十枚と飯。よう働いた日は十五枚まで出す」
「十五枚!」
リクが食いついた。
「毎日十五ちゃうぞ」
「どうしたら十五?」
「俺が、今日こいつよう働いたなと思ったら」
「曖昧やん」
「店主の権限や」
博之は笑った。
「で、もう一人は今まで通り荷運びとか外の仕事探してええ」
この町では一日きっちり荷運びの仕事が取れれば銅貨二十枚ほどになる。
そちらの方が稼ぎはいい。
「だから外で仕事ある日は行ったらええねん。そっちで稼いだ銭は全部自分のもんや」
「仕事なかったら?」
「店戻ってこい。客呼んだり、買い出ししたり、なんぼでも仕事ある」
「それでも銭もらえる?」
「働いた分はな」
要するに、ミサキの銅貨十枚と、ソラかリクの銅貨十枚。
博之としては、まず一日銅貨二十枚ほどを子供たちの人件費として考えることにした。
「どっちが先に店やる?」
「俺!」
「俺や!」
「じゃんけんしろ」
「なんで!」
「平等や。毎日交代でもええ」
結局、初日はリクがエレナのところ。
ソラが外へ仕事を探しに行くことになった。
そんな形で一週間が始まった。
意外にも悪くなかった。
リクは力仕事が好きだった。
「水持ってきたで!」
「ありがとう、リク」
「次何する?」
「その器を洗ってください」
「分かった!」
エレナとの相性もいい。
一方でミサキは博之の店で銅貨を数える練習を始めた。
「大一つ」
「五枚」
「小二つ」
「六枚」
「合わせて?」
「……十一!」
「正解」
「やった!」
教会で習い始めた計算も、店で使えば覚えるのが早かった。
「勉強ってこういうのでええねんな」
「おっちゃんが教会行け言うたんやろ」
「そうやった」
問題が起きたのは四日目だった。
その日はソラが外で仕事を探す番だった。
昼を過ぎても戻ってこない。
「今日は荷運び見つかったんかな」
博之はそう思っていた。
ところが夕方。
常連の荷運びのおっちゃんが店へ入ってくるなり言った。
「おい、ソラ」
「え?」
ちょうど戻ってきたソラが固まった。
「お前、今日仕事暇やったやろ」
「……」
「南門の広場で遊んどったやんけ」
店の空気が止まった。
ミサキがソラを見る。
リクも見る。
エレナまで困った顔になる。
「ソラ?」
博之が聞いた。
「今日、仕事あったん?」
「……なかった」
「ほんならなんで戻ってこんかった?」
「いや……」
「遊んでたん?」
「……ちょっと」
リクが怒った。
「ずるいやん!」
「何がや!」
「俺、昨日ずっと皿洗ってたんやぞ!」
「別にええやろ!」
「よくない!」
ミサキまで加わる。
「おっちゃん、仕事なかったら戻ってこい言うたやん!」
「うるさい!」
「お前が悪いやろ!」
「はいはいはい!」
博之が手を叩いた。
「店で喧嘩すんな!」
三人が黙る。
博之はソラを見る。
「遊ぶなとは言わん」
「……」
「子供なんやから遊んだらええ。でもな」
机を指で叩いた。
「仕事ないって分かった時点で戻ってきたら、ここで銅貨十枚稼げたやろ」
ソラが下を向く。
「飯も出る。銭も出る。それ捨てて遊ぶんやったら、それはソラが決めたことや」
「……うん」
「今日は給料なし」
「えー!」
「当たり前や!」
リクが横から叫ぶ。
「リク、お前も黙れ」
「はい」
「ただし飯は食え」
ソラが顔を上げた。
「ええの?」
「飯抜きは仕事の罰にせえへん」
博之はため息をついた。
「でも明日はちゃんと働けよ」
「……うん」
少しして、常連のおっちゃんが笑った。
「親父みたいやな、兄ちゃん」
「やめてくださいよ」
博之は即座に否定した。
「俺はこいつらの親ちゃいますから」
「でも面倒見とるやん」
「仕事させてるだけです」
三人が賄いを食べ始める。
ソラはまだ少し気まずそうだった。
博之はその横で今日の銅貨を数えた。
人を雇えば楽になる。
そう思っていた。
だが実際には。
働く。
働かない。
給料をどうする。
喧嘩する。
勉強させる。
飯を食わせる。
「……人雇う方が面倒くさいこと増えてへん?」
エレナが小さく笑った。
「でも、前より店は楽になったでしょう?」
「まあ、それはそうやな」
ボロ小屋二軒。
鍋二つ。
大人二人。
子供三人。
まだ商会でもなければ、ギルドでもない。
それでも少しずつ。
ただ飯を売っていただけの場所に、「働く」という仕組みができ始めていた。




