鏡介ら、うるはしき男に逢ふ
読者各位の皆々様!
ご機嫌いかがですか?
僕は…ものすごくgood!でございます!
何故かって?
前回、僕に初めての女友達が出来たのです!
これは僕史上1、2を争うニュースです!
お陰で少しハイテンションなのを皆々様にはご理解頂きたい。
そして、僕と鏡介の間にも少し進展があった。
それはお互いにルールを設けようと言う物だ!
僕らは1日おきに入れ替わって、その間は体を好きなように使ってもいい!というルールである。
この制度で、ある程度自由は得た!
好きな物を食べ、好きなモノで抜き、好きに行動する!
こう考えると今までの体のありがたさが判るというものだ。
しかし、この体、事に吾妻鏡介は1人の女子に恋焦がれている。
その者の名は『源義経』!
言っちゃ悪いが、鏡介には似合わない。
諦めろ!と言う考えを僕は持っている。
…まぁ、僕も人のこと言えるわけないのだが……
『平教経』、鏡介の体に身を宿した僕の、阿弥陀芳一の唯一の女友達であり、好きな人だ。
恐ろしいシチュエーションだ。
一つの体を共有する二つの人格が、別々の人を好きになるなんて…
そして僕はこの事を隠し通さなければならない!
最低でも彼女は女友達と言うラインまで!
もし、僕が彼女に恋心を抱いている、と言うことが知れたら……
そして、鏡介の知らぬ間に“発展”してしまっていたら……
殺戮パーリナイは不可避だ。
このR18-G路線は確実に回避しなければならない。
よって、皆々様に厨二病と思われるかも知れないが、そんな事どうでもいい!
僕は自分に嘘をつき、本当の自分を敢えて誤魔化して生きていく事にきめた!
これは、そんな僕と鏡介が繰り広げる
正真正銘、スーパー健全な青春ラブコメである!
「どーすればいーのか…」
ペンキを零したような青空。
目を覚まし、外界を通る日々の喧騒が騒がしい朝を告げる。
そんな世界と逆張りするように鏡介は机に頭を突っ伏して悩んでいた。
《どうした?》
「ばぁ〜か…決まってんだろ、義経と仲直りしてーんだよ…」
どうやら、恋する青年は好きな人と仲をより戻したいそうだ。
《やめとけ、殺されるぞ》
僕は一呼吸置く間も無く彼を諭した。
「別に一気に仲直りしようとは考えてねえよ…少しずつでもいいから仲直りしていけたらなあ…って」
ふとした瞬間、鏡介の顔はハッとしたような表情に切り替わった。
「そうだ!勉強会開くとかは?!」
《デスゲーム始める気か》
こいつのノンデリ具合も滑稽にさえ思えてきた。
こいつだけは外界に放ってはならない。
二度と人様と親密になろうなんて思い上がらないようにきつい躾をしなければ…
……そうか、これが僕の転生理由か。
僕は志を胸に前に進み出したのだ。
───そんな冗談を言ってる間に、鏡介は口を開いた。
「あー、もうこんな時間か。学校行かなきゃな…」
出かける準備をする鏡介の背中は、見るからに『悩んでまーす』とでも言いたげな様子だった。
3階まで足を運んで、横に伸びる廊下を左手側に曲がる。
すると日が真っ直ぐ差している渡り廊下がすぐそばにあるので、そこををまっすぐ進み、
化学室をまた左手に進むと、僕の、僕らの教室が見えてくる。
今日の体の操作権は鏡介にあるので、教室への道のりはどこか遠回りだ。
理由はわざわざ語らなくてもいいだろう。
教室に入ってくるや否や、鏡介は自分の席ではなく教室の奥の方の席を眺めた。
いない。
おそらく義経を探しているのだろう。
(おかしい…いつもならこの時間にはすでに来ているのに…)
《鏡介よ、俺バカだからわかんねぇけどよ…理由もわからずに謝るのは…なんかこう、“やばい“んじゃないのか?》
(どうした?ほんでなんだそのキャラ)
僕は口調を元に戻し、鏡介に告げる。
《もし、僕がお前のプリン食っちまって、「あ…なんかごめん!やなことしちまって…」ってあやふやに謝られたらどう思う?》
(ケツに電柱ぶち込んでお前を殺す自信がある)
《おーどしたん話聞こか?》
僕は自分の体に鞭打ち、辟易した態度を直した。
《つまり、だ…なにをしたのかあやふやな状態で君が義経に謝ってみろ……血で染まるぞ、この世界》
(あいつ最終兵器け、なめんじゃねえ殺すぞ)
心の声だというのに彼の口調にドスが効いているような気がしたのは僕だけだろうか。
(まぁ…確かに、一理あるかも……)
《だろ?だから、腑に落ちないかもしれないが…ここはしっかり、推理&考察して…》
ゾッッッッッッッッックゥゥゥゥゥウウウウウ…………!
いつまで経ってもこの殺意は慣れない……
全身の毛穴が逆立つ。
1秒が何十年にも感じるこの感覚…
恐ろしい、恐ろしい…
おそらく…ヤツだ………!
源義経だ……!
この圧を経験してしまったら、今後の人生…ありとあらゆる“危機“を“危機“と思えないかもしれない…
鬼が霞むほどの形相で、義経は不吉に歪んだ左口角から音を漏らす。
「………ッチ、」
《(え、舌打ち?!)》
僕らは再度ハモった。
タッタッタッタ……
危機は去った…
《………フゥゥゥウウウウウ……》
(なあ、芳一……)
《わかるさ、君の言いたいこと……》
、わかんな……、なにで怒ってるか……
彼女の憤怒の理由も、
余熱のごとく湧き上がる冷や汗を止める術も、
僕らには知る由もなかった……
1限目が始まった。
どうやら生物の授業らしい。
「さーさー!皆!今日もクイズやってくよ!『分解者or生産者or消費者クイズ』ぅぅぅうううううう!!」
先生の声は聴いていながら、鏡介の視界の端には義経がいた。
「はい!吾妻くん!タガメ、キノコ、と来まして……菌類!シアノバクテリアですよ!さぁどっち?!」
「…………」
「あれ?おーい吾妻くーん」
鏡介はハッとしたように目を覚ました、本日2回目である。
「な、なんですか?」
「でゃ!か!ら!シアノバクテリアは何に分類されるでしょう?」
「生産者…」
即答した。
「おぉ〜すごい!シアノバクテリアは光合成もしますので他の菌類と違って。。。」
鏡介は答えるや否やすぐに座ってしまった。
パキッ
「……?」
ふと、今まで視界の端に入れていた方向から音が聞こえた。
音…視界の端…視界……
義経だ。
義経がこっちを見て睨んでいる。
シャー芯を折って、こっちを睨んでいる。
それと同時に鏡介に天啓が舞い降りたようだ。
(そうか…!義経の奴が怒っている理由がわかったぞ!)
当然、僕にも察しはついている。
《あぁ…お前がいつも真面目な癖に変に頭がいいのが気に食わないらしい…!それでお前は前の中間で1位とっちまってたからな》
(あーそーいえば前の授業中は寝てばっかだったなぁ…)
《お前、なーにが『優等生』じゃ!》
(え、優等生ってただ単に成績がいいやつのことじゃねえのかよ!)
《当たり前だrrrrrrrろ!おま…それただのうぜえやつだぞ!》
鏡介、喪心!
(ウッッソだろ……まじかよ…)
《そんなことよりも…他の問題が浮上したぞ》
(他の……?、あ)
鏡介もどうやら気付いたようだ。
《謝りようがないなった!!》
(やばいぞ……逆恨みで謝ろうものなら、義経の名誉が…風評が…)
《それでも無理に謝ったら煽動になりかねないし……》
僕らは頭を抱えて悩んだ…
悩んだ。
悩みまくった。
あれやこれやと案を出している隙に、
いつの間にか1限が終わっていた。
(あー…やべぇぞ……なんも案が出ねえ…)
《むずすぎんだろ〜…》
休み時間が5分過ぎようと、僕らはまだ思案に暮れていたのである。
(もう…こうなったら、無理に行動に移すしか…!)
そう、鏡介が立ちあがろうとした、
その時だった!
「もっかして〜…鏡介って義経ちゃんのこと好きなの?」
僕の唯一の女友達、教経が顔を覗かせて語りかけた。
「うぉぉおおおおおおお?!なんだおめえええええ!!」
鏡介のオーバーリアクションで椅子がガタガタを揺れた。
「ねえねえ!どうなの?好きなの?!どうなの!?」
「あの〜…確か、平さん、っすよね?なんで…急に……」
「………え」
《ちょいちょいちょいちょいちょい!》
僕は慌てて鏡介に彼女が誰なのか教えた。
「あ、あ〜…すまねえすまねえ!冗談だって!」
「よくないよ〜ほんとに……」
「あ、あはは…(芳一何てめぇ勝手に仲良くなってんだよ!)」
《ごめんじゃん!あとで何か奢ったるから!》
(それ俺の金なんだよ!)
「で!どうなの?好きなの?義経ちゃんのこと!誰にも言わないから!」
すると鏡介は頬を赤らめ、口を籠らせた。
「………悪ぃかよ…」
「ふぇぇえええ?!まじ?」
教経は盛り上がる。
「アタシ応援してるね!あ、でもなるべく急がないと…ちょっとヤバいかも……」
「え……?ヤバいって?」
ヤバい…何がであろうか?
「とりま、アタシについてきて!」
そう、教経に連れられてきたところは、僕らの教室がある反対の棟であった。
教経はそのうちの一つの教室に入った。
「ほら!あれがアンタのライバル第一号!」
教経はその教室のうちの1人の男子を指差し、言う。
「え…芸能人?!」
鏡介は思わず声を漏らした。
無理もない、可愛げのある童顔。
サラサラの黒髪、
驚くほど白い肌、
おそろしく整った鼻先
サラッと長い指と人形のような美しい手、
正直、このレベルのイケメンには2次元、3次元共に出会ったことはない。
神はこの男子を中心に世界を形作っているのではないかというほどの美形。
あまりの美しさに、男の僕でさえ空いた口が塞がらなかった。
「うん、モデルやってるんだって!」
教経がその男子を紹介した。
「静御前くん!眉目秀麗で豪放磊落な心の持ち主!ちなみに義経ちゃんの元カレ!中学の頃付き合ってたらしいんだけど、義経ちゃんの方から振っちゃったらしいんだよね。いやーやっぱ校内3本指のうちに入るほどの美人!理想が高いねぇ!おっそろしいよ、全くもう!」
まじか…!このレベルを振ったのかよ…!
この男子で無理なら全世界の男は彼女と言葉を交わす事も許されないだろう。
ましてや鏡介など門前払いどころか日本への入国審査の時点で払われてしまう。
今まで視界に入れてもらっていた事が不思議なレベルだ。
…というか静御前だと、史実では女性だが、この世界では男性化もあるのか…!
「たい……教経もその3本指に入ってる癖によ…
ってかウッソだろぉ…このレベルでダメなの…?」
鏡介はその場に膝をついて倒れ込んでしまった…
「ま、まあ、アタシは鏡介にもまだ機会があると思うよ!」」
「フォローになってねえよぉ…」
涙声で鏡介は言ったのであった。
「ふーーーん、次はあの子にしようかなー」
膝をついて悲哀の表情を見せる鏡介を見て舌舐めずりをした女子がいたのを僕は見逃さなかった。
その女子はすぐに踵を返してしまった為、顔はよく見えなかったが、
どうやら……波乱の予感がしないでもない…




