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芳一、転生して居たり

やあやあ皆様ご機嫌麗しゅう、

妙なテンションであるのには目を瞑っていてくれ。

何故なら、僕は今物凄く気分がいいからである。

後暫くすればこのテンションもジェンガの如く崩れ去る事と思うが、承知してくれるとこの上なく嬉しい。

おっと失敬、挨拶を忘れていた。

折角だ、この際天が僕に授けやがりなさったスペックを紹介いたそう。


  阿弥陀芳一(あみだほういち)

永遠の18歳

中学高校の6年間、青春というものに打ち込んで来なかった

彼女ゼロ!友達ゼロ!経験人数ゼロ!

 

 習性 

オタク(アニメ)

オタク(Vtuber)

オタク(歴史)


 特技

レスバ(匿名掲示板に限る)

妄想

そして…『読心術』!


『読心術』というか小さいころから心理学が好きであったのでその名残で人の気持ちを察するのがうまいと言うだけだ

良く言うと空気を読むのが上手く、悪く言うと人の顔色を窺っているのである

こんなスペックの僕でも一応学校には行ってたし成績もそこそこだったので

県内でも結構有名っぽい大学に受かることができた

ここから僕のキャンパスライフが始まる…!

そして、今日!ついさっき!卒業式の後!僕は心に誓った。

「絶対に大学で垢抜けてやる!」

横断歩道のど真ん中で左手を腰に添え、右手を上に掲げてガッツポーズをしている最中、

居眠り運転の車に撥ねられお陀仏した。

この人生において悲しかった事三つ挙げるとすれば

一つ、童貞卒業はしたかった

一つ、僕のキャンパスライフは…?

一つ、僕が轢かれた直後、クラスで一軍と呼ばれる面子(メンツ)に心配されたが…

 その誰もが僕の事を敬語で話しかけてきた…

まさしくショック極まれり…かなりガン萎えである。

 ああ、わかっている皆の衆!

 それでは何故、コイツは気分が良いなんて前述したのか?液晶越しでも皆の疑問符の輪郭は鮮明であるぞ?

 ではその問いに答えるとしよう、

 何故なら…!僕は今転生を経験しているからだ!

 まさか…転生をこの身で実感する日が来ようとは…

 欣喜雀躍とでもいうのだろうか?

 踊れる体があったら僕は飛び跳ね、舞い踊っているだろう。

 画面や文字や漫画の奥の世界であった転生が今目の前にある。

 実に嬉しい…!

 そしてどうやら、もう目を開けたその先には転生後の異世界の情景が広がっている!

 何故かって?直感でわかるのだ。

 おっと、ご都合展開なんて言わないでくれ。

 これはマジな方だ。

 ぶっちゃけ死後の世界の女神様や天使様に会えないのは僕自身、凄く悲しい…

 でもまあ、絶対に垢抜けるって誓ったからな!これは転生でも然り!

 では焦らしプレイも程々にして、早速開眼して異世界を堪能しようではないか。





 おい…話が違うぞ。

 僕はドラゴンとかゴブリンとかエルフがいる中西風のコテコテ異世界の舌になっているのだ。

 しかし 僕の網膜に映し出された世界は…

 既視感のある木の板と鉄の足だけの質素な机。

 大人では発狂寸前の淡白な椅子。

 それに座っている制服姿の男女。

 そう…教室である。

 なんだ?これ…夢オチか?いや違う僕の通ってた学校とは制服が違う。

 僕の通っていた学校の制服は藍色に近い学ランと鈍い茶色のブレザーだ。

 だがしかし、この学校は灰色を絡ませているようなクリーム色と宵闇のような青が襟などに軽くあしらわれた程度のブレザーを男女ごとに着ている。

 一点違うのは男子のズボンの色は上のブレザーと変わらずクリーム色の延長線であるのだが。

 女子のスカートは一点、襟などにあしらわれている青色を放っているのだ。

 視線を一番奥に移してみる。

 教卓らしき、と言うより九分九厘教卓である机で教員が周囲を俯瞰している。

 その背後にも目を移す。

 そこにとある文が書かれていた

『中間テスト1日目〜不正行為ダメ絶対〜』

 まーーーじかよ。

 転生時期は中間テスト中…よりによって1日目。

 道理で皆鬼気迫る顔で机を睨みつけている訳だ。

 そして自身の机上にも目を向けてみる。

 乱雑に広げられた問題用紙と解答用紙が不貞腐れた顔で鎮座していた。

 この問題…どうやら僕は高2のようだな…

 ふふふ…数ヶ月前まで受験生だった奴を舐めんじゃねえよ!

 転生早々不服であったが早速テストの問題を解き始めることにした。

 テストは古典であった。

 僕はテストを25分ほどで解き終わり、脚を軽く伸ばした。

 数ヶ月前まで受験生だった奴にしては不思議とスラスラと解けた。

 テストとか勉強は嫌だが、テストがこんなにスラスラ解けるなら勉強も少し位悪くはないな。

 扨(さて)…後は少し暇だな…

 何して時間を潰そうか思案に暮れていたころ、

 ゾッッッッックぅゥウウウっっっッッ……!

 途轍もない殺気に襲われた。

 全身から冷や汗が吹き出し、滴る汗が自身の膝やテスト用紙に点をつけていった。

 なんなんだ…?!何者?

 殺気の源を鰻の如く逆らって見つけた…

 女子だ、しかも結構可愛い。

 柑橘系を彷彿とさせる暖色系の髪がとても綺麗である。

 まさしくマドンナ的立ち位置にいそうである。

 そんな1人の女子がこっちを睨め付けていた。

 正直めちゃ怖い…

 三方ヶ原の戦いで武田に追われた家康の気持ちがよくわかる、恐怖で漏らすってこんな感じなのか…

 もしくは無銭飲食したら店主のお婆ちゃんに2kmほど追われた時の彼か…

 どっちにしろ、その場から動くことができなかったのは事実である。

 人ってあんな殺意を出せる生き物だったんだなと、僕は改めて人の底力に恐れ慄いた。

 突然だが、僕は僕自身を褒め称えてやりたい。

 別にナルシストではない、どちらかというと自己肯定感は低い方だ。

 では何故か?簡単である。

 名も知らぬ女子から全力の殺意を受け続ける日々を5日耐え抜いたからだ。

 できれば彼女も讃えたい。

 あんな殺意を連日出すなんて、僕が彼女の立場ならおそらく狂って死ぬだろう。

 逆に言えば僕が彼女自身に何したって言うんだ?

 思い当たる節がない、何も思い当たらない。

 まあ、残り一教科でこの地獄週間も終わりを告げる。

 さあて…何をしようか!

 そうして僕は残りの一教科もスラスラスラと解いて机上に伏した。

 あいも変わらず、彼女は殺意を向けてくる。

 もう、気が狂いそうだ…

 もうやめてくれよぉ…僕が何したって言うんだ?

 (ん?何だ?これ、身体が…動かな…?!)

 脳内に声が響く。

 あーあ…幻聴聞こえてきやがったよ…

 まじ慰謝料取れるかな?

 (慰謝料…?何言ってんなよ?!何で…俺の身体動かねえんだ?!)

 俺…?『俺』って言ったのか?一人称は『僕』の筈だが…あーやべえ…マジの幻聴だ…

 (おい!何なんだよ?!俺の頭ん中で喋くりやがってる奴!)

 不思議ちゃんの幻聴か…いや、声色からして『不思議くん』か…

 (誰が不思議くんだ!いいから察しろ!バカがヨォ!お前のせいだろ!俺の身体が動かねえの!)

 誰がバカだ!いい加減ムカついてきた…

 (コッチの台詞だっての!)

 何だぁ?お前…一体誰だよ!

 (俺が聞きてえよ!…ったく、俺は『吾妻鏡介(あづまきょうすけ)』俺の体だから、返してください!天の声さん!)

 吾妻…鏡介?俺の体…?ってか誰が天の声だ!殺すな!勝手に!

 (事実そうだろ?!さっきからうるせえんだよ!)

 ………え?

 ………

 嘘、だろ?

 ……何が起こって?

 ……………

 ……

 すまない皆の衆、少し情報を整理する時間をくださらないか?

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