恋語らひ^2
「鏡介ぇぇえええええええ!!!!」
どこからか甲高い男の叫び声が聞こえた。
「んあ?何よ」
鏡介がその声の方へ振り向く、
そこに立っていたのは、木曽義仲だったのだ!
史実では旭将軍と呼ばれ、それはそれは名の知れた名将だったけど、
頼朝軍が派遣した範頼軍、義経軍との戦いで、泥濘に馬を取られてしまって、そのまま敵の流れ矢が眉間に刺さって死亡したと伝わっている。
でもやはり、この世界には巴御前がいるから、何かしらの関係はあるのだろうか?
「きょ…きょうす……鏡介…!」
「憔悴しきってんじゃねえかよ…どったんだ?」
体の操作主の鏡介は義仲に声をかけた。
すると義仲は彼にこう言った!
「恋愛相談!乗ってくれ!」
(「………はァ?!」)
彼の話によると、
どうやら彼は平教経に惚れているようだ。
それでいつも鏡介は教経と仲良く喋っているから、
彼女の興味のある話の内容はどんなものなのか?
ぜひ教えて欲しいとのこと。
………………
……………
…………
緊急事態じゃねえかああああああああああああああ!!!!!!!
そう、皆さんご存知の通りこの阿弥陀芳一くんも平教経に惚れているのだ!
しかも、そのことを鏡介は知らない!
よって鏡介にとって教経はただの友達、本命なんかではない、というわけだ!
ここから導き出せることはただ一つ……
「ああ、別にいいけど、なんなら紹介しといてやろうか?」
はい終わったああああああああ!!!!
さよなら僕の恋。
しかし義仲は、
「あ、いや…別に紹介とかはいいよ…自分の力で攻略したいからNE⭐︎」
やだイケメン!かっちょいい!
我が恋敵として不遜なし!
……ってまあ誰目線だ、という話は一旦置いといて。
これはかなりまずい状況になっちまったよ…
どうする…?告るか?
いやそしたら鏡介の世間体が危うくなる。
義仲に後ろから刺されかねないことはやめておこう。
と…なれば……鏡介に暴露…?
そんな事したら、地獄みたいな雰囲気になってしまう……
まずい…どう転んでもバッドエンドだ……
バッドエンドしか用意されていないのか?このクソゲーは。
そうやって頭をぐるぐる回していると…
「てかさ、お前この状況で『あいつ』はかなり踏み込んだよなぁ」
「え?あいつ?」
なんだ?あいつ…?
鏡介の口から不意に飛び出てこんにちはしてきた、謎の代名詞……
一体誰を指し示しているのか?
「え、義仲お前知らねえのかよ?!今、お前と同じように教経を狙ってる奴がいるんだって」
………え?
だ、誰だ…?
……もしかして、ば、バレた、か……?
僕が…義経が好きな鏡介に隠れて、教経に思いを馳せていることを……
「教経を…狙ってる…?一体誰が…?」
「マジに知らなさそうだな…、平維盛だよ」
「!?」
は?!平維盛ィ!?
まさか…そんな……嘘だと言ってくれ……
一応、『誰だ?』となっている方が多いと見込んで、説明いたす。
平維盛とは…
史実に於いて、クソほどイケメンの平家の人である…!
あまりの美麗さに、敵や貴族すら「光源氏の再来!」「絵に描けない美貌!」と評価する始末。
14歳の頃から素晴らしい立ち振る舞いを見せ、呼ばれた名は『桜梅の少将』。
しかし、そんな彼の戦績は惨憺たるモノで、
富士川の戦いにて、勝てない勝負で撤退することを味方から諭されていたとは言え、
水鳥の飛ぶ音を敵が攻めてくる音と勘違いしてえっさほいさと逃げ帰ってきてしまったのだ。
当然身内からはおもっくそ叩かれた。
挙句、清盛から京出禁を食らったほどである。
しかし、そんな恥ずかぴー維盛でも妻と子を想っている所は本物であった。
こんなの惚れるしかないやろてええええええ!
普段は情けない醜態を晒していた奴が、愛する者の為、己が心に幾度も鞭打ち、安全な場所に隔離させる。
しかもイケメン。
この世界でもそれが適用されていようもんなら、
もう終わりです。
グッバイ僕の恋。
「ウッソ…だろ?」
「ま、まぁあくまで噂だから噂!逆に教経が惚れてるって話もあるけど」
ドガシャーーーーン (脳が破壊される音)
想い人 不意に寝取られ 脳破壊 響かす音は 知れず重なる
その道のプロが見たらブチギレそうな完成度の短歌を僕はそっと心の奥に仕舞い込んだ。
そんな僕を置いて2人はのり常と付き合おう作戦を考えはじめた。
「ま、まあまだ巻き返すチャンスはあるしな!」
「た、確かに……」
「一学期残ってる行事は……期末と体育祭か」
「うーーん…」
「チミ、勉強は?」
「中の下っす……」
「運動は?」
「スイミングをちょっとかじってたぐらい…」
鏡介はポンと手を叩いて義仲に告げた。
「よし!期末と体育祭でいいとこ見せようぜ!」
「え、そんな…二つで?」
「当たり前だろ!二兎得る資格がある奴だけが二兎を追うんだ!やるぞ!」
「う、うせやろおおおおお!!!??」
あーもーどーにでもなーれ!!!!!
僕はもうヤケクソであった。
「の、教経義経ぇーーーーー!」
私の後ろからどこか柔らかく、それでいて力強い女子の声が聞こえた。
ふっとその方を向くと、
「あ!巴御前!」
「どしたの?」
巴御前が赤髪ロングをたなびかせ、こっちに向かってきた。
「ちょっと!2人とも!恋愛相談させて!」
「「…は?!」」
「───えーっと、それって」
「うん」
「まずあんたはお兄さんの幼馴染である木曽義仲のことが好き…」
「うん」
「その義仲は別の女子が好き…」
「うん」
「このまま友人として付き合うか、否か……ってことかぁ」
「典型例ねー」
「なんでそんなこと言うんよ」
教経の辛辣発言に巴御前がしょぼんとしてしまった。
しかし、教経は続けていう。
「そんなもん!アタックしかないっしょ!」
「だからぁ!それが怖いの!」
「世界で初めて空を飛んだ『ライト兄弟』も、もしも飛ぶことを恐れていたらその名を轟かすことはなかったよ!ゆーきゃんどぅーいっと」
「初めて空飛んだ人自体はモンゴルフィエ兄弟じゃなかったっけ?」
「日本じゃそれよりも前に浮田幸吉が飛んだって伝説あるよ」
「………とにかくやるんだよ!やーれーよ!」
折角の名言を妨害された教経は口を尖らせて告げるしかできなかったという…
「やらなきゃ一生あんたこのままよー?」
「付き合いたい?付き合いたいっしょ?付き合いたいと言えこのカス」
「う………」
教経はさらに続ける。
「さあ!急いでよ!何処の馬の骨かもわかんないやつに義仲取られてもいいの?」
「そ…それは……っ!」
私たちは巴御前を囲んで、「やれやれ音頭」を舞った。
「やーれ!やーれ!やーれ!やーれ!やーれ!」
「アそれ、やーれ!やーれ!やーれ!やーれ!」
「うああああ…ぁあああ……」
…衆人環視の中これをやった私たちを褒めて欲しいものだ。
すると突然、教経がスマホを取り出し、学校行事予定表を確認し出した。
「えーと…今学期はあと期末と体育大会…かぁ」
「え」
「そ、それじゃあ…!」
私と教経は顔を見合わせ、
「「告るのはここしかないじゃん!」」
「……うっそでしょ?!そんな早く?!」
「あったりまえじゃん!時期尚早に越したことぁないよ!」
「『時期尚早』ってあまり肯定的な意味じゃないんじゃ…?!」
「うっさいねぇ!この指示厨!黙ってはよ告れ」
「黙っちゃ告れないよ!」
「 (怒) 」
教経の怒気を帯びた溜息がなんだか凄く怖く感じたのは私だけだろうか?
私はそんな雰囲気を蹴散らすように、口を開いた。
「ま、まあ告って悪いことはないよ?しかも昔からの付き合いなんだよね?だったら「無理」って即答することはないんじゃないかな?」
「う………」
「私らも協力するからさ!」
「そうだよ!がんばれ!巴御前!」
「ぇ……ふぇぇぇええええ…!」
と、こんな感じで半ば強引に巴御前は色々準備をすることになったのであった!
次回新章!期末試験編!乞うご期待!




