よん み
注意:今回のお話はガチホラーとなっています。
しかし、このお話は実際の事件をベースにしたわけではなく、
完全オリジナルホラーとなっています。
よって、舞台のモデル地との関係性や、誰かに話してはならないと言ったことは一切ないです。ご安心ください。
しかし、この作者自身、執筆中や構想中に悪夢にうなされていました。
その内容というのは誰かに睨まれるという内容でその前後は一切覚えていません。
何か曰くのようなものが付いてしまったのかなと思い、
読者の皆様に大事があってはならないと考え、とある措置をここに記載します。
怖いのが苦手な方、霊的なものをひどく信じ込んでしまう方にはお手数ですがこの措置を実施していただきたく存じます。
…とは言っても、これらの行動と悪夢にはなんの因果関係もないとは思いますし、
実際、この行為自体別にやってもやらなくても変わらないものだと思います。
御守りのようなものだと思っていただいて構いません。
その措置を下記に記します。
・近場で何かしら音を鳴らして (ASMRでも音楽でも可)ご鑑賞ください。
・なるべく立ち上がってご鑑賞ください。
・鑑賞中、何かしら食べ物のような匂いがしてきた際はその場でご鑑賞を中断して音の鳴っている方へと行って、身を屈めてください。
以上が読者の皆皆様の為の措置となっています。
もう一度言いますが上記のこれは任意となっています。
やってもやらなくてもいいです。
不安な人のための措置として記載しました。
御守りの要領で捉えてください。
そしてしつこいようですが、今回の内容とモデル地は一切関係がありません。ご了承ください。
それでは本編へどうぞ。
6月にもなって、その日の夜はどこか暖かい…というよりも生ぬるかったのを憶えている。
私こと源義経はそんな夜に友達4人と一緒に肝試しに行った。
その時にいた子は、
平教経、吾妻鏡介、巴御前と、その子の幼馴染の木曾義仲、そして私だ。
「全員集まったかー」
「おーう!」
私たちは近場の隧道に来ていた。
周囲には町工場が広がっていて、私たちはそこを通り抜けてここにきたのだ。
昼間のここら近辺は、それこそ聴覚が意味を成さなくなるような程の騒音が響いているが、夜中になると逆にしんと静まりかえっているのが更に不気味だ。
通ってきた道には祠や自販機が多く立ち並んでいたが、
いざその隧道前についてその真ん前のを見渡してみたら、そこにある道路は意外と広くて、ここから来たら良かったかと少し肩を落とした。
しかしこの隧道は日本初の隧道らしく、その歴史も古い。
今は無いが車道もあったらしいのだ。
しかし、ある時に事件が起こる。
その車用のエレベーターに女児が巻き込まれる事件があったそうなのだ。
だが、調べた限りそんな事件があったことの記載はないので、ただの流言の可能性も大いにある。
「えーそんな白ける事言わないでよー、もしかしたら…隠蔽、しているのかも…」
「いやああああああああああああ!!!」
「あーそうか…教経はこーゆーの苦手なのか」
「あうう…なんで来ちゃったの…私のばがぁ…」
どうやら教経は怖い系が苦手らしいのだ。
しかし、一応興味はあるらしく、ヒョコヒョコとついてきたらしい。
「にしても…雰囲気あるねぇ……」
確かに、昼間は然程怖くはないのだが、夜の闇に照らさせれたこの隧道への入り口は妙な不安感を纏っている。
年季の入った細かな罅が、染みが、より雰囲気を醸し出す。
初見だと廃墟と見違えてしまうだろう。
そこのエレベーターの扉は大きく、隣の壁には黄ばんだ迷惑行為禁止、半分破れた防犯カメラ作動中や落書きが施された行方不明中の女児と女性の顔写真の他、剥がれかけた警備員巡回中の張り紙がまばらに貼られていた。
そこの警備棟は異様に大きく、遠目で見たら小さいビルのような印象を受ける。
本当にここに入るのかと思案に暮れていると…
「こんなところで入り口と睨めっこしてても始まらないよ!早く入ろう!」
巴御前に言われるがまま私達は隧道へと入っていったのだ…
ここの隧道は右手側にエレベーター、左手側に階段があるのだが
もう日も跨いだとなると、エレベーターは動かなくなっているだろう。
私達は階段を降りていった。
私が一番後ろだったから、後ろから吹き抜けてくる生暖かい風が、人の吐息のように感じた。
背後の静寂が人の形を成して私の後ろを音も立てず歩いているようだ。
私はふと前にいる吾妻鏡介の背中を、撫でるように触った。
「うぇえええ?!よ、義経ぇ?!」
「なんか…怖い……ここ」
「お…おう、そう…だな……///」
私たちは迷路のような階段を降りる。
ここの隧道は意外と深く、いくら降りても道に出ないような気さえしてくる。
壊れかけの電灯の灯りに屯する大きな蛾が今はただただ不気味でしかない。
体感1、2分だろうか。
階段を降り切ったその先には道が広がっていた。
右手側にエレベーターが見え、左手側に隧道がずっと続いている。
まるで無限回廊のような隧道に、吸い込まれそうになったのは自分だけではない筈。
すると、突然教経が
「いやあああああああ!!!!怖いいいいいいい!!!!」
と言い、走り出してしまった。
「ちょ…ちょっとぉ!」
「……あーあ行っちまったねぇ…」
私たち4人はその場に取り残された。
「と、取り敢えず……教経を探しつつ、探索するか」
「おう!」
「探索つっても、ただ前に歩くだけだけどね…」
そう言って4人は暫く歩き続けた。
床を歩く硬く乾いた音が嫌に耳に残る。
気を紛らわせる為か、4人は駄弁りながら進むことになった。
しかし、だんだん会話のネタが少なくなっていき、話は怖い話へとなっていった。
「…実はその幽霊だって思っていたのはね、本当は生身の人間だったんだ…!その人は今どこにいるのかもわからないって」
「うわ怖ぁい!」
「本当に恐ろしいのは人間、かー」
そうやって次は鏡介の番になった。
私はその次になるだろう。
もうそろそろ怪談のネタがなくなってきたから結構やばい。
「次は俺だ、……なあ今から怖い話してもいいか?」
「あ?あっはは!今はその時間だろ?」
「言ってってよ?」
「そ、そこまで皆んなが言うなら…」
鏡介は一つ大きな溜息をついて、言った。
「長くないか?この道」
皆が唖然とした。
「長い?」
「うん、だってここ数分はずっと歩きっぱなしなのに…向かいのエレベーターすら見えないなんて…」
「えぇー?そうか?」
「た、確かに……ただ川の下を歩くだけなのに、なんでこんなに時間が…」
「あー、まぁそうか……」
そのまま私たちは言葉に詰まってしまった。
「……引き返す?」
「引き返すつったって…教経はどうすんだよ?」
「そうだ…教経……あいつずっと向こうの方に走って行っちまったからなあ」
私たちは再度向こうへと続く道を眺めた。
電灯はついているのに何故か暗みが増して行っているような気がした。
何かに引き込まれそうな感覚にゾワゾワと身震いする。
屋外の生ぬるい風はとうに冷え切っていた。
「やっ………ぱり、やばいとこなんだよ…ここ!」
「でも…どうする?教経は?」
「ちょっと電話してみる…」
そう言って鏡介がスマホを取り出した次の瞬間、
「あ!あれ!見てみろよ!」
木曾義仲が指差す方向に、1人の女子が立っていた…
結構遠くに立っているからよく見えないが、おそらく教経だろう。
左手を振ってこちらに呼びかけている。
しかし、私自身、どこか言い表せないような違和感を抱いていた。
それにみんなは気づいている素振りはない。
しかし、どこかがおかしいのだ。
「あ!教経!」
「おーい!どこ行ってたんだよー!」
そう言ってみんなは走り出してしまった。
私もそのみんなについていくように走り出した。
しかし、みんな、何か異様だ。
異様な程に足が速いのだ。
このメンツでは50m走は私がトップなのに、何故かどんどんみんなとの距離が空いていく。
「はぁ…はぁ…待って…!」
走っている最中にそんな事を言ったのは生まれて初めてだ。
しかし、みんなは聞こえなかったのか、私の声に耳を貸さず、
どんどん走っていく。
どんどん距離が空いていく。
そうして、1人、2人、と姿を見失っていき、
最終的に私1人で走っている状況になった。
「嘘…なんで?」
私は困惑した。
この私が走りで負けるなんて…
それどころかなんで直線の道でみんなを見失うなんて事が起きるの?
そういう疑問を浮かべながらも私はただ走る。
走る。
走る。
走る。
いくら走ってもみんなの姿は見えない。
直線なのに、何故かみんなの姿が見えない…
しかしながら、手を振っている教経の姿はだんだん明瞭になっていく。
私にはそれが一種の精神安定剤と化していた。
あとで教経と一緒に探そう。
そう私は心の中でつぶやいた。
だんだん教経との距離が縮まってくる。
依然、彼女は手を振っている。
縮まる、縮まる。
ちぢまる……
────次第にそれが教経ではないこともわかってきた。
走り続けて、立ち止まった呼吸を整えていた際、眩んだ視界が元通りになるにつれ、
私が教経だと思っていたモノの正体がわかっていた。
それは前々から気づいていた違和感にあった。
彼女の振っている手、というより腕。
そこに違和感があった。
彼女の左腕。
その肘から先の前腕部分が、グルンとねじれているのだ。
彼女の上腕部分は至って正常だ。
しかし、上腕二頭筋があるであろう部位はこちらを向いているのに、
そこから上にある肘を境として、180°ぐるりと捻じれ、手の甲をこちらに向けながら手を振っているのだ。
よくみると捻れているのは左腕だけではなかった。
ソイツの右腕はおろか、
両脚に至るまで左腕と同じように捻れていたのだ。
ソイツは両眼を瞑り、不気味な程上がった口角で笑っていた。
私は小さく悲鳴を漏らした。
「っひ………!」
その声を聞いたのか、ソイツは私に向かって歩を進めて来た。
私は全速力で来た道を戻る。
(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)
私は半泣きになりながら走り続ける。
後ろの足音が大きくなってくる。
おそらくヤツも走っているのだろう。
バタバタバタバタバタバタバタ
後ろの足音が大きくなっていく。
腐った檸檬のような薄気味悪い電灯の色が私の頬を照らし続ける。
「ちょうだい。ちょうだい。」
ソイツは縋る様に声をかけてくる。
背格好は10代半ばのそれなのに、まるでその声は3歳かそこらの男児のようだ。
私は掠れた呼吸を繰り返す。
目尻に涙が浮かんできた。
それでもアイツは追いかけてくる。
何故捻れた足で此処迄走れるのか。
「ちょうだい。ちょうだい。」
「ちょうだい。ちょうだい。」
「ちょうだい。ちょうだい。」
しかし、走れているとはいえ、足が捻じれているのだ。
撒くのは容易かった。
(ここから、どうすればいいの?どうやって、脱出したらいいの?)
私は思考を巡らせる。
今迄におかしかったところは?
どこからおかしかった?
いつから?
どこで?
なんで?
入って来た時……
もしかして怪談がトリガーになっているのでは?
では恐らく最初に姿を消したであろう教経は?
他のみんなはどこに行ったのか?
あの四肢が捻れた彼女は一体何者?
何故こんなことに?
何も解消できないまま疑問だけが山を成していく。
次第に周囲からご飯の匂いがしてきた。
いや、周囲からというのは語弊がある。
中華料理店の厨房のような油っこい匂いがどこからともなくして来ているのだ。
私はその匂いに気を取られている間に
何かに足を取られた。
そのまま私は前方へと転んでしまったのだ。
「うぎゃ」
情けない声が私の喉頭から漏れ出る。
おぼつかない視界で足元を見てみると、
一本の竹筒がカランカランと軽い音を立てて転がっていたのだ。
恐らくこれに足を取られたのだろう。
私は竹筒を凝視していた。
と、いうよりも目を離せないでいた。
何故ならば、
竹筒を見ている視界の端で、何者かが手を振っているのだ。
あの少女だ。
(うっっそ…もう追いついたの…?!)
彼女の捻れた脚は一歩一歩踏み出す度に不自然な形に折れ曲がり、目を覆いたくなるようなモノだった。
足の向きが違うため彼女は踵からではなく指先から踏み込む。
そのせいか、彼女の足音は嫌に静かであった。
「いやっ……!来ないで…!来んなぁ…!」
私の悲鳴にも似た言葉を、ソイツは感じ取った。
ソイツはグズグズになった唇をこじ開け、こう叫んだ。
「ちょーーーーーーーーーーーーーーうだぁーーーーーーーーーーーーーーい。」
その時、ソイツは初めて目を開けた。
ソイツの両目には、
瞳孔のある部分から横一本線に『窪み』ができていたのだ。
「いやああああああああああああああああああああぁぁぁあああああ!!!!」
とうとう私は恐怖のあまり泣き出してしまった。
「ちょうだい。ちょうだい。」
「何?なんなの?!貴方、一体なんなのぉ!」
「ちょうだい。ちょうだい。」
「『頂戴』って…一体何が欲しいの?!私に何をして欲しいの?!」
「ちょうだい。ちょうだい。」
ソイツは依然繰り返す。
私は訳もわからず後ずさった。
ふとした瞬間、
とさっ
背中に何かが当たった。
それは何か硬くて、円柱状に2本立ってあって…
あれ?
私は恐る恐る上を見上げてみる。
───黒い女の顔がこちらの顔を覗き込んでいた。
その女の目は普通の人間のそれではなく、なんというか…
例えるならば、瞳孔が開き切った猫のようなモノであった。
その女は急に口を開き、
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
と野太い男の声で唸り始めた。
「いやぁああああああああ!!!!!!!!!!」
私は頭を抱えて床に伏して叫んだ。
怖い
怖い
怖い
一体何が起こっているの?
怖い
怖い怖い
……あれ?
一心不乱に叫ぶのに夢中だったけど、
気がつくと私の悲鳴だけが響いていた。
恐る恐る顔をあげてみる。
誰もいなかった。
誰かがいたという気配もない。
後ろや辺りを見渡してもやっぱり居ない。
さっきのはなんだったの?
疑問だけが残る。
なんだか小骨が喉に突っかかったような感覚だ。
ただ、今は急いで、来た道を戻ろう。
もう、こんな思いはごめんだ。
道中は長く感じた道も、急いでいたからか案外早く階段の付近までついた。
私は大急ぎでその階段を駆け上る。
何回も段でつまづき、指先で体が倒れないように支えた。
とうとう上がりきると、むわっとぬるく湿った風といっしょに夜空が見えてきた。
まだまだ夜は明けそうにない。
そこらの雑草から虫の声が聞こえてくる。
前方に目をやってみると、
何故か皆んながそこで待っていた。
急に走り出した3人はともかく、
教経もそこにいたのだ。
「あ!やっときた義経!遅かったじゃん」
「どーしたんだよ?」
みんな、変わらぬ調子で喋りかけてくる。
「え?教経…ってかみんな、どこ行ってたの?…ってゆーかなんでここに?」
「?なんでって……」
私たち向こうから来たんだよ?
…理解ができなかった。
何を言ってるの?私たちはここの工場付近でスタートしたはずなのに、なんで向こう岸からって……
「どこ行ってた、ってなーこっちの台詞だぜ?急にお前走り出してさぁ…俺らも追いかけたんだけど、ここについたらお前いなくて、帰ったのかなーって喋ってたらさっきお前が上がって来たんだよ」
「な、何言ってるの?急に走り出したのは、そっちじゃ……」
巫山戯るのも大概にしてほしい。
こっちは本気で怖かったのだ。
でも、みんなの反応を見るに、なんだか冗談っぽくはない。
一体、何が起こっているんだ?
「う…そ……なんで」
私は声を漏らした。
するとそれに被せるように教経が声をかけた。
「それにさーめっちゃ心配したんだよー?電話しても出ないしさー」
すると、その時初めて私は自分のスマホがないことに気づいた。
「えー!まじで?!スマホ落としたぁ?」
「探してくるか?」
みんなが口々に言う。
しかし私は躊躇った。
あの隧道を………もう一回。
今でもあの階段の途中で、あの少女が手を振っている気がしてくる。
「いや、無理無理無理!」
「えーなんでよー、私たちも手伝うからさ」
「着信音鳴らしゃ直ぐだろ」
そう義仲に唆された巴御前は私のスマホに電話をかけたようだ。
「よし!探しにいくか」
ガチャ
「え?」
誰かが私の電話を取ったらしい。
一体誰が……?
巴御前は電話越しに話しかける。
「…あのーもしもしぃー……」
暫くして、巴御前からスマホが渡された。
その電話に恐る恐る出てみると、相手はこの隧道の巡回員さんだった。
《はい、こちら巡回員の川野です!あ!もしかして貴方がこの携帯の持ち主さんですか?》
なかなかに愛想の良さそうな中年男性の柔らかい声がマイクから流れてくる。
《最近危ないですからねー、気をつけてくださいよー今どちらの方にいますか?私が届けましょうか?》
なんと優しい人なんだろう!
私はお礼を言おうと口を開けた。
その時、野太い男のような唸り声が、私の喉から
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
それ以来、隧道内での怖い話はあまり聞かなくなった。
実際、あれは夢だったのか。
それは定かではない。
ただ、今でも、
あの縋るような女の子の声が、
喉の奥から勝手に出てきたあの唸り声が、
耳について残って、離れない。
これでこのお話は終わりです。
このお話を読んでどう思ったか、感想や考察をコメント欄で募集しています。
下記に考察用の資料も載せておきますので、暇を持て余した方々はぜひトライしてみてください。
ありがとうございました。
魘魅蠱毒 [著:李瀷 星湖僿説 萬物部 三より一部抜粋]
我國有魘魅之恠其始賤行者掠取人家小兒故令饑餒之僅不死時以滋味略與之㗖至兒枯槁將死猶見食物則劻勷欲呑於是以竹筒置美饌誘兒令入筒中兒竭心竭力惟欲鑽入於是以利刀電斫兒殺之兒之精魂跳入筒中然後塞其口令不出過豪富家輒以美味誘令兒鬼作祟人則痛頭痛腹
ちょうだい。




