た の し く な し 、 双 六
さて、人生ゲームも半分過ぎたぐらいだろうか。
このゲーム、なかなかにクレイジーっすよ……
「この…資本主義クソゲーが…なぁんでアンタが…」
義経が教経を睨め付け唸った。
「そんなに儲けてんのよーーーー!!」
「ふっふっふ…これが教経クオリティ…!」
「ざっけんなよ!クソのり!」
すると、義経はある一つの事象に気づいた。
「あれ?ってか巴御前は?」
「え?あー地下帝国行ったよ?」
ざわ…ざわ…
地の獄…!底の底…!
義経は床を見てみる。
膝を地に付け、一人ぼっちで専用盤で遊んでいる巴御前の姿が、そこにあった…!
「いやいじめでしょ?!これもう酷いでしょ!」
義経が申し出た!
「ソーダソーダ」
巴御前も反抗する!
「一緒に入れてあげなよ!Do you have 人の心?!」
「ソーダソーダ」
「だいたい何でそんなのあるの?!何でカイジ要素入れちゃったの?!」
「ソーダソーダ」
「誕生日ケーキワンホール1人で食べるぼっちみたいになってるから!」
「Fuck you!!!!!!!!!!!!!」
キーーーン………
「ぶち殺すよ?!ゴミめら………!」
ざわ…
教経が急に叫び出した。
「お前たちはまるで幼児のように人生ゲームを自分中心に…求めれば盤面が右往左往して世話を焼いてくれる…臆面も無くそんなふうに考えていやがる…!」
ざわ……
「甘えるな…!人生ゲームはお前らのお母さんではない…っ!」
ざわ…ざわ…
「お前らは娑婆で甘えに甘え、負けに負けてここにいる折り紙付きのクズだ!屑にはどんな権利も何もない…!それは盤の上でも……
…………。……盤の上でもだ!」
「………諦めた、、」
僕こと芳一は囁くように呟いた。
「お前らが成すべき事は、ただ「勝つ事」…「勝つ事」だ……っ!「勝つ事」が全てだ……!勝たなきゃゴミだっっ………!」
「‼︎」
「‼︎」
「見てなさいよ……これが「勝者」の「豪運」……っ!」
教経はルーレットを回した。
カラカラカラ……
6
トントントン、トントントン…
「ふふん♬」
「え〜と…なになに……『借金までしたカジノ事業が失敗した……1050年地下行きっ………!』」
なっ………
ぐにゃあぁぁぁあああああ…!
敗北……教経……っ!
「負けた…!教経さんが負けた……!」
「おおおおおおっ!!」
「はっはー!ざまみろ教経ばーーーーーーーーーか!」
「「はい焼き土下座!焼き土下座!焼き土下座!」」
義経と巴御前が手拍子に合わせ連呼してくる。
それに僕は口を開いた。
「ちょっと、焼き土下座はあんまりじゃない…すか?せめて血のマニキュア……」
「鬼か貴様」
「まー次は私だねー回すよー」
義経がルーレットをつまみ、回す。
軽快な音が地獄を誘う。
僕は無意識のうちに身構えていた。
「3、と…」
トントントン…
「お、イベントだ『おめでとう!結婚マスだよ!ルーレットで7を引いた人と結婚』…」
「⁉︎」
何…?!結婚、マス……ですと?!
つまり…
教経と…結ばれる可能性も、無きにしも非ず……
「はーい順番に回してってー!」
「4」
「1」
「7」
どうやら巴御前が義経の結婚相手のようだ!
なんだか僕の内側で舌打ちしたような声がしたような気がするんだが…
おそらく気のせいだろう!ゲームを楽しもうじゃないか!
「やった〜ラブラブー」
「いぇ〜い」
手を繋いでイチャラブする巴御前と義経を横目に僕は思案する。
(でも…これで巴御前は消えた…!あとは僕と教経が結ばれるだけ!)
僕は適当に自分の番を終わらせて、
教経にまわした。
「よしキタァ!えーと…11、か」
そう言って教経は駒を進めた。
「お、またイベントだ『不倫コマ…直近で結婚した人の相手を奪っちゃおう!…うまく隠し通せ!』はぁああああ?!」
不倫…コマァ?!
直近で結婚した人の相手……巴御前か?!
「な…は、はぁ?!」
そんな巴御前は頬を染め、教経に詰め寄ったと思ったら、
「もう…いけない男っ♡」
「あんたガチかよ、債務者の分際で」
「ひどい… (T^T)」
「つーかさ、『隠し通せ』ってあるけど…もう私にバレちゃってるくない?」
⁉︎
「ま、まぁまぁまぁまぁ…よしとしましょうや!」
教経はルーレットを回し、その差し示された数字の分だけコマを進んだ。
「『浮気相手の伴侶に勘付かれた、』……」
「よしとされなかったみたいね」
義経の言葉の後、教経はコマの分岐があることに気づいた。
その分岐の文字を読み上げる。
「左が、『伴侶抹消する』、右が『伴侶抹消しない』※抹消した伴侶はこの人生追放となるお⭐︎期限一周終わるまで!」
!?
!?
「それって…」
「殺す、ってこと…?!」
「これ人生ゲームっすよね…?」
「汚え人生ゲームだぜ」
義経が口を開く。
「別に…殺してくれて、いいよ…別に」
「!?」
「私…他にできることないし、別に…もう……」
「義経……」
「折角この面子で、初めてこのみんなと遊べたんだけど……もう…いいよ、Win-Winだよね…!」
「そんな…!」
「本当に楽しかったし…笑えたし……みんなの楽しそうな顔も見れたし……もう充分、ありがとうね……?短い間だったけど…」
「………!」
「私なんて…もういいんだよね?ふふっ…ありがとうね?みんな…!」
「義……!」
そう声を出しかけた巴御前の前に、
一本の華奢な腕が伸びた。
教経である。
「本当に…Win-Winなんだよね…?」
「うん…そうじゃないの…?」
「そうなんだとしたら………なんであんた今……泣いてんの?」
「……!」
当人にも気づかれない、彼女の心境を水面のように映した孤独な涙が、彼女の…頬を伝った。
当然である、
こんなふうにわちゃわちゃとみんなでボードゲームをするのは久しぶりで、彼女自身その遊戯に、ある程度のトラウマを抱えていたのだが…みんながそれを払拭してくれて、義経も久し振りに遊戯で笑えることができたのだから……
義経は、心の底から感謝していたし…嬉しかったのだ。
しかし、お礼の仕方がこれというのは…あまりにも彼女の心に多大な傷を負わせる……
「あれ、何…これぇ……」
その傷から、涙という名の血潮が溢れ出た。
「嘘ばっかり……何が『Win-Win』よ…!何が『私なんてもういい』よ……!そんなこと言わないで…!友達じゃん!」
「教…経……」
「そんなこと言ったら…私まで、悲しくなっちゃう……」
「私さ…あんなに楽しそうにしてる義経…初めて見たかも……私は、そんな義経をもっと見たい…!見せてよ!」
「僕も…義経、がいないと…悲しくて…遊べないかも…っです……」
「………みんな、!」
義経の頬を伝う涙が大粒に変わった…
嗚咽を交えた声で、義経は言う。
「私っ……!ホントは…怖がった…!だんだん……みんな゙の表情がっっ、曇っていっちゃうんじゃないがって……そのままっ……楽しくないまま終わっちゃって……疎遠になっちゃったら……!どうしようって………!ごわかったのぉ……っ!」
涙を拭いながら、啼泣する義経は言葉を漏らす。
「こんな、私と…一緒に遊んでくれますか…?遊んでも……いいですか…?」
「義経」
3人は言う
「「「あーそーぼー!」」」
義経は、涙ぐんだ3人に、返答する。
「いーよ…っ!」
=友人のために私がしてあげられる一番のこと、それは、ただ友人でいてあげること=
19世紀を代表するアメリカの偉人、ヘンリー・デイヴィッド・ソローが残した言葉。
ただ友人として傍にいてあげられる時こそ、友人が友人足り得る時なのだ…
義経のあったかい心がそれを、熱く、静かに告げていた………
「私の番だ……回すね?」
義経が涙を拭い、ルーレットを回した。
カラカラカラ…
「4だ…」
「おー!」
「よっしゃー!4だあああ!」
「どんぱっどんぱっ」
みんなが思いっきり盛り上げてくれている…
(みんな…いい人だ……)
義経の拭った涙が再度溢れかけた…
それを必死に堪え、コマを進める。
トントントントン…
「イベントだ……『おめでとう…なんかわかんないけどお祝い金だ…!全員から1億円もらう』…」
!?
!?
全体に沈黙が走る。
「教経…」
「教経……」
「うん、わかってる」
ぶっ殺せーーーーーーーーーーーー!!!!!!
「はぁああああああ?????!!」
「死ねー!死ぬのよ!源義経ーーーーーー!!!!」
「てめえ船降りろおおおおおお!!!!」
「一億円のためっす!やむなしっす!」
「ぐあああ!!やめっやめりょおおおおおおおお!!!!」
1周後…
義経、人生ゲーム追放!
今度から友達は慎重に選ぼうと決意した源義経であった。




