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Ep.70  幸福な冬の夜

「……クシュンッ!」


カイルの小さなくしゃみが、静かな雪原に響きました。

その瞬間、それまで笑っていた全員の動きがピタッと止まりました。


「……おい、カイル。今のくしゃみ、まさか……」


ガイアスの目が、一瞬で「相棒モード」から「過保護な鬼軍曹モード」へと切り替わります。



「先代様!? お顔が赤いです! もしや、知恵熱……いえ、本当の熱では!?」


レオンが音速で駆け寄り、カイルの額に手を当てようとしますが、それより早くセシリアがカイルの背後に立ちました。


「カイル様……。夜なべをして、そのまま雪遊びだなんて。……わかっていますね?」


セシリアの笑顔は慈愛に満ちていますが、その背後には「お説教(物理)」のオーラが渦巻いています。


「ちょっと、録画石で見返したけど、あなた昨日から一睡もしてないじゃないの! バカ! 私が看病してあげるから、さっさと屋敷に入りなさい!」


リリィが録画石をしまいつつ、慌ててカイルの背中を屋敷の方へ押し始めます。



「カイル、あつい……? フローラ、ひやす……?」


フローラが心配そうにカイルの頬を両手で包み込みますが、彼女の手のひらの温かさが、今は少し熱く感じるほど、カイルの体温は上がり始めていました。


「……たく、サンタ気取りで倒れられたんじゃ、寝覚めが悪ぃ。ほら、捕まってろ」


ガイアスが、濡れた雪を払うのももどかしく、カイルを再びヒョイと担ぎ上げました。




「えへへ……。熱があるから、今日はみんなに……うんと、甘えてもいい……?」




カイルは熱で少し潤んだ瞳で見上げ、かつての「神」の威厳など微塵も感じさせない、最高レベルの「甘え」を繰り出しました。

その瞬間、仲間たちの理性が一斉に音を立てて崩れ去りました。


「……ッ! てめぇ、そんな顔して言えば許されると思ってんのか……。……思ってんだろうな、クソッ、わかったよ! 望み通りにしてやる!」


ガイアスは顔を真っ赤にして怒鳴りつつ、カイルを落とさないよう、世界で一番大切な宝物を運ぶように抱き直しました。


「先代様……! 甘えていいだなんて、僕、僕の命がいくつあっても足りません! 今日は僕が枕になります!」


レオンが涙目で布団を敷きに爆走し、リリィは「もう! 看病の様子も全部撮っておくんだから、覚悟しなさいよ!」と言いながら、手際よく氷嚢ひょうのうの準備を始めます。


「ふふ、カイル様。今日だけ、ではありませんよ? でも、今はゆっくりお休みになるのが先決ですね」


セシリアが優しくカイルの背中を撫でながら、キッチンで「体力がつく特製粥」と「甘い蜂蜜入りの薬」を作り始めました。


「カイル、よしよし……。フローラ、ずっと、いっしょ……」


フローラはカイルの部屋に先回りし、冷たいシーツを自分の体温で温めて待っています。




・カイルの自室:至福の看病タイム


カイルはふかふかの布団に寝かされ、右手にガイアス、左手にフローラ、足元に控えるレオン、そしてかいがいしく世話を焼くリリィとセシリアに囲まれています。


「ほら、カイル。林檎を剥いてやったぞ。……あーん、しろ」


ガイアスが、不器用な手で小さく切った林檎をカイルの口元へ差し出します。


「一人は寒いから……今日はみんなで、ここで寝よう?」


熱に浮かされたカイルのその一言は、仲間たちにとってどんな「神の命令」よりも絶対的な破壊力を持っていました。


「なっ……!? ここ、全員でだと!? せ、狭ぇだろ!」


ガイアスは狼狽えつつも、既に自分の寝室から巨大な毛布を持ってくるようレオンに目配せしています。


「はいっ! 直ちに! 全員を収容できる特別防衛陣形(添い寝)を構築します!」


レオンが音速で予備の布団を運び込み、あなたのベッドを中心に広間さながらの「巨大寝床」が完成しました。


「もう、カイル様は。……でも、今夜は特別ですね」


セシリアがカイルの隣に座り、優しく額に手を当てて熱を確認します。


「ふふん、添い寝の決定的な瞬間の自撮り……これはバックアップ5重ね」


リリィが文句を言いながらも、ちゃっかりカイルの反対側の特等席を確保し、録画石を「ナイトモード」に設定しています。


「カイル、あったかい……。みんなも、あったかい……」


フローラは既にカイルの腕の中に潜り込み、九尾の幻影を毛布のように広げて全員を包み込んでいます。




・ 深夜:カイルの寝室


暖炉の火が静かに燃え、外では初雪がしんしんと降り積もっています。

真ん中には、熱で少し呼吸が荒いものの、安らかな顔をしたカイル。

右隣には、カイルの手を潰さないよう慎重に、けれど離さないよう力強く握ったまま座って寝ているガイアス。

左隣には、カイルの髪を優しく撫でながら添い寝するセシリア。

足元には、番犬のように丸まって眠るレオン。

そして隙間を埋めるように寄り添うリリィとフローラ。


「……たく。サンタの次は甘えん坊か。忙しい野郎だぜ……」


ガイアスが寝言のように低く呟き、カイルの頭をそっとなでました。

カイルは意識が遠のく中で、かつて孤独な玉座にいた時には決して知ることのなかった「重み」を感じています。それは窮屈で、暑苦しくて、けれど何よりも心地よい、家族の重みでした。


「おやすみ……みんな……」


カイルが眠りについた瞬間、屋敷全体が優しい魔法に包まれたかのような静寂に包まれました。



【冬の夜:ステータス更新】

カイルの病状: 急速回復中(愛のバフ効果)

幸福度: 限界突破・継続中


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