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第80話 最終局面(シンクロ率400%)

 さて、取り急ぎ戦況を確認する。

 北の領民たちはすべて避難して、領都に入っている。

 街や村、農地の被害は不明。

 そして、伯爵家の常備戦力では壁外戦を行う力はなく、籠城するしかなかった。

 しかも、元々魔獣の少ない地域だったため、領都に外堀はなく、簡単にゴブリンたちに張り付かれてしまったと。


 俺が吹き飛ばしたことでできた余裕ももうなくなる。

 再びゴブリンの大群が押し寄せてきている。

 そして、後方にはオーガと地龍が控えている。あれ?地龍って2頭いるじゃん。


「ザック、地龍一頭任せる。もう一頭は俺がやる。エド、ついて来い。地龍退治を教えてやる。ゴブリンの群れはユーキいけるか?」

「はい、任せて下さい」

「よし、オーガは残ってたら全員で対処する!いいか、味方に被害出すなよ!お前らそれが一番不安だ!」

「ユーキ!よく聞いとけよ!」


 アンタだよ!


 フレッドさんの仕切りで作戦が決まると直ちに実行だ。

 大規模魔術を撃つために、まず俺が一人で先行する。

 俺が外壁から飛び降りると、ルクスもついて来た。

 ルクス、魔装もなしに平気なのか。すごいな!


「トーダ、悪いけど今回は助けてくれる?多分魔力が保たないから」

「ええで、せや、ちょっとオモロイこと試してみんか?」

「オモロイこと?」

「ちょっと待ってな」


 うわっ、トーダが俺の中に入ってきた!


 (ええか、ワイのマナを感じてワイと同化するんや。したら、ワイのマナもワイの術も使えるで)


 心の中で声がする。

 心話とも少し違った感じだ。

 自分が自分に話しているような。

 トーダのマナを感じて溶け込むように・・・。


 (まあええか。今んとこ半分くらいやな。ほったら行くで!ぎょうさん来よってからに!)


 目を開けると、ゴブリンの大群が迫ってくる。

 よし、魔力を練り上げる。

 あっという間に魔力が練り上がった!

 なんだこれ?

 式神ってこんなにすごいんだ!


 俺は直径100メートルの大竜巻をゴブリンの群れに向かって放つ!

 高速の大竜巻がゴブリンの群れを巻き上げながら進んで行く!

 ぽっかりと道が開ける。

 すごい、全然魔力が減った感じがない!


 (ユーキ、次や!)


 次々と放つ大竜巻でゴブリンの大群はみるみるうちにその数を減らしていく。


「ユーキ、そこまで!」


 フレッドさんの大声が聞こえると同時に、三人が飛び降りてきた。


「お前一人でやるつもりか!俺たちにも残せ!」


 そう言って、三人は駆け出して行った。

 それはいいけど、フレッドさんまで殴らないでほしい。


 突然大歓声が上がる。

 振り返ると、外壁の上に集まった騎士や冒険者、恐れ知らずの領民たちが大興奮で歓声を上げていた。あまりの光景に声を失っていたが、ようやく我に返ったようだ。

 ユーキ、ユーキのコールの他、芸人コールが聞こえる。いや芸人コールの方が多くないか?

 なんだよ、水芸の次は風芸か、って。

 俺の竜巻は芸じゃねぇ!ボルテックスパニッシュだぞ!言えないけど…。


 (ねえトーダ。今のはトーダの力なの?)

 (いや、正確には二人の力が交じったやつや。人式言うてな。ヒトとシキが一緒になるねん。そしたら、いつも以上の力が出せるようになるんや。今のユーキの力やと、ワイと釣り合うとらん上に、混じり具合も半分くらいやな)

 (ハルさんとはどうだった?)

 (ハルとは完璧やで。元々これ考えたんハルや。面白がって遊びでやったんやけどな)


 やっぱり晴明さんはすごいな。歴史に名を残す陰陽師だ。俺なんかと比べるのもおこがましいけど、少しでも近づきたいな。


 (せや、完全に一体になったら光るで。カッコええで!)


 光る?嘘だろ。

 スーパーなんとか人?スーパーヒトシキ・・・。スーパーヒトシクン?

 思考が変な方に行った。これ以上はやめとこう。

 結論!これからも訓練しましょう!


 地龍を仕留めに行った人たちはどうなったかな?

 前方を見やると、いた!

 傷だらけの地龍が走り出した!

 後ろからザックさんが追いかけてる。

 え?あれ逃げてんの?

 あ、ザックさんが尻尾捕まえた。振り回してるぞ。

 地龍って体長10メートル以上あるよね。

 体重何トンだよ。それ振り回すか?

 お?投げ飛ばした!

 剣を振り上げて、うわ、一撃で地龍の首が落ちた!

 よし、ゴリラの戦闘は人間には真似できない戦い方だ。参考にするのはやめよう!


 もう一方は?

 エドが剣を叩き込んだ!が、跳ね返された!硬いのか?

 フレッドさんは横で腕を組んで怒鳴っている。

 エドが立ち上がり、また剣を振る。しかしまた跳ね返される。

 うおっ、地龍がフレッドさんに襲いかかった!

 あ、殴った。

 地龍が吹き飛ばされた!

 エドがフレッドさんに説教されてるみたいだ。

 あれ?あの地龍、コッソリ逃げようとしてないか?

 あ、フレッドさんに見つかった。

 尻尾掴んで引きずって連れ戻した。

 エドが再び攻撃させられている。

 なんだか見てはいけないものを見たような気がする。

 もう放っておこう。


(ユーキ、ちょっと向こうの方に行ってくれへんか)

 (うん?何かいるの?)

 (なんや、懐かしい、臭い匂いがするねん)

 (了解!)


 俺はルクスに跨りエドの指示する方向に走った。

 そちらには身長2メートル以上、赤黒い筋肉質の身体に鋭い眼光、縮毛の長髪、そして額に一本の角と口から2本の牙を出した異形の集団がいた。

 纏う布はボロ切れで手には金属の棒を持っている。

 錬金棒じゃないよね。


 コイツらがオーガか?なんか日本の鬼のイメージだね。


 俺を見たオーガたちが威嚇の唸り声を上げる。

 10数匹はいる。

 そのとき思わぬことが起こった。


「臭い匂いがする思うて来て見たら、なんでオマンらがここにおる?」


 なんとトーダが俺の口を通して話し始めた!


「答えんかい!なんでここにおる!」


 オーガたちがビクついている。

 なんだ?知り合いか?


「酒呑もおるんかい!?」


 オーガたちが慌てて首を横に振る。


「オマンらだけかい。どうせここでも悪さしかせんやろ。死んどけ!」


 そう言うと、俺は右手を横に一閃した。いや、俺がやったんじゃないけどね。

 すると、オーガの首がボトボトと地面に落ち、10数匹のオーガの首から噴水のように血が噴き出した。


 トーダが俺の身体から出てきた。


「身体勝手に使うて堪忍な」

「それは構わないけど、今のは?」

「アイツら鬼の下っ端や。酒呑童子とか知らんか?」

「聞いたことはあるよ。源頼光と渡辺綱だっけ。大江山の鬼で有名だよ」

「酒呑て、一族の名前や。頭領倒したら次の頭領が酒呑童子や。都でも女、子供攫うては、犯したり殺して肉食うたり、ろくなことせん連中や。倒しても倒しても湧いて出る一族やけ、ハルが結界で封じ込めとったんやけどな。なんでここにおるんやろ?」

「トーダたちと一緒で、こっちに飛ばされたのかな?」

「そうかもしれんな。まあええわ。会うたら即殺や」


 外壁の方に戻ると、シェフィールドの騎士団も壁外に出て、ゴブリンの残党狩りをしていた。

 エドは結局地龍を倒せなかったらしく、頭にタンコブを作っていた。

 その地龍も綺麗に首が落とされていた。

 なんでも龍種の肉は美味いらしいが滅多に市場に出ないそうだ。

 地龍も龍種としては下位だが、肉は美味いという。

 あとで少し分けてもらおう。

 ゴマスリのため、地龍をストレージに回収しておいた。



 日が暮れる前にゴブリンの残党狩りは完了した。

 サーチで確認した後、フレッド団長だけトーダに乗せて、出発したであろう救援隊を探した。

 やはり、まだランカスターの近くを移動中だったので、そこから帰還してもらった。

 フレッド団長も救援隊と一緒に帰るのかと思ったら、ランカスターまで乗せていけというので、仕方なくフレッドさんと共にランカスターに戻った。


 ランカスターのスタンピードもほぼ収束し、あとは残党狩りを残すだけとなっていた。

 フレッドさんと二人で、ジェームス様にシェフィールドでの様子を報告してから、シェフィールドに戻ろうとしたら、地龍を出せと恐喝された。

 いや、元々フレッドさんの物なんだけど、恐喝された気分になっただけだ。

 決してパクろうとしたわけではない。

 なんでも、この後、慰労のために中央公園で地龍の焼肉パーティを開くんだそうだ。

 俺も参加したかった。

 後ろ髪を引かれる思いで、一人でシェフィールドに戻った。


 シェフィールドでザックさんを捕まえて、地龍の焼肉パーティをやろうと必死で説得した。

 戦いの後の慰労と団結がいかに大切か、そのために焼肉がどれほど適切か、今スタンピード被害に遭った領民には希望の肉こそが必要であり、その肉が地龍であればもはやシェフィールドの未来は約束されたも同然だと!

 ザックさんが半分だとかケチくさいことを言うので、間違えたフリして全部出してやった。

 参加した領民たちは大喜びだった。俺のタンコブと引き換えに。


 幸いなことに今回のスタンピードで、シェフィールド領に人的被害は一人も出なかった。

 一方で、農地に関しては、領都から北部の地域で壊滅的な被害を被った。

 時期的には、秋の種蒔きが終わり育ち始めたタイミングで、収穫期よりはマシかと思えたが、これから復旧作業を行い種蒔きをして作物が育つかはやってみないとわからないということだった。それでも、あれだけの魔獣が襲って来て命があっただけ儲け物だと、領民たちはすぐに前を向き始めた。この世界の人たちはたくましい。


 結局俺はその後もシェフィールドに滞在して、復旧作業に奔走した。

 そう、俺は意外に災害復旧に向いていたのだ。倒壊した家屋や瓦礫の撤去にストレージが活躍した。資材の運搬にもストレージが活躍した。

 農地の復旧には土魔術が役に立ち、蒔いた種に木魔術で成長促進をかけると、あっという間に発芽した。

 外壁周りに新たに作った堀の掘削にも土魔術が有効だった。

 作業員のお弁当運びにストレージが喜ばれた。

 作業員の手洗いに水魔術が重宝された。

 こうして俺は、この街でも何でも屋さんの地位を不動のものとした!


 そう、領民のほとんどは俺の戦いを見ていないのだ。

 そして、なぜか収穫祭の大道芸と今回の復旧作業が強く印象に残ってしまい、何でも屋さんとして人気になってしまった。

 ちなみにザックさんは、領の子供たちに、お肉のおじさんとして人気だ。地龍の肉は子供たちに絶大なインパクトを残したようだ。


 エミーちゃんはスタンピードから数日後にエリカ様と二人でシェフィールドにやって来た。

 そして、いつも俺とルクスについて回り、せっせとお手伝いをしてくれた。

 服が汚れることも厭わずに、毎日復旧の手伝いをするその姿に、シェフィールドの領民は心を打たれ、天使様と噂した。また、エリカ様が嫁に行って以来シェフィールドから失われたお姫様が誕生したとも囁かれた。こうしてシェフィールドの『姫天使』が爆誕した!

 なお、シルビアちゃんは学園入学前の追い込み勉強中だそうだ。

 トム君はそのストレス発散担当。ご苦労様です。


 トーダが見たという転移門は他にも目撃者がいたが、翌日調査を行なったところどこにも見当たらず、綺麗さっぱり消えていた。

 仮面の男も現れなかった。


 結局今回のスタンピードの原因については何もわからないまま、事件は収束したと判断せざるを得なかった。


 メイデン師匠は未だ帰って来ていない。


 こうして少しの陰を落としながらも平和な日常が戻り、季節は春を迎えようとしていた。


 あ、学園の入学準備忘れた!



 《第一部 完》



第一部完結です。ここまでお読みいただきありがとうございました。第二部は学園編になります。引き続きよろしくお願いします。

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