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第73話 学園入学準備?

「ユーキちゃんの学園の準備はどうしましょうか?春前にまたこっちに来るの?」


 はあ?

 何言ってんだ、この人は!


「そうね、そんな時間あるかしら?制服と、寮の申込みと、後は身の回りのものね。大丈夫、ランカスターの方で用意するわ。どうせシルビアの準備もあるから」


 ちょっとエリカお姉様!あなたまで何を言ってるんですか?


「私、学園に行くの気が重かったのですが、ユーキお兄様と一緒なら安心です!」


 そこ、シルビアちゃん!勝手に安心しないように!


「えーと、皆様、一体何の話をされているのでしょうか・・・」

「決まってるでしょう。あなたの学園入学のお話しよ」


 エリカお姉様が、あなた馬鹿なのという目で俺を見る。


「私が学園入学?」

「そうよ、あなた15歳でしょ。貴族の子弟は15歳になったら学園に行くのが義務なのよ」

「聞いてませんが・・・」

「あらそうだったかしら。じゃあ今言ったわ」

「あのぉ、私に今更学園の勉強は不要ではないかと」

「そうね、お勉強だけならね。でも人脈を拡げたり、王族や他の貴族の子供の様子を見るのも勉強よ」

「王族ですか?」

「ちょうど今第二王子が在学中よ」

「は?」


 第二王子って勝手に聖女召喚した馬鹿王子じゃないか!

 それにシルビアちゃんと婚約の話が出ていると言ってたな。


「あなたは知ってたかしら。シルビアを殿下の婚約者にって陛下からお願いされてるんだけど、ご本人は召喚した聖女もどきに入れ上げてるでしょ。早く婚約話は終わらせたいんだけど、陛下が中々折れてくれなくてね。そんなときにシルビアが学園に入ったら、あの馬鹿が何やってくるか不安なの。元々こんなことお願いする予定ではなかったんだけど、あなたが学園に入るならシルビアのこともお願いね」

「シルビアちゃんの護衛くらいいくらでもやりますが、本当に私が学園に入学しなければいけないんですか?」

「ごめんなさいね。王国法で決まってるの」


 そう言えば以前王国法を勉強したとき、そんなのがあったな。

 まさか自分が関係してくるとは思わなかった。

 俺、本当は28歳なんだけど・・・。今更高校生か?


「それにね、あの馬鹿王子、来年お気に入りの聖女様を学園に入れようとしてるみたいなの」

「学園は貴族でなくても入れるんですか?」

「平民でもお金と学力があれば入れるわ。試験があるけど。ただ、聖女様に関しては特例で貴族扱いで入れるつもりみたいよ。あなたじゃないんだから、入学試験を受けても無理でしょ」


 陛下が懇願するシルビアちゃんとの婚約話、一方で聖女に入れ上げる馬鹿王子、権力を握りたい馬鹿王子の実家の公爵家、シルビアちゃんと同じときに馬鹿王子の後押しで学園に入る聖女・・・。

 これは確かに嫌な予感がするな。

 陛下に諦めさせるために、シルビアちゃんに何らかの瑕疵をつけるなんて、平気でやってくるかもしれない。

 聖女の評価を上げる工作もあるのか?まあ、それは勝手にやってればいいが、シルビアちゃんに危害が加えられたり、瑕疵をつけられるのは、何としても避けなければならない。


 はぁ、これは仕方ないな。


「理解しました。これは行くしかなさそうですね」

「ごめんなさいね、面倒なことお願いして。あちらが何もしてこなければ問題ないんだけど、後ろの家がね」


 しかし、シルビアちゃんは女子だ。

 俺がガードできないことも多そうだ。


「私の他にシルビアちゃんの側にいれる女性はいませんか?」

「うちの分家の子と派閥の子が何人かいると思うからお願いするわ。ただ、具体的な事情は話せないから、仲良くしてもらうくらいになるけど」

「わかりました、またご相談させて下さい」

「そうね、そうしましょう」


 シルビアちゃんに聞かせない方が良い話もあるかもしれない。

 エリカお姉様も察してくれたようだ。


 しかし、はぁ・・・、この歳になって学生か・・・。

 考えてみれば、中学、高校の勉強は研修所で詰め込まれて、学校には通っていない。

 大学は通ったけどね。

 つまり生まれて初めての高校生活みたいな感じだ。

 それならそれで経験してみるのもいいかもね。

 やばい!いじめられたりして。



 暦は12月に入った。

 日本に似た四季のあるこの国では、寒さが徐々に増してきていた。

 ランカスターに帰ってきてから1か月になる。


 シェフィールドを離れるときは、お母様が泣きながら抱きしめてくれた。


「ユーキちゃん、ここはあなたの家なのだからいつでも帰ってきていいのよ。いいわね、あなたにはもうちゃんと家族がいるの。忘れないでね」

「そうだよユーキ。このままここに残って、学園を卒業したら私を手伝ってくれ」

「ユーキ、電話が完成したら一番に送る」


 パトリック、ルーカスの両兄上とも随分仲良くなれたと思う。

 本当の家族になれたかと言われてもわからない。そもそも俺には家族も兄弟もいなかったのだから、家族や兄弟に抱く思いや感情がどんなものなのかさっぱりわからないのだ。

 それでもこの人たちが俺のことを家族の一員として迎えてくれようとしていることは痛いほど感じられ、俺もこの人たちを大切にしたいと思う気持ちははっきりとわかる。


「ユーキ。元々私たちはお前を護るために養子に迎えた。以前言ったように、養子として迎え入れた以上、お前はシェフィールドの人間だ。私たちは一切の区別なくお前を息子として扱うつもりだった。しかし、お前はこの滞在でしっかりと皆の心を掴んでくれた。私や使用人たちの身体を治してくれたのもそうだが、サマンサやエリカ、それに息子たちがこれほど楽しそうに一緒に過ごしたのは久しぶりだった。お前は自分自身で私たちの家族になったんだ」


 父上にそう言われると嬉しい。しかし、それはシェフィールドの人たちが、俺を心から受け入れてくれたからこそだと思う。


「よいかユーキ。お前はもうシェフィールドの人間だ。だからと言って、シェフィールドの名を高めようとか傷つけまいとか、変に考えすぎて自分を抑制する必要はない。お前は好きに動けば良い。お前一人が何かしたとて、シェフィールドはびくともせん。そしてお前に何かあったら私たちが必ず助ける。お前にはシェフィールドがある。帰る場所がある。忘れるなよ、それが家族だ」


 俺を気遣っての言葉だ。

 養子にしたことで俺が窮屈に感じないように。

 懐が深く、名門貴族の矜持を見たような気がした。

 その後、今のところもらってばかりのようだがな、と苦笑していた父上の顔がおかしかった。


 ザックさんは、絶対兄上とか呼ぶなよ、限界は『兄貴』までだ、と言いながら、ランカスターに着いたところで別れた。どこに住んでんだ?


 ランカスターでの生活は、少し変化があった。

 シルビアちゃんや双子ちゃんとの距離が縮まり、ルクスが加わった。

 エミーちゃんは相変わらずルクスが大好きで、勉強の合間を縫ってルクスと過ごしている。

 ルクスもそんなエミーちゃんが大好きのようだ。

 シルビアちゃんやトム君も、ときどきルクスと遊ぶようになった。

 ルクスは利口な馬で厩務員さんの評判も良い。他の馬は、何か本能的に感じるのか、ルクスを排除するどころか、むしろ慕っているようだった。まるで上位者を前にしたように。


 シルビアちゃんは、俺と一緒に学園に行けることでやたらとテンションが高い。

 しばしば俺に勉強を教わりにくるようになった。

 これまでは、第二王子のいる学園に行くことに随分不安を感じていたんだろう。

 ランカスターや周辺領地から来年学園に入る予定の貴族子弟とも、お茶会形式で顔合わせをした。貴族の子供たちは、元の世界の同年代と比べると大人だと思う。日本でも、元服があった時代だと、こうだったのだろうか。皆、一人前の貴族としての自覚を持っていた。

 特にランカスターの子供たちには、シルビアちゃんを護らなければという気概を感じた。なんと言ってもシルビアちゃんはランカスターのお姫様だからね。


 俺とエドは、騎士団で訓練する以外は、たまに二人でレクシャールのダンジョンに適当に入っている。戦闘能力を上げるついでに、良い小遣い稼ぎになっている。

 エドは、大金が入ったことで自分の馬を買った。

 これまでは、厩舎の空いている馬に乗っていたが、ルクスを見ているうちに欲しくなったらしい。ルクスの正反対で、見事な漆黒の3歳馬だ。

 名前は、エドから相談されて、元の世界の単語を色々挙げた中で、エドが気に入った『ノクス』

 に決まった。ラテン語で夜を意味する。

 ルクスとノクス、白と黒、正反対の2頭だが、いつも一緒にいるので仲が良い。


 騎士団の訓練で、個人戦をやる際の俺やエドの相手は、副団長クラスか、団長のフレッドさんになっていた。副団長クラスが相手の場合、ほぼ互角か優勢で終えられる。しかし、フレッドさん相手だとまだ勝てない。パワーでは圧倒的に負けている上に、技術がすごい。魔術を混ぜても勝てる気がしない。

 ザックさんにも本気でやり合ったらまだ勝てない。まだまだ上が大勢いる。


 そして、メイデン師匠のことだが、まだ帰ってこない。

 もう数カ月、一切連絡がないまま不在が続いている。

 師匠のことだから万が一もないと思うが、さすがに心配になる。

 トーダに聞いても、「別に心配いらんやろ、ちょっと出かけとるだけや」と、にべもない。

 式神のちょっとは感覚が違うようだ。

 しかし師匠不在のため、錬金室を勝手に使えず、錬金術の練習ができない。

 その一方で、高度の治癒術が使える者が不足し、俺が師匠の代わりに駆り出された。

 いつの間にか治癒師部隊の立派な一員にされていた。


 そんな平和な日々を過ごしていたある日、北の街からもたらされた一つの報告で、ランカスターに激震が走った。

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