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第66話 イヤな予感

 翌朝、部屋で朝食をとった後、エドと共に城の裏手にある訓練場に足を運んだ。

 さすがにランカスターほどの広さはないが、田舎の高校のグラウンドくらいの広さはある。

 通達されていたのか、すでに騎士団が整列していた。1,000人くらいか。

 ランカスターから来た騎士団の人もいるね。


 父上とパトリック兄上が現れて、朝礼台のようなものに俺も一緒に登壇させられた。

 おい、ランカスター騎士団!ニヤニヤすんな!


「全員注目!」と団長らしき人の掛け声。


「皆に紹介しておく。ここにいるユーキは、この度当家の養子となりシェフィールドの一員となった!全員よく知りおけ!」


 さすが伯爵。中々の迫力だ。父上に促されて俺は一歩前に出る。


「ユーキ・カムラ・シェフィールドです。この度シェフィールド家のご厚情により、当家の一員に加えていただきました。一員となったからには、シェフィールドに事あらば、身命を賭して戦う覚悟です。よろしくお願いします」


 俺の挨拶に一応拍手が湧いた。まあ、こんな子供が即戦力になるとは誰も思っていないようだけどね。


 騎士団の訓練が始まった。

 準備運動の後、あちこちで模擬戦が始まったが、これ弱すぎないか?

 ランカスター騎士団と比べて雲泥の差がある。

 上位の力を持つ者は一握りだ。


 エドと二人で唖然として見ていると、ランカスターの騎士が来た。


「ユーキ、エド、大抵の領の騎士団はこんなもんだ。驚いたろう。ここは強い方だぞ」

「これで?」

「ああ、ランカスターが特別なんだ。ここでやっても仕方ないだろう。俺たちといつものやろうぜ」


 そうするか。

 俺たちは、ランカスター騎士団の方へ行き、最近やっている訓練をやることにした。

 1対10。

 俺とエドは、それぞれ一人で10人を相手にする。魔装を纏って。


 端のエリアで、いきなりド派手な高速戦闘が始まった!

 魔装を纏った10人の騎士たちが全力で俺に襲いかかる。

 俺はエアウォークも使いながら、この攻撃をかわしつつ、たたき伏せる。

 10人全員が倒れると、次の10人が即座にかかってくる。

 これの繰り返しだ。

 最初の組は休憩をとりながら次の番に備える。

 エドも同じことをやっている。


 いつの間にか、俺たちの周囲には、訓練を中断して唖然とした顔で俺たちの訓練を見ているシェフィールド騎士団がいた。あ、父上と兄上も口が開いてるよ。


 10人組がそれぞれ3周したところで、やめ!の声がかかった。

 フーというため息が一斉に漏れる。

 まだ、これからだよ。


「次!魔術戦闘!」


 また1対10で対峙する。

 今度は距離をとった騎士団員から、ファイヤボールやウインドウォール、ストーンスパイクなど、様々な魔術が放たれる。

 俺は、その魔術をかわしたり、模擬剣で切り裂いたり、魔弾で打ち消したりしながら相手に襲いかかる。これは、騎士団も実践的な連携訓練になる。かつては、動かない的相手に連携訓練をしていたが、今では何をやっても大丈夫な俺とエドという恰好の動く的ができた。このおかげでランカスター騎士団の連携は、更に磨きがかかっている。


 この訓練も3周で終わる。

 俺とエドにボコボコにされた騎士たちが俺の前に整列する。

 治癒タイムだ。

 ちなみに俺もエドも無傷だ。しばらく前はボコボコにされていたのは俺たちだったけどね。


 この光景に、シェフィールド騎士団は言葉もなく立ち尽くすだけだった。

 一緒に訓練する?


「ユーキ、これは一体・・・」


 父上と兄上が驚愕から醒めないまま、こちらに歩いて来た。


「メイデン師匠に鍛えられた結果です」

「メイデン様が?一体どんな訓練を?」

「エドと二人だけで、レクシャールダンジョンの30階まで踏破させられました」

「そんな馬鹿な!」

「本当です。何十回も死にかけました。ただ、私の治癒があったのでなんとか」

「なんと・・・」


 パトリック兄上もますます驚いていて、聞いてくる。


「メイデン様はなぜ君たちにそんな訓練を?」

「森の様子がおかしいとか、今後何か起こりそうな気がすると。それで戦力を充実させる必要があるそうです。そこで運悪く選ばれたのが私たちというわけで」


 まあ、嘘ではない。


「ランカスター騎士団の責任者は!?」

「はっ!」


 父上の呼びかけに、カーク中隊長が前に出る。

 グリーンベルト探索のときに小隊長だったカークさんは中隊長に昇進し、今回の護衛中隊の指揮をとっている。


「ランカスターにはユーキのような者が他にも大勢いるのか?」

「いえ、この二人は特別です。この二人に対抗できるとすると、フレッド団長くらいかと思われます」

「そうか・・・。しかし、先程見た騎士団員の戦力も相当なものだったな」

「ありがとうございます。この二人がダンジョンから帰還して以降、団の訓練はかなり厳しくなっておりますので」

「そうか・・・。午後、私の部屋に来てくれ。訓練のメニューを聞かせてもらえるかな?」

「はっ!閣下がそうおっしゃるだろうから、そのときは当家の訓練内容をお伝えするようにと侯爵様より申しつかっております!」

「ジェームス様はお見通しか。パトリック、お前も来い。うちは鍛え直しだ」

「はい、そのようですね」

「これはえらい息子ができたようだな」

「ははは」


 え?後悔してませんよね?イヤだよ今更・・・。


 昼食後、俺とエドは馬でシェフィールドの冒険者ギルドに出向いた。

 ギルド周辺の雰囲気は似たようなもんだね。

 柄が良いとは言えないが、活気があって居心地がいい。

 ギルド自体は、ランカスターと比べるとだいぶ小ぶりになるが、それでも伯爵領のギルドだ。そこそこの大きさはある。ただ、伯爵領は大型魔獣などが少なく、ダンジョンもないので、それほど高ランクの冒険者は集まらないようだ。


 二人で受付に行く。


「ランカスターギルドのエドです。昨日からシェフィールドに来てますので報告に来ました」

「同じくランカスターギルドのユーキです。右に同じ」


 そう言って、ギルド証を提示する。

 受付嬢の目が丸くなる。


「お二人ともAランク・・・。失礼しました。シェフィールドには何か依頼で?」

「いえ、個人的な用で来ただけです」

「こちらで依頼を受けられますか?」

「今のところはその予定はありません」

「わかりました。それではシェフィールドの滞在楽しんでください」


 ギルドの受付は美人が多いね。愛想いい笑顔をありがとう。


「おう、エドにユーキじゃねえか!」


 俺たちが立ち去ろうとしたところに、愛想ない声が響いた。

 振り返ると2階の階段から降りてくるゴツい巨体。


「あれ、ザックさんじゃないですか!」

「お前ら、こんなところで何やってんだ?依頼か?」

「いえ、ちょっとシェフィールドに用事があって。ザックさんは?」

「俺か?俺も野暮用でな。ちょっとそこでエールでも飲むか。時間あるか?」

「ええ、大丈夫です」


 俺たちは飲食エリアに移動して、エールとつまみを頼んだ。


「お前ら、30階まで行ったらしいな」

「聞かれましたか」

「おう、賭けも稼がせてもらったぜ」


 ザックさんがニヤリと笑う。へえ、俺たちが上手く行く方に賭けてたんだ。


「じゃあここ奢って下さいね」

「これくらい任せとけ!それで強くなったか?」

「まあ、そこそこには」

「二人で30階だ。想像はつくよ。Aに上がったらしいな」

「はい、おかげさまで。ザックさん、今日はパーティの人たちは?」

「ああ、今回は俺の実家の用だったんでな。一人で来た」

「え?ザックさんてシェフィールドの出身なんですか?」

「おう、生まれも育ちもシェフィールドだ!」


 へえ、知らなかったな。でも、ここじゃザックさんに合う仕事はなさそうだな。


「ザックさん、こっちじゃ見合う依頼ないんじゃないですか?」

「そうなんだよ。だから思い切り暴れられるランカスターにな」


 この人のニヤリはカッコいい。やはり見かけは大事だ。

 今の俺がニヤリとわらっても、せいぜい悪戯を企んでるガキだからな。


「シェフィールドにはいつ?」


 エドがエールを煽りながら聞く。


「さっき着いたばかりだ。ギルマスに顔見せて来たところだよ」

「じゃあ実家の方にはこれからですか?」

「そうだ。気が重いけどな、姉貴がうるさくてな」


 ザックさんが憂鬱そうに言う。

 それより事件だ!ザックさんにお姉さん!

 俺はゴツいモビルスーツを着た強面の女性を想像して吹き出しそうになった。


「お前今失礼な想像したろう。安心しろ、姉貴は俺には似てねぇ。むしろシェフィールドじゃ美人で評判だ」

「すみません、ザックさんに女装させてしまいました」


 ザックさんがブッ、とエールを吹き出した!


「お前なぁ。変な想像させんじゃねえよ!」


 俺たちは大笑いだ。


「それで、こんなところで油売ってていいんですか?」

「そうなんだけどよぉ」

「なんでそんなに家に帰りたくないんですか?」

「まあな、なんて言うか、その堅苦しいんだよ」

「堅苦しい?」

「お前ら笑うなよ、絶対笑うなよ!」


 なんだ?年末特番か?


「別に笑ったりしませんよ」

「そうか、あのな、俺ん家はな、貴族なんだよ」

「へ?貴族?」


 俺とエドはポカン状態だ。


「ほらな、笑いたくなるだろう」

「いや、別に笑いはしませんが・・・」


 それよりもだ。

 シェフィールド領に実家がある貴族だと?

 もちろんシェフィールド領には城に勤める貴族が大勢いるはずだ。

 しかし、美人で評判のお姉さん・・・。

 実家の用事でこのタイミングで呼び戻される・・・。

 三男は冒険者って言ってたよな・・・。

 とてもイヤな予感がする。


 エドと目を見合わせる。

 エドも気づいたようだ。

 どうしよう、この先を聞くべきか。


「おっ、そうだ!お前らこれから一緒に依頼受けねえか?そしたら家に帰らない理由になる」

「あ、いや、俺たちもう戻らないといけないんで」

「なんだ、冷てえな」

「あ、じゃあすみません。もう戻ります!ここご馳走様でした!」


 俺たちはバタバタと席を立ってギルドを出た。

 街の探索は後だ。

 とりあえず城に戻ろう!


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