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第52話 強くなる敵(ダンジョン20-21階)

 翌朝、俺たちは午前5時に起きると、手早く朝食を済ませ、5時半にはセーフティエリアを出発した。昨日の酒で、まだ皆寝ている。

 見張役で起きていたギルド職員に挨拶をして、俺たちは森の中を進み始めた。



「エド!落とすぞ!」

「任せろ!」


 俺はエアウォークを使って上空を旋回するファイヤコンドルに向かって駆け上がる。

 射程の10メートルに入ったところで重力魔術をファイアコンドルにかける。

 ファイヤコンドルは、急に重さの増した自身の身体で飛行を続けることもかなわず、錐揉み状態で落下する。

 エドは落下したファイアコンドルに素早く駆け寄ると、2メートルほどに伸びた魔刃でその首を一太刀で斬り落とした。


「エド、お見事!」

「ユーキもね!」


 俺たちは右手でハイタッチをした。


 ニーナちゃんたちを助けた日から20日が経った。

 俺たちは今20階の岩山エリアを攻略中だ。

 攻略のペースは芳しくない。

 一日で10階まで到達したのが嘘のように、11階以降は一気に進行が遅くなった。

 まず、各エリアが広大になった。地図を持っていない俺たちは、勘を頼りに、いや正確には当てずっぽうに動き回り、なんとか次の階段を見つけてここまで来た。

 魔獣の強さも増してきた。

 しかし、ほぼ一日中、遭遇した様々な魔獣たちと戦い続けたおかげで、俺もエドもかなり強くなったと思う。

 二人とも何度か死にそうになったし、大怪我もした。


 エドは、10階の宿で食べたランペイジブルに、角で魔装を破られて、腹を突き刺された。

 エドの犠牲の元に、食材が手に入ったけどね。

 また、エドは、ビッグビーという1メートルくらいもある蜂の大群に身体中を刺されて、死にかけた。魔装の防御は、上位の魔獣?魔虫?になると、割と簡単に破られる。強化したマギシールドを出すか、敵の攻撃箇所の魔装をピンポイントで強化する技術が必要だ。

 一方で、グリーンベルトの遠征でも経験したが、昆虫系は寒さに弱い。この世界でも変温動物の弱点は共通のようだ。氷魔術で一気に冷やすと、途端に動きが鈍くなった。

 エドの犠牲で、ビッグビーのハチミツが手に入った。


 俺は、砂漠地帯で、またもや目に見えない敵が急速に近づいて来たので、前方と上空に神経を尖らせていたら、いきなり地面が陥没して砂の中に引き摺り込まれた。

 相手はデザートアースワームという砂漠地帯に棲息する、直径1メートル、体長10メートルもあるミミズのバケモノだった。

 砂の中でミミズに巻き付かれて窒息寸前になり、抵抗もできず死にそうになったところをメイデン師匠とトーダに助けられた。

 師匠から、「サーチに頼りすぎじゃ!何度同じ間違いをするつもりじゃ!」と言って、杖で思い切り殴られた。いつも思う。その杖は何だ?


 また、森というよりもジャングルのようなエリアでは、トレントという植物の魔獣に対して、本体に対峙していたら、いきなり蔦に首を締め上げられて死にかけた。

 エドが即座に蔦を叩き斬ってくれたので助かった。

 師匠から、「首の魔装を強化して拡げれば窒息はせん!慌てるから死にそうになるんじゃ!」

 と言って、また杖で殴られた。その杖、俺たちを殴る以外で使ってるとこ見たことないんだが。


 そんな経験を20日間、朝から晩まで繰り返していれば強くもなる。

 元の世界でも、ジャングルのサバイバル訓練はやらされたが、このダンジョンは、遭遇する生物がすべて襲ってくるという点で、危険度が圧倒的に違う。


 おかげでサーチに頼るだけでなく、危機察知の感覚がかなり研ぎ澄まされてきた。

 一瞬の勘が生死を分ける。

 魔装の熟練度も、二人とも相当アップした。

 先ほどファイヤコンドルという火を吐くハゲワシを倒した魔刃は、剣に纏わせた魔装を延して見えない刃にする技だ。俺もできるが、パワーはエドの方が上かな。

 そして、エドも、ようやく魔素を直接支配する魔術が使えるようになった。ただ、イメージ力の違いなのか、魔術の威力はまだ俺の方が上だ。


 こうして、俺たちは今、20階の岩山エリアで、ファイヤコンドルの巣の近くを移動中だ。

 21階への階段エリアは、ここを下山すればすぐだ。

 襲ってくるファイヤコンドルは、色々な方法を試しながら倒している。

 ここ2、3日は、死にそうになることも、大怪我もない。

 俺たちも強くなったもんだ。


 ただ、この先、結構強い魔獣の気配が十数頭ある。そいつらを倒せば20階攻略だ。


 待っていたのは体長10メートルくらいの、岩の鎧でも着ているかのようにゴツゴツした表皮を纏った、ワニのような魔獣だった。長い口にびっしり並んだ牙が凶悪だ。

 尻尾が地面に打ちつけられると、ドンという音がする。


「ロックアリゲーターじゃな」


 師匠、なんでも知ってるな。


 先頭のワニが、ズンズンと音を立てゆっくりと近づいて来る。

 30メートルくらいのところで立ち止まると、曲がり気味の4本の足を腹這いになるように縮めた。ん?なんだ?


 次の瞬間、ワニが30メートルの距離を一気に跳んで襲いかかって来た!

 うわ!ワニってジャンプしたっけ?


 俺とエドは横っ跳びに避けながら、ワニに一太刀浴びせてみる。


 ガキン!


 かなり硬い!


 ワニが大きな口を開けて、俺に噛みつきかかってきた。


 グァチン!


 牙の噛み合わせがすごい音をててる。

 それに速い!

 残りのワニたちも、こちらに向かってきた。意外に素早いな。

 俺とエドは一旦後ろに跳び下がり、ワニたちと距離をとった。


「彼奴らの皮はいい防具の素材になるぞい。それに肉も鶏肉より美味いぞい!」


 了解です、師匠。

 素材をできるだけ傷つけないように。 

 よし、コイツらもきっと変温動物だよな。


「エド!全力で氷魔術だ!」

「わかった!」


 俺とエドはワニの群れに向かって全力の氷魔術を放つ。

 ワニは氷りかけた身体をバキバキいわせながら強引に動くが、徐々にその動きが鈍くなる。

 次第に動きを止め、ついにすべてのワニが凍りついた。

 冷凍ワニの出来上がりだ。肉の鮮度も保たれる!って、俺にはストレージがあるんだった。


「よし、上出来じゃ!ただ気をつけい。もっと上位の魔獣になると、爬虫類でも氷魔術が効かんやつもおるでな」


 師匠の忠告を聞きながら、ワニどもをストレージに収納する。

 この先魔獣の気配はない。

 やっと、20階攻略だ!


 21階への階段を降りて、中ほどの休憩エリアに入る。

 中では10人ほどの冒険者たちが素材の仕分けをしているようだった。

 その内の一人が入ってきた俺たちに気付き、声をかけてきた。


「え?君たち二人?はぐれたのか?」


 がっしりした体格だが、人の良さそうな20代半ばくらいの男性だ。

 どうやら、若い二人を見て、攻略中にパーティからはぐれたと思われたらしい。


「いえ、3人です」と言って、俺たちの陰で見えなかった小柄な師匠を示す。


「あ、メイデン様。じゃあ君たちがエド君とユーキ君か?」


 え?何でわかるの?


「ああ、君たち今ギルドで評判になってるよ。獅子の咆哮の馬鹿どもを捕まえて女の子助けたんだって?それに、二人でダンジョン攻略中だって。二人でどこまで行けるか賭けになってるぞ」と言って笑う。


 何だそれ!人を勝手に賭けの対象にすんじゃねえ!


「しかし、君、本当にエド君か?」


 そう言えば俺もエドもひどい格好だ。

 人目のないときに何度か風呂には入ったが、連日の戦闘で服は着替えも含めてボロボロ、防具も傷だらけだ。それに髪は伸びてきてボサボサ、無精髭も生えてきている。

 エドなんていつもは綺麗に整えた金髪の貴公子だからな。ギャップがすごい。

 今のエドを女の子に見せて、幻想を打ち砕いてやりたい。

 と思ったら、仕分けをしていた女性の冒険者が、「あらぁ、エド君なの?ワイルドなエド君も素敵ね!」などと言いやがる!

 やっぱりコイツは男の敵だ!


「僕たちは今日で三日目でね。仕分け終わったら帰るところだよ。ギルドに行ったら、君たちが20階まで来たこと報告しとくよ」

「はあ」


 これは、生存報告なのか?それとも賭けの中間報告なのか?


「それにしても、本当に二人で20階かぁ。すごいね!」


 そんな話しをして、仕分けの終わった冒険者たちは、奥の転移装置を使って帰って行った。

 目の前でぱっと消える。何度見ても不思議な光景だ。


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