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第28話 蜥蜴再び

 深夜、額に何やらもぞもぞとした違和感を感じ、咄嗟に右手を運んだ。

 え?何かぷにぷにした感触のものを掴んだ・・・掴んでしまった?

 なんか動いてないか?

 急いで飛び起きると、ベッドから出てカーテンを開けた。

 窓から差し込む月明かりに右手をかざして見る。


 握った右手の下で、赤い蜥蜴の下半身がパタパタと暴れていた。

 蜥蜴?

 赤い蜥蜴?


 ベッドの上で右手を開いて、そっと蜥蜴を放してみる。


「プハーッ、おまん、いきなり何するんじゃ!死ぬか思うたわ!」


 え?

 日本語?

 蜥蜴に日本語で怒られた・・・。


「こらっ!まず謝らんかい!礼儀も知らんとか!」

「え?ああ、ごめんなさい。寝てたとはいえ悪かったです」

「よっしゃ、許したろ!」


 蜥蜴に許してもらえたようだ・・・。

 しかしだ・・・この世界、蜥蜴もしゃべるんかい!


「次は挨拶やろが!ちゃんと名乗らんかい!」


 蜥蜴が、ベッドの上で、器用に後ろ足と尻尾で立ち上がり、腕を組んで怒っている。

 なんか、近ごろの若いもんは、とかブツブツ言っているが・・・。

 こんな変なのと挨拶交わしていいいんだろうか?


「な・ま・え!」

「あ、はい。ユーキ・カムラです!」


 勢いに負けた・・・。


「おまん、日本人やろ?カムラユーキか?」

「あ、はいそうです。あの、日本をご存知で?」

「知っとる。ワイも日本におったからの」

「え?日本に?」

「せや。知らんうちに、こっちに飛ばされてもうた」


 何と!蜥蜴も異世界転移するのか!

 蜥蜴の聖女様?


「あの、もしかしてルミナスの泉にいらっしゃった蜥蜴さんですか?」

「何ちゅう泉か知らんけど、昨日、泉で会うたやろ?おまん、ワイが見えとったな」

「はい、って、普通は見えないんですか?」

「普通の人間には見えんで」

「そうなんですか!」


 日本から来て、変な日本語しゃべって、姿が消せるオモシロ蜥蜴だった!

 日本にもこんな変な生き物が生息しているのか?

 転移の影響かな?

 見せ物にしたら稼げるかな?


「おまん、なんか変なこと考えとりゃせんか?」

「いえ、何やら高貴な蜥蜴様にお会いできて光栄です」

「バカにしよるとや?」

「いえ、とんでもございません」


 蜥蜴のくせに勘が鋭い。

 しかし、なんでここにいるんだ?

 まあいいや。危険な気配もないし、ただのオモシロ蜥蜴だ。害はなさそうだ。


「それでは蜥蜴様。私は睡眠の途中ですので、これにて寝させていただきます。おやすみなさい」

「おおそうか、ほならゆっくり眠りんさい、って、待たんかい!なに勝手に寝よっとか!」


 なんと、ノリツッコミができる蜥蜴だった。色々芸を持ってやがる。


「せっかく目ぇ覚ましたんや。もうちょい会話を楽しむとかできんのかい」


 めんどくさい蜥蜴だった。

 ジト目で見る。


「なんや、その目は!そもそも、おまん、ワイに礼も言うとらんやろが」

「礼?」

「せや。泉んとこ出た後、霧出してやったろうが」

「ああっ、あの霧、お前か!すごい神経使ったんだぞ!」

「な、な、何怒っとるん?おかげで魔獣に遭わんかったやろうが!」

「そりゃそうだが、方向がわからなくて、緊張しっぱなしだったぞ」

「あの霧、方向狂わすねん。やけん、魔獣は迷ってウロウロしとったやろ。オマンらは、狂わんかったはずや」

「だったら言っといてくれ。ずっと神経張り詰め通しだったんだから!」

「なんやねん、助けて文句言われるんか・・・」


 いじけやがった。

 助けられたのは確かだしね。


「ああ、悪かったよ。助けてくれてありがとうな」

「なんや、最初から素直に礼言うてくれや」

「悪かったって。しかし、すごいな。霧を出して相手を迷わす能力か。転移の影響でできるようになったのか?」

「元からや。日本におるときからできるわ。てか、おまん、なんや言葉遣い変わっとらんか?」

「しゃべり方なんてもうこれでいいだろう。蜥蜴様って言われたいの?」

「いや、ええわ。えらい馬鹿にされとる感じしたからのう」

「それで君はなんでここにいるの?」

「そりゃおまんにちょっと興味湧いたからや」

「俺に?」

「せや、まず、日本人やないか思うてな。それに何や美味そうなマナしとるし」

「マナ?マナって何だ?」

「マナはマナや。術やるとき使うやつや」

「魔素のことかな?」


 魔法学では、魔力の元になるものを魔素と言っていた。


「知らん。身体ん中にもそこら辺にも一杯あるやん、マナ」

「こちらの世界では、多分魔素って言ってるやつだと思うよ。それで美味そうってなんだよ」

「おまんの身体のマナ、ちょっと違うんよ。昔ワイがつるんどったヤツのマナに似とってな。ほんで、懐かしゅうなって、ちょっとわけてもらおうか思うてな」

「わけるってどうやるの?」

「何もせんでええ。ワイが勝手に吸わせてもらうわ」

「え?それって大丈夫なのか?主に俺が」

「別に何ともないで。昔の連れからも年中もろうとったけん」

「本当?」

「ホンマや。ばってん、おまんのマナ、出が悪いんよ」


 なんか、こいつの言葉、方言混じりすぎだな。


「なんか、俺、そのマナとやらが身体から外に出ない体質らしいよ」

「なにぃ!ホンマか?そないなやつおると?」

「おるぞ、目の前に」

「ほったら、おまん、そんだけマナ持っとって術使えんのかい?」

「おう、何も使えんぞ」


 なんだかかわいそうなものを見る目で、蜥蜴が俺を見ている。


「ということだ。どうせ使えないマナだから、好きなだけ吸っていいよ。俺の身体に影響ないならね」

「おおきにな、ニイちゃん。身体には影響ないて。ワイが吸うた分、外から勝手に入ってきて、またニイちゃんのマナになっとるわ」


 へえ、そうだったんだ。

 あれ、おまんからニイちゃんに格上げ?されたぞ。


「ところで蜥蜴君はなんでこっちの世界に来たんだ?」

「蜥蜴君てなんやねん、名前で呼びいや」

「名前聞いてないぞ」

「おっ、ワイの名前知りたいんか、知りたいんやな、よし特別に教えちゃる」


 ちょっとウザい。だがオモシロ蜥蜴だ。


「ワイは、騰蛇言うねん」

「トーダ?」

「せや、五行火神にて十二支巳、十干丁の陰の質、南東司る騰蛇様とはワイのことや!」


 なんだこいつ?何を言ってるんだ?病気か?薬飲まそうかな。


「ほんで、なんでワイがこっちに来たかやったな。よし、教えちゃろう、って、ワイが知りたいわ!連れが死んでもうて暇やったから、国中ウロウロしとったんよ。ほんで鎌倉におったときやったかなあ、突然大きい地揺れが起きてな。ほったら、何や知らんけど、マナがどっかに吸い込まれて行きよった。なんや、なんや思うて調べに行ったら、ワイも吸い込まれてこっちに来とってん」


 鎌倉で地震?いつの話だ?


「トーダはどのくらいこっちの世界にいるの?」

「知らん。もうだいぶ長うおるよ。日本に戻ろう思うても戻れんねん。ほんで、こっちでもあちこち行ったけど、魔獣だらけや。まあ、ワイからしたら雑魚ばっかやけど。人間もおもろいやつおらんし。したら、最近あの泉見つけてな。あそこは空気ええし、魔獣おらんし、静かでええわ思うて、しばらくここおったろう思うとったら、にいちゃんが来てん」


 そうか、こいつも番の蜥蜴に死なれて寂しいところに、こっちに飛ばされてで、大変だったんだな。でも、日本にしゃべる蜥蜴とかいるか?異世界転移の特典か?


「それでトーダはこれからどうするんだ?」

「ワイか?ワイはしばらくここにおるで。久しぶりの日本人やし、ニイちゃんにマナもらうし」

 うん、なんかそんな気がしてた。

 まあいいか、オモシロ蜥蜴、しゃべるペットだ。

 場所もとらないし、食費も大してかからないだろう。


「他の人には見えないんだよな?」

「見せよう思たら見せれるで」

「そうなんだ。まあ、いいや、君がいいなら好きなだけいなよ」

「ニイちゃん、こっち来たばっかやろ?ワイが色々教えたるわ」

「ああ、頼むよ。それと、ここにいるんならニイちゃんはやめろよ。俺はユーキな」

「そっか、ほなユーキ、よろしゅうな」

「こちらこそよろしくね」


 俺は蜥蜴と笑い合った。なかなかシュールな絵面だ。

 で、蜥蜴って笑うのか?


 その日俺は蜥蜴をオデコに乗せて眠った。



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