第19話 評価試験
ところで、俺たちの後ろからぞろぞろついてきた連中はなんだ?
ー新人か?
ー評価試験だってよ
とか聞こえる。
エドが、そっと「皆んな新人の実力が気になるんだよ。パーティ勧誘とかもあるし」と教えてくれた。まあ、いいか。
俺はストレージから防具を出して、胸当と手甲、グローブをつける。
また見物人から、
ーおい!ストレージ持ちか?
とか聞こえる。
今回俺は特に力を隠すつもりはない。
王都を離れたし、この世界では大して強くもないからね。
しばらくすると、むさ苦しい大柄なオッサンが現れた。筋肉鎧だ。
シェリーさんが、こちらです、と声をかける。
オッサンは俺を見て、「お前か、試験受けるのは。ああ、エドの所の奴か」と納得したように頷いた。
言っとくが俺は騎士や兵士じゃないぞ。
「よし、早速やるか。格闘技と剣だったな。まず格闘技から見てやる。おい、この辺開けてくれ」
オッサンが言うと、さっと冒険者たちが広がり、野次馬に囲まれた。
騎士団のときと同じだな。
「ユーキだったな。いつでもいいぞ、かかってこい」
「当てていいんですか?」
「当たるんなら当てていいぞ。思い切りこい!」
うん、こちらを舐めているというよりは、自信があるという感じだな。
なら、思い切りやらせてもらおう。多分当たらない。
俺は騎士団の訓練のときと同じく、縮地で一気に相手の懐に入り、海老蹴りを放つ。
おお、スエイバックでかわされた。でもかすったね。
オッサンがびっくりした顔をしている。
攻撃は緩めないよ。初撃が当たらないのは想定済みだ。
魔装相手の訓練で、俺の速度も上がっている。
俺は、前後左右にステップを踏んだり、ときに摺り足の運足でタイミングをずらしながら、色々な角度からパンチと蹴りを繰り出す。
オッサンも、かわせないと思った攻撃はガードをしてくる。
もう、五分以上攻撃を続けている。
強いな。
相手は攻撃する気はなさそうだ。
オッサンが攻撃してきたらかわせるかな?
さて、今の俺では手詰まりだ。
目や急所への攻撃をフェイントに使うのはさすがに躊躇われる。
仕方ない、終了の声がかかるまで、攻撃を続けよう。
そう思った瞬間、オッサンの右手に魔力が集まるのを感じた。
やばい!
俺は咄嗟に後ろ斜めに思い切り飛んだ。
その刹那、俺の横を魔力の塊が突風のように通りすぎた。
冷や汗が出る。
オッサンはニヤリと笑い、
「よし、終わりだ!」と告げた。
おい、かっこいいじゃないか!
俺は、平静を装ってオッサンに近づき、「ありがとうございました」と頭を下げた。
「可愛くない奴だな。おい、お前、最後ビビっただろう」
誰が正直に答えるか!
ニッコリと笑顔で応えてやる。
「ユーキ、お前、剣も似たようなもんか?」
「はい」
「ちょっとこの剣を振ってみろ」
そう言って、おそらくは自分の剣を渡してきた。
刃渡りは90センチほどの両手剣。少し重いかな。重心は素晴らしい。バランスがいいから振れそうだ。
俺は、渡された剣を正眼に構えて静止する。
そしてその場で上段に構えてから一息に振り下ろし、また静止する。真っ向斬り。
それから斜め下段から切り上げる逆袈裟斬り、斜め上段から斬り下ろす袈裟斬り、水平に斬り放つ一文字斬りを、上下左右に角度や高さを変えながら繰り返す。剣先がぶれない。振りきった後の留めもぴたりと止まる。
そして最後に渾身の突きを放ち静止する。
良い剣だ。
日本刀とは異なり反りがない直剣なので感覚が違うが、振る角度さえ間違えなければ問題ない。
久しぶりの型だった。
今度日本刀を打ってもらおうかな。
俺は静かに構えを解いた。
訓練場はしんと静まり却っている。
「よし、いいぞ」
終了の声がかかった。周囲からホッと息を吐く音が聞こえる。
俺は剣をオッサンに返した。
「呼吸の乱れもなしか。ユーキ、お前魔装は使えるか?」
聞くなよ!と言いたい。
「使えません」
「今何歳だ?」
「15です」
オッサンは、末恐ろしいな、と小さく呟いたあと、
「よし、評価はBだ」
と、シェリーさんに告げた。
周囲から、いきなりBか、とか、あのスピードで魔装使ってなかったのか、などの声が聞こえる。でも、オッサンにはまったく通用してないよ。やはりこの世界で俺はかなり弱い。
「ユーキさん、それでは戻りましょう。手続きの続きをします」
と、シェリーさんから声がかかる。
戻ろうとしたところでオッサンから、
「ユーキ、俺と訓練したくなったら声かけろ。相手してやる」と言われた。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」と礼を言う。
確かにありがたいね。
まだざわついている野次馬を残して、俺たちは受付に戻った。
「ユーキさん、すごいですね!15歳で戦闘評価Bは初めてかもしれません」
スミマセン、本当は28歳です。心の中で謝っておこう。
ところでさっきのオッサンのこことだ。
「シェリーさん、先ほどの方は?」
「ザックさんです。ランカスターギルドのAランク冒険者です」
ザック?ザク?だからモビルスーツみたいな身体してんのか!
それにしてもAランクか。全然勝てるヴィジョンが見えない。
俺は、元の世界でも別に最強というわけではない。戦い方も違う。
しかし、さっきのザックさんとか、騎士団長のフレッドさんを始めとする騎士団の連中とか、強すぎるんだよ。銃弾でも避けるんじゃないか?
無駄死にしないためにも、頑張って鍛えなきゃね。
シェリーさんは手元の機械のような物をしばらく操作した後、名刺よりも二回りほど小さい金属カードを差し出してきた。四隅はちゃんと面取りされている。
「こちらがユーキさんのギルド証になります。表面には登録名、性別、生年月日、所属ギルド、現在のランクが記載されています。ユーキさんの総合ランクは、登録したてですのでEランクになります。裏面には、今のところ信用ランクと戦闘ランクが記載されています。どちらもBランクです」
「裏面は、他に何が記載されるんですか?」
「あとは護衛ランク、採取ランクが記載されるのと、賞罰の履歴や資格停止などが記載されます」
「なるほど。ありがとうございます」
シェリーさんが続ける。
「ユーキさんの場合は、戦闘ランクがBなので、討伐系の依頼はBランクまで受注できますし、ダンジョンも入れます。信用ランクもBですから、総合ランクもすぐ上がりますよ」
「信用ランクというのはなんですか?」
「信用ランクは、簡単にいうと冒険者の人格ですね。粗暴な人とか仕事が適当な人なんかは信用ランクが上がりません。街中の依頼ですと、手紙や品物の配達なんかは、信用ランクがC以上でないと受けられません。護衛依頼などでも、依頼者が信用ランクを指定してくることもあります。ユーキさんは、エドさんが保証人で、侯爵家に住まわれていますので、最初から信用ランクは高くなりました」
「わかりました」
「ギルド証には、小さい魔石が埋め込まれていますので、よそのギルドに行っても本物だと証明できます。ギルドに預けているお金もギルド証を提示して引き出せます。そこの小さい穴は、チェーンを通して首からかけられるようになっています」
ドッグタグだな。
俺も内調と自衛隊のドッグタグを持っている。
登録料として銀貨5枚を払い、冒険者登録は完了した。
「ではユーキさん、改めましてランカスターギルドにようこそ!頑張ってくださいね」と、最後にシェリーさんから素敵な笑顔をもらった。




