第18話 ランカスターギルド
今日は念願の冒険者ギルドを見に行きたいので、エドと二人で冒険者風の庶民服を着ている。
腰に帯剣もしている。
ケイトさんは嫌がっていたが、ここは譲れない。
侯爵領の領都は、レグルスという。
ラテン語で確かちいさな王という意味ではなかったかな。
こちらでどういう意味をもつのかは知らない。
領都レグルスは、王都ほどではないにしても大都市だ。
冒険者ギルドまでランカスター城から歩いていては時間がかかりすぎる。
俺とエドは、馬を借りて街に出た。
街には馬喰があり、馬の売買、レンタルの他、預かりもやっているとのこと。
冒険者にも馬を持っている者がいるので、ギルドには厩舎もあるらしい。
今日は、ギルドの他に街歩きもする予定なので、馬喰に馬を預けることにした。
領都レグルスを馬で進む。
街の造りは王都に似ていて、行政、商業、工業、農業などが大まかにエリア分けされている。
路線馬車やコーバンも王都と同様にある。
聖女様の娘の王女様がランカスター家に降嫁されてから、聖女様の施政に傚って領政を行った結果らしい。
街の人々は明るく活気に溢れている。
商店や屋台の呼び込み、客とのやりとり、公園で遊ぶ子供たち。
ランカスター家が善政を行なっているのが感じられる。
王都に負けない賑わいだが、王都ほど気取っていない。良い街だね。
一時間ほどで外壁近くの冒険者ギルドのエリアに到着した。
午前10時くらいだ。
早朝は依頼の取り合いでギルドが混雑しているということで、少し時間をずらした。
近くの馬喰に馬を預けて、徒歩で冒険者ギルドに向かう。
確かにファンタジー世界だ。
通りには、武器屋や防具屋、道具屋などが何軒も並んでいる。
別の通りは屋台通りだ。
おお、ホテルというより、正に宿屋だな!
食堂もあちこちにある。
あっちの通りは飲み屋街だよ、とエドが教えてくれる。
午前中のせいか、人が少ない。
後でひと通りこのエリアを歩いてみたいね。
そして、何より通りを歩く人たちが皆んな武装している。
獣人もいるね。
これまで見た中で、ダントツでガラが悪いエリア。だが、楽しそう!
俺にもこういう世界観を喜ぶ感性があったことに驚きだ。
「なあ、エド。ギルドに依頼したい人は、こんなガラの悪いところに来るの?」
と、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「依頼するのは別のギルドの支所だよ。一般人がこんなところに来てトラブルになったら大変だからね」
なるほど。納得です。
いよいよ冒険者ギルドに到着した。
結構でかい石造りの5階建ての建物だ。横には体育館のようものが建っているが、どうやら解体所兼素材倉庫だそうだ。
入口は、ウエスタンドアではなく、両開きの頑丈そうな木製扉が開け放されている。
いよいよ中に入る。ワクワクするね。
ギルドの中は、時間をずらしたにもかかわらず、結構は人がいる。
天井が高い。
入ってすぐの右側には受付カウンターがあり、10人くらいの受付嬢が忙しく働いている。
左手はいくつもテーブルが並んでおり、冒険者たちがたむろしている。いいね。
正面奥には2階に続く階段。その左奥は掲示板のようなものがあり、人が集まっている。
見ているだけで楽しいね。
「ユーキ、登録するんだよね。登録は一番奥の受付。さっさと行くよ」
キョロキョロしていた俺にエドが声をかけてきた。
「ごめん、さすがにこの光景は珍しくてね」
謝りながら、エドに案内されて、冒険者登録の受付に行く。
エドが受付嬢に「おはよう、シェリーさん」と、声をかけた。
「あらエドワード様。お久しぶりです。王都から戻られたんですね。今日は新件のご依頼ですか?」
「今日は依頼者じゃなくて冒険者のエド」と言って、エドは両手を広げて装いを見せる。
「あらホント。ではエドさん、ご用件は?」
「今日は友人の冒険者登録の付き添い。ほらこいつ」
と、シェリーさんの前に俺を押し出す。
「まあ、ようこそランカスターギルドへ。エドさんのご紹介なら大歓迎ですよ」
おっ、エド信用あるね、って当たり前か。侯爵家の家令見習い様だ。ギルドの名前はレグルスギルドではなく、ランカスターギルドなんだね。
「よろしくお願いします」
「では、この登録申請に必要事項を書いてください」
そう言って、シェリーさんからA4くらいの紙を渡された。
名前(登録名、本名)、性別、生年月日、年齢、所在地、得意な武術、得意な魔術、パーティ参加の希望の有無、戦闘評価試験の受験希望、最後に保証人。
エドにコソコソ聞きながら書類を埋める。
登録名は「ユーキ」。生年月日は、仕方ないので今を15歳と設定して記載する。
所在地がランカスター侯爵家って、いいのかよ。
得意な武術は格闘技と剣でいいか。魔術はなし!うるさい!
パーティ参加はなし。
戦闘評価試験。
これは、登録時に高い戦闘能力を持つ者を、最低ランクで埋もれさせないための制度らしい。
エドから、ダンジョンに行きたいなら受けておけと事前に言われていたので、受験希望にした。
保証人にはエドがなってくれた。
保証人は信用ランクに影響するらしい。保証人なしでも冒険者登録はできる。
記載を終えて申請書をシェリーさんに渡す。
彼女はざっと目を通して俺に笑顔を向ける。
「はい、ユーキさんですね。これで結構です。ギルド制度の説明はいかがしますか?」
「エドに聞いているので大丈夫です」
「承知しました。それでは評価試験の時間を確認しますので、しばらくお待ちください」
そう言って、シェリーさんは書類を持って、事務スペースの奥の部屋に入って行った。
さすがに侯爵領のギルド。受付嬢も、余計なことは聞いてこないね。
しばらくしてシェリーさんが戻ってきた。
「お待たせしました。本日は他の受験者もいないのですぐに試験できるそうです。ユーキさんの方は大丈夫ですか?」
戦闘能力評価試験のことはあらかじめエドに聞いていたので準備は万端だ。
「はい、いつでも大丈夫です」
「それでは、これから訓練場に移動しましょう」
シェリーさんに連れられて奥の扉をくぐると、そこには広々とした屋外訓練場があり、冒険者たちが思い思いの訓練をしていた。
奥の方で火を投げてるローブの奴は魔術師か?雰囲気怪しいぞ。




