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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第三部【王立ロマリア学院2年】
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第173話 暗殺計画

 俺たちは拘束した二人を連れて拠点へと戻った。

 学生たちがまだ動揺しているな。

 するとリッキー殿下が近くの椅子の上に乗って話し出した。


「注目!今、約五十人の盗賊が現れ我々に刃を向けてきたが、その全員を殲滅した!」


 ウオーッと歓声が上がる。


「我々王族、貴族の役目は民と領土を護ることにある!学院に入った平民も同じと心得よ!魔獣の襲撃、悪党の出現、敵国の侵略!これらは突然到来する!よいか!我々は、この理不尽に対し、いついかなるときも、動揺することなく、勇気を持って、民と領土のために戦わねばならん!臆するな!剣を持て!立ち向かえ!愛する家族を、友人を、そして故郷を護るため、我らに正義ある限り戦うのだ!今日は良い教訓を得た。危難はいつやってくるかわからない。いつか諸君の前に現れる危難立ち向かうため、これから存分に学院で学び、鍛錬せよ!この教訓を胸に、明日までの野外実習を充実して過ごせ!以上だ!」


 ウオーッ!!!


 すごいね。学生たちの不安を一発で払拭したばかりか、やる気まで出させちゃったよ、この人。日本なら実習は中止とかになるんだろうけど、将来の国の人材を育てる学院だと、こんなことで中止なんて笑止千万。いつも、理不尽には屈しないという姿勢で学院運営がなされる。


 俺たちは、拘束した二人も抱えて、学生会テントに向かった。


「会長さすがですね。王族の人みたいでした」

「ブライソン会長が君にゲンコツ落としてた気持ちがわかるよ」

「会長はやめて下さいね」

「はあ、しかし柄じゃないんだよね、あんなの。結構無理してんだよ、これでも」

「様になってましたよ」

「馬鹿にしてるだろう」


 そんな無駄口を叩きながらテントに入る。

 中にはコーザさん、エド、真司の他、項垂れたマリウス殿下、心配そうな従者、そして動揺の隠せないデネブ王国の騎士二人がいた。マリウス殿下を暗殺しようとした騎士は、ロープで縛られて、地面に転がされていた。

 他の学生会メンバーはいない。アルタイル王国の騎士はコーザさんの判断で退出させたらしい。

 こちらは、俺とリッキー殿下、側近のベンさん、ケビン、エンシスさん、それにガーナさんだ。


「さてユーキ、どうやってお話ししてもらおうか」

「少々痛い目に遭ってもらいます?」

「他には?」

「闇魔術で自白」

「確度は?」

「1回しかやったことないんですけど、多分大丈夫かな」

「じゃあそれでいこう。残酷シーンがないなら、他のメンバーも呼んできてくれ」


 リッキー殿下がそう言うと、ベンさんがサッとテントを出て行った。

 今のうちに拘束した三人の目を覚させ、闇魔術をかける。

 ボーッとした表情になり、魔術がかかったことがわかる。ホント催眠術みたいだ。

 ベンさんが、残りの学生会メンバーを連れて帰ってきた。一緒について来たマグノリア様は追い出されたけど。


「皆んなの様子は?」

「大丈夫だ。楽しそうに食事の準備をしているよ」

「そうか、良かった」


 リッキー殿下がホッとしたように言った後、表情が引き締まる。


「アルタイル王国第三王子リッキー・アルタイルの名の下に宣する!これからこの場で見聞きしたことは厳に秘密として他に漏らすことを禁ずる!守れぬものは立ち去れ!この命令を破った者は王家に叛逆する者とする!」

「はっ!」


 俺たちは全員片膝をついて頭を下げた。

 王家に叛逆、つまり死罪だ。

 俺は中の音が外に漏れないように、テント全体に防御壁を張った。

 早速ゴツッと音がした。マグノリア様だね。


「さて、彼らに話しを聞かせてもうらおうか」


 こうして聞き出した内容は驚くべきものだった。

 襲撃してきた五十人は全員が冒険者に扮した、オプティマス帝国の兵士だった。

 今回の件は、兵士たちが外から襲撃をしている隙に、護衛騎士がマリウス殿下を暗殺するというもので、それ自体は予想のとおりだった。その目的は、アルタイル王国内でマリウス殿下を暗殺することで、アルタイル王国とデネブ王国の関係を悪化させ、軍事同盟結ばせないこと、また帝国がデネブ王国に侵攻した際に、アルタイル王国からの援軍の派遣を防ぐことにあった。彼我の差はわからないが、アルタイル王国は屈強で知られているからね。

 そして、暗殺を図った騎士は、なんと祖父の代からの帝国のスパイだった!

 この家では祖父が武功をあげて叙爵されて以降忠義に励み、本人は近衛騎士に抜擢されるまでの信用を築いていた。このような家は他にも数家あり、デネブ王国の中では帝国に対して服従すべきなどの不戦路線を主張するなどの工作を行っているという。すごいね帝国。武力侵攻のみならず、認知戦まで昔から仕掛けてきているんだ!これは我が国も危ないね。

 この話はデネブ王国の面々だけでなく、リッキー殿下を始めとする俺たちアルタイル王国の人間をも震撼させた。

 こうなると、他のデネブ王国の人間も調べないわけにはいかないが、これは闇魔術に頼るまでもない。スパイかどうか返事をさせ、トーダに判定してもらった。幸いなことに、他には帝国のスパイはいなかった。俺が問題ないと言ったら、皆んな不思議そうな顔をしていたけど。


 マリウス殿下は、今回の件をしきりに謝っていたが、別に謝る必要はない。それよりも、至急本国にこの件を知らせる必要がある。国内のスパイの家も判明したしね。そのためには、今回の留学に同行したデネブ王国の人たちについても、スパイか否かを調べなければならない。リッキー殿下に「頼むよ」とニッコリ笑って言われた。


 捕まえた三人に、アルタイル王国に関する帝国の工作についても聞いてみたが、残念ながらまったく情報はなかった。また、マリウス殿下に対する二の矢、三の矢の計画もなかった。これでマリウス殿下には、ひとまず安心して留学生活送ってもらえる。起こった出来事はショックだったかもしれないが、結果的には事前に帝国の工作を潰せる情報が得られたのだ。むしろ良かったよね。

 リッキー殿下も同じことを言ってマリウス殿下を励ましていた。

 あ、またテントの外でゴツッと音がした。マグノリア様も懲りないね。


 この後、2日目の森の探索実習は何事もなく終えて、2泊3日の野外実習は終了した。

 なんだか気分転換をしたい気分だったので、2日目の夕食には特別にランペイジブルの肉を提供して、1年生からの絶大な人気を得ることになった。俺のモテ期は近い気がする。

 ケビンやイアンからは、賄賂だ賄賂だと非難された。文句あるなら食うな!


 王都に帰ってから、学生会の男子メンバーは、エンシスさんとガーナさんと一緒に、打ち上げを行い、また例の『いい店』に行ってしまった。今日は屋敷には戻らない。寮に帰るから安心と思ってはしゃぎ過ぎたのがいけなかった。

 寮に帰り、俺がトイレに行っている間に皆んなは部屋に戻ってしまった。

 俺が一人で部屋に戻ろうとロビーを歩いていると、シルビアちゃん含む女子数人とバッタリ会ってしまい、「不潔です!」と罵られてしまった。この情報はすぐに女子の間で拡散されると推測される。俺のモテ期が去って行った・・・。




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