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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
161/180

第161話 壊滅

「3階は?」

「全部で30人くらい。ホールでお待ちのようだよ」

「じゃあ待たせちゃ悪いな。行こうか」


 俺たちが3階に上がるといきなりファイヤボールが飛んで来た。遅いけど。

 片手ででポンと払ってやる。


「何もんだ?」

「何回も同じこと聞くなよ。通りすがりの一般人だって言ってるだろう」

「舐めてるのか?」

「舐めたら腹壊しそうな面なんか舐めないよ」

「テメェ・・・」

「御託はいいから早くかかって来い」

「テメェら死んだぞ。俺たちゃ全員元Aランク冒険者だ」

「そうか。そりゃ怖いな」


 俺はそう言って、俺の右前に刀を振り下ろした。

 首と胴が離れた身体がドサッと目の前に落ちた。


「なっ・・・!」

「今ので姿消したつもりか?空間が歪んで見え見えだぞ」


 真司の下位互換の光魔術だ。下手すぎだろう。


「俺がやる」


 そう言って出てきた男は鎖鎌を持っていた。

 へえ、こんな武器もあるのか。

 男は鎖に繋がれた分銅をブンブンと回し始めた。

 まともに相手にするのも馬鹿らしい。

 俺は魔弾でソイツの頭を吹き飛ばした。


「もう見せ物はお終いか?」


 敵は声を失くす。コイツらが幹部なのか?ひどいな。


「せ、先生を連れて来い!」


 一人がすぐ側の部屋に駆け込む。


「先生連れて来いって、なんか日本の古い映画みたいっすね。笑えるっす」

「確かに。それでお笑い枠でも出て来るのかね?」


 おっ、えらくデカい男が出てきたぞ。


「テメェら!先生は元近衛騎士団の隊長だ!今度こそ死んだぞ!」

「何だと」


 コーザさんの目がギラリと光った。それは聞き捨てならない。カタリか、それとも本物か。


「おい、わざわざ俺を引っ張り出すほどの相手なのか?」


 大男が余裕綽々の態度で登場だ。これはネタ枠だな。


「ピントか!」


 コーザさんが声を上げる。

 え?本当に近衛なの?弱そうだけど。

 コーザさんの声に反応して、大男が訝しげにこちらを見る。そして、途端にガタガタと震え出した。


「コ、コーザさん・・・なんで・・・」

「ピント、貴様ここまで落ちぶれたか!」

「あ、あ、いや・・・」


 粛清された近衛の一人か。それが裏組織の用心棒とは。

 敵さんたちはわけがわからずに動揺している。そりゃ用心棒の先生がガタガタ震えてるんだもんね。


「かかって来い。せめて俺が引導を渡してやる」

「い、いや、それは」

「剣を抜けー!!!」


 コーザさんの威圧を込めた大音声が轟いた!

 男たちの何人かが泡を吹いて倒れた。

 立っている者も顔面蒼白だ。

 さすが元五剣。ものすごい威圧だ。

 ピントと呼ばれた大男は膝がガクガクで立っているのがやっとだ。


「剣を抜く気迫も無しか。仕方ない。せめて騎士として死なせてやろうと思ったが」


 コーザさんはそう言うと、スッと前に進み大剣を軽く振った。

 ゴトリ、と大男の頭が床に落ち、立ったままの身体の首元から噴水のように血が噴き上がった。

 ヒッ!

 男たちの口から小さく悲鳴が漏れる。

 コイツらすでに戦意喪失だ。

 いたぶるのも趣味じゃない。さっさと片付けよう。エドと真司にアイコンタクトすると、俺たちは男どもの方に進み、全員を始末した。

 残るは奥の部屋にいる一人か。


 俺たちは最後の部屋のドアを開け、中に入る。

 部屋の中には一人の男がソファの椅子に腰掛け、足を組んでこちらを見ていた。

 白い短髪に、揉み上げから口の周りに白い髭。右目に切り傷がある渋目の50歳くらいの男。

 体格はがっしりしており、白に紺のストライプの入ったスーツを着ている。

 へえ、さすがに数百人の悪党をまとめるだけの貫禄はあるかな。


「カノッサか?」


 俺は男に声をかける。


「ああ。こりゃまた随分どえらいのを呼び込んじまったな。一体どこで龍の尻尾を踏んじまったんだか。お前たち、どの筋か教えてくれるか?」

「知る必要があるのか?」

「どうせ殺すんだろう?あの世への土産ってもんだ」

「どうだろうな。お前が洗いざらいこれまでのことを話せば別の道もあるかもしれんぞ」

「そりゃ無理な話しだ。こんな商売だが客の秘密だけは守るのが自慢だ」

「お前の意思に関係なく話させることもできるんだけどな」

「それは勘弁願いてえな。せめて男で死なせてくれや。で?」

「ランカスターだ」

「ランカスター・・・。ガキの誘拐か・・・。アレは脅しだろう?」

「三人死んだ。それに子供の手首を切って送りつけてきた」

「何だと!?聞いてねえ・・・。チッ、そうか、直接話ししやがったな」

「どうやら認識が違ったようだな。だがもう遅い」

「わかってるよ。どっちにしろ俺の不始末だ。しかし、ガキの誘拐でウチは全滅か。しくじったな。ランカスターと聞いてちょっと嫌な予感がしたんだが。俺も衰えたということか」

「スタンリーに嵌められただけだろう」

「カカカ、どうだろうな」

「ああ、書類は全部もらって行くぞ」

「好きにしな」

「そこの壁の中のやつもな」

「・・・お見通しかよ」


 カノッサがゆっくり立ち上がった。


「さて、謎も解けた。あとは俺を殺すお前たちの素性を知りてえんだが、教えてもらえるかい?」

「ユーキ・シェフィールドだ」

「・・・王国の英雄様かい。カカカ、こりゃついてるぜ。そんな大物に狙われるとはよ」

「あとはいいだろう。俺が引導を渡してやる」

「ああ。抵抗していいかい?」

「好きにしろ」


 カノッサが剣を抜き、正眼に構えて威圧を放ってきた。


「毛ほども通じねえか。これでも元はAの上級だぜ」

「悪いな。Sだ」

「随分とデケェ差だな。行くぜ!」


 カノッサが上段から剣を振り下ろす。どうやらコイツが一番強かったらしい。しかし、所詮裏の連中の中ではというだけだ。

 俺はカノッサの剣を軽く見切って、一刀で首を刎ねた。

 カノッサの顔が笑っていた。


 カノッサを倒した後、俺たちはせっせと各部屋を回って、建物にある一切合切を回収して回った。カノッサの部屋の壁は隠し部屋に通じており、中には依頼に関わる種類や、大型の金庫が納められていた。

 1階の奥に隠れていたのはこの屋敷の使用人たちで、無理矢理働かされていたようなので全員解放した。

 地下には何と獣人の子供たちが15人も閉じ込められていた。

 これは結局王城に報告せざるを得なくなってしまったよ。隠れてやるつもりだったのに。

 衛兵本部の心証悪いだろうな。

 屋敷の外に出ると、逃げ出した女たちが塀の外に出られずに、絶望の表情で座り込んでいた。

 一人一人カノッサの構成員かを問い正し、トーダに判定してもらったが、どうやら全員が外から呼ばれて来た商売の女たちだった。

 助かった。やはり女性に手をかけるのはどうしても躊躇われる。

 俺たちの顔は割れるが今更だ。土魔術の壁を消して、使用人たちと一緒に全員解放した。


 はあ、終わった。

 もう午前1時だ。さっさと帰ろう。

 俺たちはセントラル広場の待ち合わせ場所まで行き、馬車と合流してランカスターの屋敷に帰った。そう、獣人の子供十五人というおまけ付きで。

 屋敷に戻ってからは大忙しだった。

 まず獣人の子供に関しては、メイドさんを起こして風呂に入れてもらい、衛兵本部に連絡して引き取りに来てもらった。衛兵本部ではこの後親探しだ。獣人の子供を発見した経緯については、正直に言うしかなかった。この世界では、貴族による自力救済および不正な侵害に対する報復は法的に認められているので、俺たちが罪に問われることはない。ただ、カノッサファミリーという大物の捕物なので、衛兵本部としては1枚噛みたかったというのが本音だろう。

 それから、カノッサファミリーの拠点から回収した物の整理、引き渡しに時間を取られた。

 このうちの書類関係については、過去の事件や貴族の繋がりなどの解明に有効なので、衛兵本部には大変喜ばれた。これでチャラにしてね。

 放置した死体の始末は衛兵本部にお願いすることになった。すみません・・・。

 こんなことになるなら、最初から衛兵本部と一緒に動けば良かったよ。ただ内通者がいるかもしれないからね。結果的にはこれで良かったと思い込もう。


 結局俺は徹夜して学院に戻った。

 元の世界でも3日くらいの徹夜はザラだったので平気だと思っていたら、これが意外に眠くて眠くて仕方がない。身体が16歳になっているせいなのかな?

 授業中に居眠りをしかけて、先生に怒られ、クラスメイトに笑われた。

 この日は授業が終わると速攻で寮に帰り、食事も取らずに爆睡した。長い1日だった。




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