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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第156話 ソウルフード

「真司、何か作れる?」

「作れないっす。俺コンビニ派っすから」


 俺と真司は昨日ついに調達した米を前に、何をオカズに作るべきか朝から悩んでいた。

 感謝祭の翌日、今日は土曜日だが学院は休みだ。


「とりあえずご飯が食べたいから、ご飯と味噌汁と海苔でいいか」

「おお、ザ・朝飯!って感じっすね」


 米を炊くのは研修所の訓練でもやってきたから大丈夫だ。

 鉄のインゴッドから急遽作った鉄釜でせっせとご飯を炊く。

 味噌汁の具は、大根とニンジンを千切りにしてブチ込む。

 男料理だ。とにかく早く米が食いたい。

 なぜだろう。元の世界にいたときはそれほど米に執着はなかったのに。


 お米の炊ける匂いと、味噌汁の匂いが漂ってきた。


「雄輝さん!ヤバいっす!何年振りのご飯だろう!」

「まあ待て。焦るな」


 そういう俺も我慢の限界だ。

 そろそろかな。

 俺はお釜の蓋を震える手でそっと開ける。

 おお、素晴らしい!白銀に輝く米の粒が見事にその存在を主張している。

 あ、茶碗とお箸がない・・・。


「雄輝さん!完成っすか!?」

「完成だ!しかし茶碗と箸がない」

「そんなの後でいいっす!早く食いましょうよ!」

「そうだな、よし食おう!」


 仕方ないので、スープ用のカップにご飯と味噌汁をよそう。

 小皿に醤油を垂らして切った海苔を添える。

 ドキドキだ。


「いただきます!」


 両手を合わせて唱和し、スプーンでご飯を一すくい口に運ぶ。


「美味ーい!」


 米だ!白米だ!ご飯だ!

 続けて味噌汁。鰹節で出汁を取ったが・・・。


「美味ーい!」


 語彙力喪失。

 俺たちは夢中でご飯と味噌汁を掻き込んだ。

 醤油をつけた海苔。絶品だった!

 いつの間にか目元に滲んだ涙。

 そんなことにも構わず、俺たちは夢中で食べ続けた。


「雄輝さん、俺生きてて良かったっす!」

「俺もだ、真司!」


 俺たちはご飯一粒、味噌汁の一滴も残さず完食して、椅子にもたれて幸せを噛みしめていた。


「雄輝さん、カツ丼食いたいっす」

「牛丼も」

「親子丼」

「鰻丼」

「天丼」

「お前作れるか?」

「言ったじゃないっすか、俺コンビニ派っす」

「調味料も色々足りないと思うぞ」

「なんちゃってで行きましょう!」


 はあ、こんなことならもっと料理勉強しとけば良かったよ。

 料理スキルのない男二人は、とりあえず午前中ひたすらストックのためにご飯と味噌汁を作り続けた。

 そうだ、おにぎり作っておこう!レーナちゃんにも食べさせたいしね。



「雄輝さん、昼飯どうするんすか?」

「ラクレットチーズが手に入ったんだ。せっかくだから使いたいよな」


 朝飯に満足した俺と真司は、俺の部屋でまったりしながら、もう昼食の話しをしている。

 ケイトさんとアニカさんはまだ冷たい。視線が・・・。

 シャトルはスライムを頭に乗せて、無邪気に走り回っている。

 スライムもシャトルの頭の上で楽しそうに跳ねている。

 なんか可愛いな。


 (ユーキ、スライムに名前つけたりいな)

 (あ、トーダ、起きたの?)

 (今起きた)

 (残念!さっきお米炊いて味噌汁と食べたんだけど、食べたい?)

 (米!米あるんか!?今食う!はよ出さんかい!)

 (わかった、わかった。おにぎりでいい?)

 (ええで!おにぎり好物や!)


 俺はストレージから海苔を巻いたおにぎりと、トーダ用のカップに入れた味噌汁を出してやる。


 (おにぎりやー!!)


 トーダがおにぎりに飛びついて夢中で食べ始めた。

 この部屋にいる者はすでにトーダの存在を知っているので、誰も驚かない。


 さて、スライムに名前かぁ。呼んだら来るのかな?精霊って言ってたからある程度知性はあるのかもね。いずれにしてもペット枠だ。よし。


「シャトル、こっちにおいで」


 シャトルがダッシュで俺の元に来る。


 (なに、なに?ユーキ、なに?)

「スライムに名前つけようと思ってね」


 スライムがピョンと跳ねる。え?喜んでるのか?


 (名前?名前?なに?名前なに?)


 シャトルも喜んでるね。


「スライム君。君の名前はライムだ!」


 スライムがピカッと光った!ルクスのときと同じだ。これはテイム?絆?

 スライムが俺に飛びついて来て跳ね回っている。

 嬉しいという感情が伝わって来た。やはり繋がりができたみたいだ。

 あっという間におにぎりと味噌汁を食べ終わったトーダが戻って来た。


 (美味かったー!久しぶりや!涙出たわ!)

 (そうだよね。俺、2年振りでも涙出たもん)

 (ワイ、何年振りやろ?)

 (さあ?それでスライムに名前つけたよ。ライム)

 (ライム?ス抜いただけかい!まあええわ。ライムやな、こっち来てみ)


 ライムがピョンとトーダの前に跳ねて来た。


 (よっしゃ、ええ子や。ええか?今日からワイらは家族や。ワイがトーダ。一番偉い。ほんでコイツがユーキ。そこのがシャトル。あとルクスいう天馬がおるけん、あとで紹介しちゃる)


 ライムがピョンと跳ねる。わかったっていう感じかな。

 スマートボールが跳ねてるみたいだ。やっぱりペット枠だね。


「雄輝さん、スライムに名前つけたんすか?ライムってスを抜いただけっすね」


 真司がトーダと同じことを言いやがる。名付けって難しいんだぞ。


「俺も子供の頃ミミズに名前つけたっす。でも、すぐにどのミミズか見分けがつかなくなったっす」


 コイツ馬鹿なのかもしれない・・・。

 いや、でもスライムの群れの中にライムがいたら見分けがつかないかもしれない。俺も馬鹿なのか・・・?


「それより昼飯っす!チーズ使って何にするんすか?」

「チーズフォンデュにしようと思う」

「よっしゃ!俺大好きっす!」

「ケイトさんとアニカさんも一緒に食べよう。皆んなで一緒に食べる料理なんだ」


 二人の表情が少し緩んだ。もう一息だな。

 ケイトさんに、厨房でニンジン、アスパラ、ブロッコリー、角切りにしたジャガイモ、それにソーセージを多めに茹でてもらうようお願いする。あと固めのパンを焼いてもらう。余ったらストレージ行きだ。

 その間に俺は鍋と串を作ろう。銅製でいいかな?

 ストレージから銅のインゴットを取り出して、鍋の形にしていく。

 串は今後のために10本ほど作っておく。

 最近は金魔術にも随分慣れたので、このくらいは朝飯前だ。さっき朝飯食べたけど。

 卓上魔導コンロを出して銅鍋を乗せ、そこにラクレットチーズをせっせと削っていく。

 どうしよう。具材が来たらすぐ食べられるように煮込んでおくか。

 確か白ワインと一緒に煮込むんだっけ?

 どのくらい入れるの?適当でいいや。

 俺がドバドバと白ワインを入れていると、真司が「雄輝さん、適当に入れてるっしょ!」と言って来た。


「うるさい!文句あるなら食うな!」

「食うっす!」


 魔導コンロに火をつける。

 ラクレットチーズなのですぐに溶けてくる。

 うわぁ、チーズのいい香り!

 すぐにグツグツと沸騰し出すが、意外とチーズが少ないな。

 追加投入だ。せっせとチーズを削り続ける。

 よし、こんなもんか。


「わぁ!いい香り!もう食べてるんですか?」


 戻って来たケイトさんが歓声を上げる。


「いや、まだ準備だけ」

「お野菜茹でるだけだからすぐ出来るそうですよ。固いパンも作り置きがあるそうです」

「そう、ありがとう」


 チーズが溶けたので、一旦火を止める。


「これもニホンの料理なんですか?」

「いや、日本でも食べられたけど、元々は別の国の料理だね」

「なんだかニホンってユーキ様の話しを聞いてると、美味しいものが一杯ありそう」

「俺がもっと料理できれば良かったんだけど、俺も真司もからっきしだからね」


 アニカさんにも俺たちが日本から転移して来たことは打ち明けてある。どうせランカスターの使用人はほとんどが知ってるし、シェフィールド家でも知ってるからね。

 四人で日本の話しをして盛り上がっていると、厨房から具材が届いた。


「どうしよう。まだ11時で少し早いけど」

「今食うっす!」


 真司の一言で、すぐに食べることに決定した。


 改めて卓上魔導コンロに火をつける。

 見本を見せて、ケイトさんとアニカさんに、パンを適当なサイズにカットしてもらう。

 俺は茹でたジャガイモをカットする。

 真司は野菜やソーセージを各自の皿に分配する。


 鍋のチーズがグツグツと言い出したところで火を弱める。

 よし!準備完了!


「お待たせいたしました、皆様。これよりチーズフォンデュ試食会を開催いたします!」


 パチパチパチ、と拍手が鳴る。


「では最初に僭越ながら私が見本を示させていただきます」

「ヨッ!鍋奉行!」


 うるさい真司!これ鍋か?


「このように串で好きな食材を刺して、鍋の中に入れると、あら不思議、チーズがたっぷりとつきます。これをパクリと、熱っ!美味っ!」


 熱っ!でもメチャクチャ美味いぞ!


「熱いので気をつけて、さあ、食べよう!」


 皆んなが一斉にチーズフォンデュを食べ出す。


「美味ーい!」

「美味しい!」

「こんなの初めて!」


 大好評のようで良かったよ。いや、このチーズ絶品だな。


 (ユーキ!ユーキ!ボクも!)


 シャトルが足にじゃれついてくる。

 わかってるよ。俺は冷ましたチーズがけのジャガイモもシャトルに食べさせる。


 (ユーキ!ユーキ!おいしい!)


 こうして四人と一匹でチーズフォンデュに夢中になっていたとき、コンコンとドアがノックされ、「入るわよ」の声とともにエリカお姉様とエミーちゃんが入って来た。

 マズイ!いや不味くないか・・・。別に何も悪いことしてるわけじゃなかった。


「あら、皆んなで何食べてるの?ケイトとアニカは今日までユーキに厳しくするんじゃなかったのかしら?」


 ケイトさんとアニカさんが苦笑している。


「まあいいわ。ところで、これは何かしら?」

「これはチーズフォンデュと言って、鍋で溶かしたチーズに食材をこうやってつけて食べるものです」

「チーズってこんなにトロトロになるの?」

「これは特殊なチーズでして、昨日感謝祭で見つけて買って来ました。お姉様とエミーちゃんもいかがですか?」

「いいの?じゃあいただこうかしら」


 エリカお姉様とエミーちゃんに銅の串を渡して、やり方を説明する。


「あら、すごく美味しいわ!」

「美味しい!」


 良かった。二人も気に入ってくれたようだ。


「これどんなチーズなの?」


 俺はストレージからラクレットチーズを取り出して見せる。


「初めて見るわね。他の料理はあるの?」

「そうですね、例えば」


 俺は、フライドポテトを皿に出し、ラクレットチーズを火魔術で炙って、溶けたチーズをフライドポテトにかける。


「どうぞ食べてみて下さい」


 差し出したフライドポテトのチーズがけをエリカお姉様が試食する。

 エリカお姉様の目が見開かれた。


「美味しい!」

「あとはピザとかにも向いてると思います」

「ピザ?」

「今度作ります」

「このチーズどこで売ってるのかしら?」

「普段は王都では売ってないみたいですよ。王都から西に三つ目の村で、感謝祭向けに村全体で作ったようです。売れなくて困っていたので、全部買い占めて来ました」

「良くやったわ!すぐに人を行かせてウチで独占的に購入しましょう」

「あ、はい。お任せします」


 それからエリカお姉様とエミーちゃんも一緒になって、チーズフォンデュ大会で盛り上がった。

 で、何しに来たんだ?



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