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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
150/180

第150話 ポテチとハンバーガー

 2年生、3年生の魔獣討伐実習も大過なく終わった。

 魔獣討伐実習が終わると次は学院祭の準備だ。学生会は、寮の行事を除き、すべての学院行事に関与するので妙に忙しい。


 学院祭は、王都の感謝祭が行われる三日間のうち二日間開催される。最終日は学院生も王都に出て感謝祭を楽しむ。学院祭では、すべてのクラブが日頃の成果発表をする他、参加希望の任意のグループが露店や出し物を行う。主にクラス単位で参加することが通常だ。一般人の来客もかなり多いそうだ。王都の街は感謝祭で盛り上げっており、その主要なイベントの一つが学院祭なのだ。だから、学生の多くは、一度くらいは学院祭を見にきたことがあるらしい。見たことないのは、田舎の領から出たことがないヤツと俺くらいだ。


 学生会は、すべての参加希望をチェックし、修正させ、場所やスケジュールを決定しなければならない。まあ、クラブの分は例年通りということで済むそうだが。


 学生会独自の出し物は、バザーがある。学生の家から不要になった家財などを寄付してもらい販売する。貴族家の寄付なので高級品がほとんどだ。それが格安で買えるということで、王都民には大人気の企画で、朝一番からお客さんが殺到するそうだ。

 普通の高校にも通ったことがなく、大学の学祭にも参加しとことのない俺にとっては、ちょっと楽しみな行事だ。


 各クラスからは実行委員を出してもらって、学院祭の運営に協力してもらう。


「ケビンは学院祭来たことあるの?」

「俺はないよ。知ってるだろう、俺の扱い」

「それはすまんかった」


 俺とケビンは料理実習の授業中だ。今日の課題はお菓子。

 前に真司が持っていたポテチを食べたときに、今度作ろうと思っていたのを思い出して、ケビンと一緒に作成中だ。

 俺のアイデアを聞いたケビンは、ジャガイモを揚げただけでお菓子になるの?と懐疑的だったが、他にアイデアもないので俺に協力中だ。

 二人でせっせとジャガイモの皮を剥いて、薄切りにする。

 そして油で揚げるだけ。これでいいんだよね?


 ジューッとポテトの上がる音がして、良い香りが漂う。

 うん、なんか出来そうだ。


「ユーチン!ビンちゃん!何作ってんの!?」


 音と匂いに釣られたレーナちゃんが駆けて来た。

 おい、料理実習室で走るな!危ないだろう!


「ジャガイモの薄切りを揚げてるだけ」

「それどうすんの?」

「塩振って食う!」

「ポテチじゃん!」

「ポテチ?何それ?」

「元の世界のお菓子!食べさせて!ねえ、食べさせて!」

「わかったからちょっと待ってろ」


 良い感じの色になったところで、ポテトを取り出して皿に乗せ、塩を満遍なく降り注ぐ。

 なんちゃってポテチの完成だ!

 あっ、いきなりレーナちゃんが食いやがった!


「ウマーッ!美味しいよ、ユーチン!久しぶりの味だぁ!」


 そうか、そうか。よし、俺も1枚。

 おお、市販品のレベルとはいかないが、素朴で美味い!

 ケビンも1枚食べて、「美味い!」と叫んだ。

 こっそり頭の上のトーダに渡したら、トーダも絶叫している。


 俺たちの騒ぎに、女子たちはおろか、先生まで集まってきた。

 あっという間に俺のポテチがなくなった・・・。

 もちろん大好評。

 そこからは急遽予定を変更して、全員でポテチを作ることになった。

 どうすんだよ、そんな大量に作って。

 なので俺はこっそりフライドポテトに挑戦だ。


「おい、ケビン。俺たち違うの作るぞ」

「えぇ?さっきの美味いじゃないか」

「いいんだよ。皆んなが作ってるから。さあ、今度はこんな感じで切って!」


 俺とケビンはせっせとフライドポテトを作る。俺の好きな細切りだ。

 よっしゃ!簡単に出来た!

 また塩を振ってと。


「美味い!これも美味いよ!」


 そうだろう、そうだろう。

 俺も実食。美味い!


「アーっ!ユーチン何食べてんだよ!」


 レーナセンサーに感知された!


「フライドポテトじゃん!もーらいっ!熱っ!オイヒー!」


 そして女子大集合が再現される。

 先生は、「ジャガイモは何て奥が深いの!」と遠くを見ている。

 そうだ、今度はマヨネーズ作ってポテトサラダを作ろう!


 この日俺は大量のポテチとフライドポテトを作り、ストレージにストックした。

 先生は、このポテチとフライドポテトをレシピ登録しておいてくれるらしい。作り方が簡単だから真似されるわよ、と言っていた。いや、真似されてもいいのだが、こういうものは、真似した人間が登録して、逆に発明者が使えなくなったり、登録者が法外なライセンス料を要求して普及できなくなることもある。なので、先生の言葉に甘えて任せることにした。


 レーナちゃんは、俺の前世が日本人に違いないと息巻いていた。

 そして、このクラスで学院祭でハンバーガー屋さんをやろうと言い出した。

 高校生になったらハンバーガーショップでバイトしたかったそうだ。

「やっと夢が叶うよー」とか言われると拒否できないよね。

 結局レーナちゃんの勢いに押されて、次回の料理実習はハンバーガーを試作することになった。

 ちなみにレーナちゃんはハンバーガーの作り方を一切知らない・・・。


 結局、俺は週末新しい屋敷に帰り、タブレットに入っている情報からハンバーガーの作り方や、マヨネーズの作り方を調べて、ひたすら厨房にこもることになった。

 幸いなことに、屋敷の料理人やケイトさん、アニカさん、エミーちゃんが手伝ってくれた。

 エドと真司は強制参加だ。

 この世界にはハンバーグはあるし、丸いパンもある。ケチャップもあるし、何とかなるかと思っていたが、実際に作ってみるとコレじゃない感が強い。

 バンズの大きさも工夫し、パテの味や大きさに悩み、レタスやトマトや玉ねぎを挟み、チーズやベーコンを乗せ、皆んなで品評会だ。

 マヨネーズは撹拌が面倒くさかったので魔術ですませた。卵の浄化は光魔術の殺菌でできた。これなら俺じゃなくてもできる。

 最終的に選ばれたのはベーコンチーズバーガー!

 これにフライドポテトを合わせて皆んなで食べていると、エリカお姉様が現れた。


「あら、皆んなこんな所で何してるの?」

「学院祭で出す料理の試作です」

「シルビアは?」

「これAクラスじゃなくて、料理実習のクラスの出し物なんです」

「あなた料理実習なんてとってるの?」

「はい、面白そうだったので」

「変わってるわね。まあいいわ。私にも一ついいかしら?」

「はい、もちろん」


 俺はベーコンチーズバーガーとポテトをお皿に乗せて、ナイフとフォークを添えてエリカお姉様に恭しく差し出す。さすがに貴婦人がかぶりつくわけにはいかなよね。売るときどうしよう?

 バンズは食べやすいように、元の世界のものに比べて少し薄めにしている。


「あら美味しいわね」


 そう言ってエリカお姉様は黙々と食べ続ける。


「このレタスについているソースは何かしら?」

「新しく作ったソースです。マヨネーズと言います」

「これ、誰でも作れるの?」

「生卵の殺菌に光魔術を使いますが、あとは誰でも作れます」

「じゃあ後でレシピを出しなさい。登録してランカスターで売りに出しましょう。プリンもランカスターでは大人気で、間もなく王都にもお店を出すわよ」


 え?いつの間にそんなことになってたんだ?まあいいけど。


 エリカお姉様はフライドポテトとポテトチップスも気に入ったようだ。

 このレシピは学院の先生が出してくれることになっていると言ったら、残念そうにしていた。

 ハンバーガーのレシピも出してもらおう。いずれも防衛的な登録だ。


 エリカお姉様は、綺麗に平らげると、料理人に後でランカスターの屋敷に教えに来なさい、と言って、ご機嫌で去って行った。


「雄輝さん、エリカ様ってすげぇ美人だけど、なんか逆らっちゃいけない雰囲気あるっすね・・・」

「そうだ。絶対逆らうなよ」


 真司の直感は正しい。

 あと、コーラが欲しい。無理だけど。


 次の料理実習で、ベーコンチーズバーガーを披露したら、女子たちに大好評で、学院祭で販売することが決定してしまった。レーナちゃんには泣いて喜ばれた。

 レーナちゃんは、ミニスカのメイド服で販売しようと言って、全員から却下された。TPOを考えろよ。

 飲み物はこの世界にもある炭酸飲料とエール。クラスに大手の商家の子がいたので、その子が担当することになった。

 場所は屋外にガーデンテーブルとガーデンチェアを置いて、基本的にはナイフとフォークで食べる形式だ。

 手持ちでかぶり付いても平気な人向けに、テイクアウトも対応する。


 ハンバーガーとポテトは作り置きで、俺のストレージに入れて置くという案が出たが、俺とケビンは学生会だから、あんまり店に居られないよと言ったら、「裏切者!」と避難された。理不尽。

 結局、魔導コンロを持ち込んで、その場で作ることになった。当たり前だろうが!と叫びたいのを我慢した。魔導コンロは実習室のものを持ち出そうとしていたが、俺が用意することにした。ちょうど欲しかったからね。これで外でも簡単なものなら作れるようになる。

 それからは、先生も参加して、担当決めや、店のレイアウト、看板、テイクアウト用の紙パッケージなどを話し合い、大盛り上がりだった。俺とケビンは呆然とその光景を見つめていた。なるほど、高校の文化祭ってこんな感じなのね。間違ってる?


 Aクラスは、実行委員のシルビアちゃんを中心に話し合いが行われ、伝統的なメイド、執事喫茶を下して、ゾンビ迷路を行うことに決定した。これはグラウンドに作った大きな迷路を踏破するのだが、途中途中にゾンビが出現するという、迷路とお化け屋敷の合体版だ。俺たちからダンジョンの話しを聞いたイアンのアイデアだ。

 当日はあまり手伝えないので、迷路作りは協力しようと思う。


 こうして学院はすっかり学院祭モードに突入していった。

 警備体制は、第二騎士団のカインさんが申し出てくれて、通常の警備に加え、第二騎士団と衛兵本部から協力が得られることになった。前の演武会の事件があったのだから、一般入場を制限するのかと思いきや、あのような事件に屈して学院祭が制限されるのは王国の名折れだということらしい。なるほど、テロには屈しないということだね。



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