第147話 報酬
かなり飛ばして帰り、王都に到着したのは午後6時ころだった。
ガーナさんとはここで別れた。今度一緒に飲みに行く約束をして。斥候と言ってたけど、結構な腕前だったな。
そのまま王城に入り、リッキー殿下、カインさん、エンシスさん、エドと俺で陛下に報告に行った。
陛下の横にはジェームス様が控えていた。もう宰相じゃね?
リッキー殿下が、かなり微に入り細に入り報告をする。
挙句の果てには、ユーキが死んでしまうのではないかと心配になった、などと言うものだから、陛下にまで無理をするなと言われてしまった。いや、ゲロしそうになるだけなんですけど。
「で、その黒い石とやらは持って来ているのか?」
「はい。私が」
そう言って、俺はストレージから穢れの石を取り出した。
おお!と声が漏れる。
いやぁ、改めて見ても禍々しいね。
「これです。穢れの石とでも言うのでしょうか」
「なるほど。穢れの石か。言い得て妙だな。お前は手で持っていて大丈夫なのか?」
「はい。一応魔力で覆っていますので。ただ、どんな影響があるかわからないので、仕舞っておきます」
俺はそう言って、穢れの石をストレージに収納した。
次に俺はスマホを出して、池の写真を見せる。
「これが最初の池の状態です」
写真を見た皆んなから驚きの声が上がる。
「これは一体何だ?ユーキ君!」
エンシスさんが俺の肩を掴んで問い詰める。
どうだ、驚いただろう!
「ダンジョンで見つけたアーティファクトです」
「ダンジョン!」
「その場の光景を忠実に絵に切り取る道具ですね」
「すごい!」
無視、無視。
「そしてこれが浄化後です」
「おお、美しい池だ!」
「本当にそのままの景色なんだな・・・」
これで一応報告は終わった。
今後の方針として、まず穢れの石の保管用として、鉛の箱を作ってもらう。
そして、穢れの石や、倒した魔獣はすべて王立総合研究所に引き渡し、瘴気の研究を行ってもらうこととなった。
今日行った森に関しては、当面ギルドで立ち入り禁止とし、第二騎士団とギルド選抜メンバーで魔獣の掃討を行うこととした。まだ、瘴気に侵された魔獣は大量にいるからね。
また、俺の進言で、王都周辺の水源については、第一騎士団で巡回調査を行うことにした。
王都は井戸もあるが、水道もある。その水源が侵された場合は大問題だ。
報告が終わったので帰ろうと思ったら、また引き止められてエドも一緒に食事をしていくことになった。
昨日のダイニングテーブルに座っていると、何とマックス殿下がニコニコ顔で入ってきた。
「殿下!」
「やあ、今日も活躍だったみたいだね」
「そんなことよりお身体の具合は!?」
「それが不思議なものですっかり良くなった。これも君のおかげだ。改めて礼を言う」
「もったいないお言葉です」
「あとは寝たきりだったせいで落ちた体力さえ回復すれば元通りだ。おや、エドじゃないか!久しぶりだな!」
「ご無沙汰しております、殿下。お身体回復されたようで心よりお喜び申し上げます」
「随分堅苦しいな。君もたまには顔を見せてくれ。君やユーキには、できればリッキーと共に私を支えて欲しいのだがな」
「ありがとうございます」
「今日は私も同席させてもらうよ」
そうか。瘴気は抜けてさえしまえば、すぐに回復するんだな。
瘴気に関してはわからないことだらけだ。少しづつ検証を重ねて行くしかない。
夕食はランペイジブルのステーキだった。やはり美味い!
2食続けてランペイジブル!幸せだ!
食後にソファに移り、コーヒーを飲みながら昨日の顛末を聞く。
予想どおり、実行犯の二人は家族を人質に取られて脅迫されていたようだ。それでも、第一王子暗殺未遂だ。可哀想だが軽い罪では済まされない。
二人に指示したのは、内廷局という宮内庁のような組織の文官で、やはりスタンリー公爵家派閥の子爵家の人間だった。これも予想されたことだが、死体で発見された。
大神殿については、現在調査依頼、というか脅し?をかけて調査結果待ちらしい。
また死体が一つ増えそうだな。
スタンリーの影は見えているが、決定的な証拠が中々見つからない。じれったいね。
話しが終わり、帰ろうとしたとき、陛下から1枚の紙と鍵を渡された。
「陛下、これは?」
「マックスの治療代だ」
「建物の登記簿のようですが」
「そうだな。名義を見てみろ」
見るとそこには俺の名前が書いてあった。
「これは一体・・・」
「お前の屋敷だ。自分で住むなり、パーティハウスにするなり、好きにせよ」
「そんな!これでは過大過ぎます」
「お前が爵位も金もいらんと言うから仕方なかろう。それより、お前のパーティにはコーザもいるだろう。コーザもそこに住まわせよ」
ああ、なるほど。コーザさんのことまで考えていただけたのか!
「ユーキ、その屋敷の場所、わかるかい?」
ジェームス様がニヤニヤしながら俺を見る。
登記簿の住所を見てみると、見覚えのある場所だった。
「これって」
「うん、うちの隣だね。今日、境界の壁は取り払ってると思うよ。帰りに確認してくれ」
なんと、そういうことか。
俺は陛下に深々とお辞儀をした。
「陛下。お心遣いありがとうございます。謹んで頂戴いたします」
「よい。まだまだお前には借りが多い。早く返さんと眠りが浅くて敵わんわ」
ワハハ、と明るく笑う陛下。マックス殿下が回復して、一つ憂いが払えたのだろう。
とりあえず良かったな。
俺はエドと一緒に王城を後にした。
ランカスターの屋敷に着くと、いつもは人の気配がしなかった隣の屋敷に灯りがついており、何だか賑やかだ。
恐る恐るエドと覗きに行くと、ちょうどアニカさんが玄関の掃除をしていた。
「あっ、ユーキ様!お帰りなさいませ!」
アニカさんの声に、中からドヤドヤと人が出てきた。
え?エリカお姉様、エミーちゃん、ケイトさんに、顔見知りのランカスターの使用人たちだ。
「あら、ユーキにエドじゃない。何してるの、早く入りなさい!」
エリカお姉様に促されて、俺とエドはコソコソと屋敷に入った。
どうやら、エリカお姉様の指揮で、屋敷の大掃除中だったようだ。
なんか結構豪華な屋敷だな。こんなのもらっていいのかな?
シャトルが大喜びで走り回っている。
「ユーキお兄様!エドお兄様!こっちに来て!」
エミーちゃんに手を引かれて2階に上がる。シャトルももちろんついてくる。
「ここ!ここがエミーの部屋よ!」
エミーちゃんが扉を開けて何もない部屋を紹介する。エミーちゃんの部屋もあるのか?
隣の部屋がエリカお姉様の部屋らしい。
ここ、誰の屋敷かな?
さらに奥に進むと、俺の部屋とエドの部屋が隣合わせであった。
エドと顔を見合わせる。
俺たちに決定権はないようだ。
でもエミーちゃんが楽しそうだからいいか!
それからもエミーちゃんに屋敷の中を案内してもらう。ここエミーちゃんの屋敷でよくないか?
屋敷は、ランカスター家よりは小さいが、それでもかなり大きな屋敷だった。
エリカお姉様から、使用人は王家から数人派遣されて来ていることと、その他はランカスター家で鍛えたい人間を出すから心配するなと言われた。
屋敷の執事長は、今王都のランカスター家で家令の補佐をしているラックさんという青年がやってくれることになった。というか、そう決まっていた。
もう、全部エリカお姉様に任せよう!
俺は当面の資金として金貨1000枚をエリカお姉様に渡し、何もわからないので、屋敷の改装から家具の調達、その他必要品を揃える一切をお願いした。
「任せなさい!」というエリカお姉様、その横で満面の笑みのエミーちゃん、ケイトさん、アニカさんたち女性陣の圧が怖かった。なので、そっと、あと金貨500枚を追加しておいた。何が正解かわからん・・・。
学院の寮に戻った俺は、どっと疲れて風呂も入らずシャトルと一緒にそのまま寝てしまった。




