第14話 魔獣狩り
王都を主発して5日が経った。
毎日午後3時から午後5時くらいのうちには、街や村に入り、一泊して早朝に出発する。
その間俺とエドは、予定どおり騎士や兵士たちと行動を共にし、屋敷や教会の敷地などで野営をした。
ストレージは大活躍だった。
料理をせずに食べられる熱々の屋台の品々、デザートの菓子、テント付きのお風呂。
俺とエドだけベッドなのはクレームされた。
それでも普段とは違う野営の快適さに、「一家に一人、ユーキ君」などと言われる人気者になった。家電扱いすな!
今日は、ジェームス様とは同じ派閥の伯爵の領都の屋敷に宿泊する。
中休みのため、ここでは1日ゆっくり休んで二泊するらしい。
俺たちも、兵舎の空いている部屋を借りた。
久しぶりの室内で寛いでいると、カークさんがやってきた。
初めて魔装の格闘でボコボコにされた人だ。
「ユーキ。明日、朝から狩に行かんか?」
騎士や兵士たちとは、この旅ですっかり打ち解けて、呼び捨てになっていた。
「狩ですか?」
「この領の近くに手頃な森がある。スレイプニルたちの食糧が必要でね。明日俺たちで狩に行く。ユーキはまだ魔獣とか見たことないだろう?ちょうどいいかと思ってね」
「それはありがたいです。是非お願いします」
「では明日は朝6時に出発だ。装備を整えて兵舎の玄関に集合する。日帰りだから野営の準備はいらん、いや、お前はストレージに入ってたな」と、カークさんが笑う。
こうして俺は初めて魔獣と対峙することにになった。
翌朝、装備を整えて部屋を出る。
今日の装備は兵士に合わせて、隊の戦闘服に革の胸当て、革の手甲、グローブ、革のショートブーツだが、武器はこの世界に来て初めて自分の物を使ってみることにする。ククリ刀に軍用ナイフだ。左右の腰にそれぞれ装着している。
背には携帯食やロープ、獲物を収納するための麻袋、ポーションなどを入れた小振りのリュックも背負っている。ストレージはあるが、万が一ストレージが使えない場合の備えと、ストレージを持っていることをカモフラージュするためだ。
今日の人員はカークさんの小隊から5人と俺とエドの7人。
馬で森の近くまで行き、一人が馬番として残り、6人で森に入る予定だ。
「ユーキ、少しは緊張してる?」と、エドが聞いてきた。
「いや、楽しみではあるけど緊張はないな」
「君、本当に文官だったの?戦闘能力もだけど雰囲気が武官寄りだよね」
「馬鹿言うな。どう見ても上品な文官だろう」
などと、ふざけながら厩舎に行き、全員が騎乗して出発だ。
貴族門から出ると、そこそこ人や馬車が行き交っている。
他の馬車の馬を驚かせてもいけないので、しばらくはウォーク(常歩)で進む。
人や馬車がまばらになったところで、トロット(速歩)に変える。
30分ほど走ったところで街道からはずれ、草原の中のやや荒れた道を進む。
先にはすでに森が見えている。
久しぶりの乗馬は気持ちいい。
「速度を上げるぞ!」
カークさんの掛け声で、一斉にキャンター(駈歩)に移行。
俺を試しているのか?
大自然の中で馬を走らせる爽快感!
異世界の恩恵かな。
森に近づいたところでカークさんが停止を命じた。
全員が下馬すると、一人の隊員が土魔術で周囲を囲む柵と、桶を作った。
この中で馬を休ませるとのこと。
水魔術を使える隊員が、土の桶に水を入れて馬に飲ませる。
いや異世界すごいな!
一人の隊員を馬番として残し、6人で森に入る。
カーク隊長が、
「ユーキ、魔獣の気配は察知できるか?」と聞いてきた。
「はい。魔獣は初めてですが、多分大丈夫だと思います」
と答えると、
「この森は大して強い魔獣はいない。経験だ、ユーキが先頭で行け」
と、いきなり斥候をやらされることになった。
他のメンバーから10メートルほど先行して、気配を殺しながら森を進む。
気配察知を全開にする。
この世界にきて気配察知の力が格段に上がったような気がする。魔力の気配を察知しているようだ。何となく魔力が見える力とも関係しているのかな。自分は魔力を使えないのにね。
しばらく進むと100メートルほど右手前方に、何かの気配がする。
教わったハンドサインで、停止を指示し、右手前方を指し示す。
カーク隊長たちが音を立てずに側にきた。
「何かわかるか?」
「いえ、初めての気配なので何かまではわかりません」
「そうか。ジム、わかるか?」
「すみません。私にはまだ感知できません」
「実は俺もまだわからん。少し進んでみよう」
今度は全員が一緒に慎重に進む。
30メートルほど進んだところでジムが小さな声で言った。
「隊長、フォレストボアです。間違いなくいます」
「よし、このまま進むぞ」
更に50メートルほど進んだところでカーク隊長が停止の合図をし、右手で方向を指し示す。
木々の間からそっと見ると、イノシシが一生懸命に地面を掘っている。あれがフォレストボアか。
しかしでかくないか?カバくらいの大きさはあるぞ。
カーク隊長の指示でフォレストボアを囲むように散開する。
魔装を使えるものは魔装を纏う。
エドは自信がないのかそのままだ。
ショートボウを構えた隊員が、カーク隊長の指示で弓を放つ。
速い!あっという間に三射が放たれ、すべて命中した!
プギィ!という叫びをあげてフォレストボアが暴れ出す!
間をおかずまた弓が三射命中する。同時にフォレストボアの死角から二人の隊員が飛び出し、その首にひと太刀浴びせると、すかさず飛び下がった!
フォレストボアはその首から盛大に血飛沫を上げ、ドウ、と倒れた!
一瞬だ・・・フォレストボアの動きを観察する間もなく終了。
いやあ、強いな。何より魔装のスピードと威力がすごい。弓も魔装してたよね。
あれ、射程も伸びて威力も上がるの?
異世界侮りがたし!
俺、この世界ではもしかして弱者か?




