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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第137話 ダンジョンでのわびさび

 全員大満足の昼食を済ませ、溶岩地帯を渡る。

 天駆を使って、ある程度高さを保たないと、下からの熱が半端ない。

 魔装は運動能力を高めたり、表面の硬度を高めて防御力を増すが、熱を遮断するわけではない。なので、暑さも寒さもそのまま感じる。

 下を見ると、溶岩の流れの上を2メートルほどのアメンボウのような虫がスイスイ動いている。


「ペインさん、あれは?」

「名前はわからない。俺たちは溶岩虫と呼んでる。気をつけろよ。瞬間で飛びついてきて、そのまま燃やされるぞ」


 そう聞いた途端、6本足を広げて腹を見せた溶岩虫が、俺に張りつこうとするかのような格好で飛びかかって来た!速っ!怖っ!

 刀を抜く暇がない!咄嗟に出た正拳突きで吹き飛ばす!


「うわー!」


 声の方を見ると、エドが溶岩虫に抱きつかれていた。シュールな光景だ。

 コーザさんが瞬時にその溶岩虫を斬り落とした。


「ヒエー、気持ち悪い!」


 エドが心底嫌そうな声を上げる。

 その声に刺激されたわけではないだろうが、それからうじゃうじゃと湧いてきた溶岩虫が、次々と俺たちに飛びかかって来た。

 一度見れば対応はできる。それにしても飛びついてくる速度が速いな。転移かと思うほどだ。


「上も気をつけろよ。そろそろ来るぞ!」

「何がいるんですか?」

「火ツバメだ。これも俺たちが勝手につけた名前だけどな。ツバメくらいの大きさの小鳥だけど、怖ろしく速い。クチバシが高熱を帯びていて、魔装を破って突き刺さってくる。的が小さくて速いから斬りにくい。マギシールドを常時展開しておけ」

「わかりました」


 シャトルは大丈夫かな?トーダが防御してるから心配ないか。溶岩虫をぴょんぴょん避けてるし。ルクスを襲った溶岩虫は、ルクスに触れた瞬間弾き飛ばされている。あれどうやってるんだ?なんだかルクスの成長がすごいな。


「来るぞ!」


 ペインさんが叫ぶ!

 上空から無数の黒い点がこちらに向かってくる!

 全員がマギシールドを頭上に構える。


 ガキン、ガキン、ガキィン!

 拳銃の弾丸を思わせるような速度で、黒い塊が俺たちのマギシールドにぶつかって来る!

 これが火ツバメ!確かにツバメを思わせる細身の鳥だ。

 マギシールドに激突した鳥は、衝撃で落下していくが、後続の集団は急旋回して上昇していった。黒い帯のように去っていく。


「角度を変えて来るぞ!」


 再びペインさんの注意。

 下から溶岩虫、上から火ツバメ。中々面倒くさい。

 再び、火ツバメの集団が降下を始めた!

 ならば、一網打尽にしてやるよ!

 俺は火ツバメの集団に向けて右手を伸ばす!


「螺旋風!」


 俺の右手から出た突風が、渦を巻いて火ツバメの群れを襲う!

 火ツバメの群れは、その渦に飲み込まれて錐揉み状態だ。まるで黒い渦だ!

 俺が魔術を止めると、火ツバメはボロボロになって落下して行った。


「すごいなユーキ!」


 なんてことはない。竜巻の応用で、水平方向に竜巻のような風を出すだけなので、さほど苦労なく開発できた技だ。ネーミングは、もう振り切った。厨二と言いたければ言え!なお、今はこの渦巻の風に魔刃を混ぜる練習をしている。痛そうだ。


 すると今度はエドが、溶岩虫の対処が面倒になったのか、下に向かって思い切り広範囲に氷魔術を放った。瞬間で凍りつく溶岩虫。最初からやればよかったかな。


「君たちすごいね!」


 ジャスパーさんが感心してくれた。Sランクの魔術師から褒められたら悪い気はしない。


「上級の攻撃魔術師が複数いるとだいぶ楽になるな。せめて4属性は最低でも揃えたい。ウチももう一度魔術師を鍛え直そう」


 ペインさんの言葉にジャスパーさんとカイルさんが同意する。

 魔術師は近接戦闘をあまり得意としていない者が多い。そのため、ダンジョンの下層まで同行できる魔術師が少ないのだそうだ。それはそうだ。魔術師を護りながら戦闘しなければならないとなると、かなり攻撃に制限がかかる。少なくとも自己防御、回避程度の力は最低でも必要だ。

 俺とエドはメイデン師匠やフレッド団長のおかげもあって、両刀使いと言えるレベルになれた。辛かったけど・・・。


 こうして上下の懸念がなくなった俺たちは、スムーズに溶岩地帯を抜けた。

 次に現れた溶岩虫も、火ツバメも、同じ方法で片付けたのだ。火ツバメは、もしかしたら焼鳥にしたら美味しいかもしれないので、ある程度回収しておいた。

 溶岩虫?アメンボウは食べるところがないのでいらん!



 溶岩地帯のあとは、またゴロゴロと岩石が転がっている悪路が続く。

 途中何度か狼の群れなどの魔獣の襲撃に遭うが、このメンバーだといささかの苦戦もなく進んで行った。

 午後3時ころになり、ペインさんが停止した。


「これだけメンバーが揃うとさすがに楽だな。時間は早いが、今日の宿に案内しよう」

「宿?」

「セーフティエリアが見つからないからね。俺たちが作った休憩場所だよ。楽しみにしといてくれ」


 そう言って、ペインさんは進行方向を90度変えた。

 カイルさんもジャスパーさんもニヤニヤ笑っている。


 30分ほど岩山を下ると、頑丈そうな壁が見えてきた。

 おお、あれ作ったのか。


「さあ、我が家へようこそ!」


 ペインさんがおどけた様子でお辞儀をしながら壁を示す。

 え?どこから入るんだ?


「続いてくれ。中にいいものがあるぞ」


 そう言って、ペインさんたちは天駆で壁を越えて行った。

 なるほどね。このメンバーなら入口はいらないか。


 壁を越えると、中にはコンクリートの打ちっ放しのような四角の建物があった。


「俺たちは、このエリアの探索のとき、ここを拠点にしてるんだ。夜は大型魔獣も活動しないからね。中に入る前にこっちに来てくれ」


 ペインさんは、建物の裏手に俺たちを案内した。

 そして、そこには!


「温泉じゃないですか!」


 そこには湯気を立てて誘う天然の大きな露天風呂があった!やった!温泉大好き!


「中々だろう。疲れが一気に取れるぞ!」


 アルタイル王国に温泉はない。大陸南部の国の旅行記などで紹介されるくらいだ。


「これが温泉か。本当に自然にお湯が沸いているのか!」

「すごいな!一度温泉って入ってみたかったんだ!」


 コーザさんとエドが興奮した目で露天風呂を凝視している。


「さあ、とりあえず中で休んでから、皆んなで温泉に入ろう」


 建物の中は土魔術で作ったベッドやテーブルがあるだけの殺風景な部屋だった。


「ここは全部ジャスパーが作ったんだ」

「僕の属性は火と土でね。火は、ここの魔獣にはほとんど役に立たないから、ここで頑張ったんだよ」


 ジャスパーさんが苦笑しながら言うが、一人で作ったんだよね。やはり相当な魔術師であることがわかる。


「君たちが探索するときも、ここは自由に使ってくれて構わない」

「ありがとうございます。だったら、こっちも寄付しておきます」


 そう言って、俺は大きめのテーブルと椅子をストレージから取り出した。


「それはありがたい。やはり土のテーブルだと少し味気ないからね」


 ジャスパーさんは、そう言いながら土のテーブルと椅子を魔術で土に戻した。


 俺はテーブルにコーヒーとクッキーを出してから、思いついたことがあったので、ペインさんたちにお願いした。


「あの、温泉の周りなんですけど、少し使いやすいように作り変えていいですか?」

「ん?構わんが、何をやるんだ?」

「それは見てのお楽しみということで」

「そうか?ユーキのやることだ。悪いことにはならんだろう。好きにしてくれ」


 ペインさんの許可を得て、俺はいそいそと温泉に向かう。

 ジャスパーさんが面白そうだと言ってついてきた。

 まず、風呂の周囲だな。

 俺は土魔術で、いい具合に適当な大きさの角のない岩を作りながら、風呂の周囲に設置していく。


「これは何をやってるんだい?岩の大きさは揃えないのか?」

「はい。わざと不揃いにすることで、自然な感じと美しさを出そうかと」

「なるほど。僕も手伝っていいかな?」

「もちろん!是非お願いします」


 それから、ジャスパーさんと相談しながら、風呂の床を滑らかにしたり、風呂の中で腰掛けられる岩なども含めて、せっせと作業していく。


「おお!いい感じだ!これで完成かな?」

「いえ、今度はこの周りですね」


 そう、風呂の周りは剥き出しの地面なのだ。

 俺は、地面に不揃いの大きさで、石畳を敷いていく。


「こんな感じで風呂の周りで足が汚れないようにします」


 俺は風呂の周りに線を引いて、石畳を敷くエリアを示す。


「確かに。風呂に入ってもすぐ靴を履かなきゃいけなかったからね。よし、僕もやらせてくれ。このバラバラの大きさも、美的センスっていうやつかな」

「そうですね。モザイクの石のやつだと思ってもらえれば」

「こんな感じかな?」


 さすがジャスパーさん。美しい石畳があっという間にできる。


「素晴らしい!じゃあ、ここお任せしていいですか?俺、ちょっと別のを作りますから」

「ああ、任せてくれ」


 なんだかジャスパーさんも楽しそうだ。

 俺は、今度はストレージから、常備している木材を出す。久しぶりの木魔術だ。

 まず、作るのは木製ベンチ。のぼせないように一休みするため。

 次にテーブルと長椅子。夜は温泉に入りながら一杯やりたくなるよね。

 魔導ランプを吊るす立木。夜も入りたいでしょ!

 脱衣小屋もいるね。土魔術で壁を作り、木魔術で屋根を取り付ける。

 小屋の中には棚と脱衣カゴ。カゴと言っても、編めないので、木箱だ。

 小屋の床は板敷にする。

 そして小屋から石畳まで、飛び石を設置する。

 本当は周りに植栽したいけど、ここでは無理だな。

 せめて灯籠でも何基か作っておこう。

 そうだ、石畳の周りは土魔術で砂にしておこう。


 こうして、やや和風の露天風呂が完成した!

 ジャスパーさんも大喜びだ。属性はないけど、木魔術勉強しようと言っていた。属性なくても努力すればある程度は使えるからね。

 設置した立木に魔導灯をぶら下げ、灯籠には光魔術の照明球を入れておく。




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