第136話 全面火山地帯で溶岩ステーキ
翌朝、双翼のペインさんたちが37階を案内してくれることになった。一泊か二泊の予定だ。
こちらとしては、早く地上に戻ってクランの人たちを安心させた方が良いのではと思ったが、ペインさんは、ちょうどいい機会だから、35階までの攻略をやらせておこうと言って笑っていた。いいのか?
もっとも、本当の理由は怪我をしていた二人の回復待ちだろう。二人は目を覚まして怪我がすっかり治っていることに驚き、そして例によって泣いて感謝してきた。ただ、食事もままならない容態が続いていたこともあり、体力の低下が著しかった。帰還するには36階を戻らなければならない。なので、2、3日は様子を見ようということになったのだ。
37階に入ると、サバンナとは違う熱波と息苦しさにさらされた。
ゴツゴツした岩山地帯。遠くにいくつも見える白い噴煙を見せている活火山。
ヒエー、火山って一つじゃないのかよ!
「こんなところに魔獣なんているんですか?」
「普通にいるぞ。ここでしか遭わないから名前なんてわからんが、クマ系、猿系、鹿系、鳥系、それに昆虫もいるぞ」
俺の問いにペインさんが色々教えてくれる。
昆虫かぁ。そういえばヨウガンコオロギとか、ハワイにいたな。
「途中の洞穴にはまた別のヤツがいるし、ヤバいのはなんと言っても火を吐くトカゲだな。本当にトカゲなのかは知らんが、俺たちは火吹きトカゲと呼んでる」
火を吐くトカゲ。サラマンダーかな?トーダの仲間じゃないか?
(ワイは龍や!)
知ってるけど、普段はトカゲじゃないか!
「個体としての強さは36階の方が上かもしれんが、何しろ戦う環境がひどい」
岩山の上り坂を歩く俺たちの横で、いきなり岩の隙間からシューッとガスが噴き上がる。
「こんな感じだ。吸い込むなよ、毒だ。触れると火傷もする。戦闘中もいかなり噴き出してくることもある。トラップみたいにな」
独特の刺激臭。二酸化硫黄ガスかな。
「何か来ますね」
俺がそう言うとペインさんたちが驚く。
「ウチのサム並みの探知能力だな」
サムさんは、怪我がした斥候の人だ。ランカスターナンバーワンと言われる斥候らしい。
数分で俺たちの前に3頭の鹿が現れた。角まで合わせれば対高は3メートル。真っ赤な毛に覆われている。鹿のくせに牙があるな。
「やってみるかい?ここの連中は火には滅法強い」
ペインさんの言葉に俺たちは一歩前に出る。
お試しだ。ここの魔獣にどれくらい通用するかな。
ジャンプして襲いかかる鹿に魔弾機関銃を浴びせた。
ドサッと落ちる3頭の鹿たち。
一撃で殺せたのは1頭だけか。眉間を撃ち抜いたヤツだけが絶命している。
そこにエドとコーザさんが一瞬で近づき、剣一振りで鹿の頭を落とした。
「さすがだな」
特に驚くでもなくペインさんが言う。まあ、ここまで来てるんだからね。このくらいは当然だろう。俺の魔弾もだいぶ強くなったね。最近は、魔弾ではなく土魔術で作った石の弾丸や、鉄の弾丸を練習している。魔力を弾く相手もいるので、物理的な物質による攻撃にしたいのだ。ただ、魔力を固めるのと違って、少し時間がかかる。今の課題だ。
次に現れたのがヨウガンコオロギの群。いや、本当にヨウガンコオロギかは知らないけどね。
コイツらが、上空を黒い絨毯のように覆って、俺たちに襲いかかってきた。
しかも腹の辺りは赤く光っている。触ると火傷するヤツだな。いや、昭和の不良少年じゃなくて。
俺とエドは、ヨウガンコオロギの群れに氷魔術を放った。
ボトボトと落ちていくヨウガンコオロギ。
地面に落ちた群れに向かって、念のためもう一度氷魔術を放つ。完了。
「すごいね。コイツに群がられると全身火傷なんだ。魔装も破ってくる。君たちの倒し方が正解なんだけど、ユーキの属性は?」
魔術師のジャスパーさんが興味深そうに聞いてきた。
「全部です」
「全部!」
「治癒が一番得意ですけど」
「はあ、エドは?」
「火、水、風、土の四つですね」
ジャスパーさんがため息をつく。
「すごいね、君たち。それだけの属性持ちが二人いれば、大抵のことに対応できそうだね。普通のパーティは、何人かの属性の異なる魔術師を複数集めて対応せざるを得ないんだよ」
「なるほど。そういう意味では便利ですね」
ウチはケビンも真司も属性多かったな。恵まれたパーティなんだね。人に言われて気がついたよ。
ちょこちょこ現れる魔獣を倒しながら進んで行く。
さすがにこれだけのメンバーが揃うと苦戦はしない。
「君たちランクはどうなった?」と、ペインさんが聞いてきた。
「全員Aです」
「そうか、・・・Aでもランク詐欺だな。今度ウチからS昇格の推薦を出しておくよ」
ペインさんたち3人はSランクだ。そしてSに昇格するためにはSランク冒険者2名以上の推薦がいる。
「でもAランクもまだ昇格したばかりですから」
「それは関係ない。実力がすべてだ」
「ギルドの仕事もやってないしなぁ」
「スタンピードを抑えただろう。十分だ」
「あれはギルドというより領の仕事で」
「ギルドでも動員かかったぞ。ガタガタ言うな。今は、魔獣の動きがおかしい。森の生態系の変化やスタンピード。それに、ウチの情報部によると、帝国の動きや、国内のおかしなヤツの動きもきな臭い」
大きいクランだと情報部なんてあるのか。それに帝国?それは初耳だ。
「冒険者は独立だといくら言っても、俺たちはアルタイル王国の国民だし、何よりランカスターの人間だ。いざとなれば、俺たち冒険者は国や領の第二の戦力だ。領民だって期待している。Sランク冒険者の存在は、ランカスターの力を示すことになるし、他国や他領に対する抑止力にもなる。だから実力のある者は、それ相応のランクを得るべきなんだ」
「道理だな」
おお、コーザさんも賛成なのか。コーザさんは元近衛騎士だもんね。こういう思考は馴染むのだろう。
「でも、護衛とか、冒険者の他の仕事の経験もありませんよ」
「君たちが誰の護衛をやるんだ?王族か?商会の護衛なんかは専門の奴らに任せておけ」
「あ!そういえばザックさんはAランクだったような」
ペインさんが苦虫を噛み潰したような顔になる。
「ザックか。あいつパーティメンバーがB、Cなんで、気を遣って昇格を拒否してるんだよ。実力ならとっくにトリプルSだろう」
「トリプルSなんてあるんですか?」
「ないよ。Sが一番上だ。まあ、ザックは放っておけ。アイツがS以上なのは皆んな知ってる。アイツはランクじゃなくて、名前だけで通るヤツだから」
そんな話しをしながら進むと、目の前に溶岩が流れている場所に到達した。
「ここから先はエアウォークで進むことになる。君たちは大丈夫だよな」
「はい」
「ルクスとシャトルは?」
「大丈夫です。できます」
俺の答えにペインさんたちが感心する。動物だからね。驚くよ。
ところで、ランカスターでは、エアウォークって言ってるんだ。少し嬉しくなる。
「じゃあ溶岩地帯を渡る前に、そこの洞窟で昼飯にしよう」
ペインさんの指示を聞きながら、俺の目は、目前の固まったばかりの溶岩に釘付けだ。
試しに水魔術で水を垂らしてみる。
ジュッという音を立てて、水が蒸発する。
おお、いけるんじゃないか?
ウズウズ。
試してみよう!
俺はストレージから、切身のランペイジブルの肉を取り出すと、固まった溶岩の上に乗せてみた。
ジューと音がして、肉の焼ける、たまらない匂いが広がる。
素晴らしい!天然の溶岩ステーキだ!
俺は塩胡椒を取り出して、いそいそとステーキを焼き始めた!
肉の匂いに釣られて、皆んなが集まって来た。
「おいユーキ、何やってんだ?」
「見ての通り!肉焼いてます!」
「もしかしてそれランペイジブルか?」
「正解!食べますか?」
「食う!!!」
そこで、テーブルと皿を出して、そこに人数分の肉を出す。お
「じゃあ皆んな自分で好みに焼いて下さい!」
こうして、天然溶岩ステーキの大昼食会が開催された!めちゃくちゃ美味かった!




