第135話 休憩
「ネームレス?聞いたことがないが、もしかしてユーキとエドか?」
「そうです」
「やっぱりそうか!そうか、ここまで来たんだな。君たちにはウチの者が世話になった。いつか会って礼を言いたかったんだ」
「お礼は別にいりませんが、とりあえず自己紹介させて下さい。ネームレスのユーキです。よろしくお願いします」
家名は名乗らない。冒険者として付き合おうという意思表示だ。
エドとコーザさんも続く。
「同じくネームレスのエドです」
「コーザだ。よろしく頼む」
コーザさんの名前に双翼の人たちが反応する。
「もしかして王国五剣の」
「元だ。今はユーキの配下のただのコーザだ」
「配下じゃないよね!パーティでしょ!」
「そうとも言う」
何言ってんだ、このオッサン!
「ああ、すまん。コーザさんの名前に驚いてしまった。俺は双翼の共同代表をしている、弟の方のペインだ。君たちに会えて嬉しいよ」
俺より身長は10センチくらい高い。185センチくらいかな。
御多分に洩れず金髪のガッシリしたイケメン。目はエメラルドグリーン。敵の一人だな。
「俺はカイル。メインは盾役だ。よろしくな!」
次は2メートル超えの黒髪、黒髭の大男。目はブラウン。この人はモテないな。仲間だ!
「僕はジャスパー。魔術がメインだ。エド、久しぶりだね」
「お久しぶりです、ジャスパーさん」
貴族か。ペインさんと同じく185センチくらい。ブラウンヘアにブラウンの目。魔術師とはいえ、がっしりした筋肉質の体躯。接近戦のできない固定砲台の魔術師では、ダンジョンの下層は潜れない。
全員30歳前後かな。さすがに強そうだ。
「あっちの二人は怪我をして寝かせている。情けないところを見せるが許してくれ」
「怪我ですか」
「ああ、37階の途中でね」
「治癒は?」
「やられたのが治癒師と斥候だ」
「それはまた。よければ俺が診ましょうか?」
「・・・君には以前もウチの者が助けてもらったんだよな。迷惑をかけるが頼めるか?どうにも身動きが取れなくなって困っていた」
「全然構いませんよ。同じランカスターの仲間じゃないですか」
俺は寝かされている二人の元に歩み寄る。
何だ?顔中すごい火傷だ。
かけられた毛布を取ると、全身火傷の重症だった。しかも一人は片足が潰れている。
「これはひどいですね。いつからですか?」
「1週間前だ。とりあえず、ジャスパーの治癒魔術とポーションで凌いでいるが、ジャスパーは治癒が専門じゃないんで、現状維持が限界なんだ」
「わかりました!事情は後にして、すぐ治療を始めます!」
どちらが治癒師か斥候かわからないが、とりあえず片足の潰れている人から始める。
服を脱がせて、頭部から順に治癒魔術をかけていく。
これだけの火傷だと、再生修復になるので少し時間がかかるが、それでも数分で光が収まると、綺麗な肌に戻っていく。
周りで息を飲む気配がする。初めて見るとびっくりするよね。
この調子で、10分程度で二人の治療が終わった。
二人の呼吸も落ち着いて、顔色もいい。
ただチリチリの髪の毛だけは戻らない。なぜだ!
「終わりました。もう大丈夫です。体力消耗で寝てるだけですから、目を覚ませばすぐ元に戻ります」
「すげぇ・・・」
誰かが小さく漏らす。
「あ、・・・聞いてはいたが、・・・すごい治癒だな。ユーキ、本当にありがとう!」
ペインさんが俺の両手を握りしめて、涙目になっている。
「気にしないで下さい。たまたまですから。それよりこの状況はどうしたんですか?魔獣ですか?」
「いや、魔獣じゃないんだ。実は、君たちも行けばわかるが、37階は火山地帯なんだ」
ペインさんの話しでは、37階は、彼らがこれまで探索した限り、全面火山地帯だと言う。
もう数ヶ月にわたって色々なルートを探索しているが、ある地点まで到達すると、必ず近くの火山が噴火して、足元には溶岩、頭上からは火砕流が降り注いで来る。それが何時間も続き、先に進めない。何とか進めるルートを探そうと、色々な方向から攻めてみるが、これまでことごとく噴火に遮られてきたそうだ。
今回は、魔獣との戦闘中に噴火が起こり、ジャスパーさんのマギシールドの傘に入り損ねた二人が、モロに火砕流の餌食になってしまったようだ。よく生きてたね。
「35階に戻るのは?」
「戻ろうとしたが、動けない二人を抱えての移動だ。全滅覚悟になる。それに今はロングノーズが出ている」
「ロングノーズ?」
「君たちは遭わなかったか?体高10メートルくらいの巨大な化け物で、鼻が地面につくくらい長い」
「ああ、アレ!ロングノーズって言うんですか」
「いや、俺たちが勝手につけた名前だ。君たちも逢ったのか。アレはヤバい。とても倒せる気がしない。アイツが出なくなるまで、ここから動けないんだ。怪我人がいなければ逃げ切れるんけどね」
「あ」
俺はエドとコーザさんの方を見る。二人が苦笑している。
「ん?どうした?」
ペインさんが俺とエドたちを交互に見る。
「あ、まあ、その、ロングノーズですか?それなら倒しました」
「え?何だって!」
「多分同じヤツだと思います。ここに来る途中、さっき倒してきました」
そこから大騒ぎになった。
象の特徴を説明すると、間違いないということになり、それをストレージに入れてると言うと、どんなストレージだよ、と驚かれ、倒し方を説明すると驚愕された。コーザさんの全身骨折だけが共感を得られた。
そこからは、話しが盛り上がり、打ち解けてきたので、例によって宴会だ。
俺がダンさんの店のランペイジブル料理を出すと狂喜乱舞された。やっぱり人気だね。
ペインさんたちは、とりあえず救援を待っていたところらしい。
35階の転送エリアに20日間戻らない場合は、待機部隊が地上に戻り、救援要請することになっている。それで35階から人がいなくなっていたんだね。
ただ、35階まで到達したメンバーが他にいないので、アンデッドエリアを攻略してからの救援になる。救援到着がいつになるかわからないので、そろそろ一か八かやらざるを得ないかと考えていたときに、俺たちが現れたというわけだ。間に合って良かったよ。
今ごろジャッキーたちアンデッドに苦しんでるぜ、と大笑いしているけど、それでいいのか?
すると、これまでアンデッドや臭いにビビって攻略が中途半端だったから、35階まで来るメンバーを増やすにはいい機会なんだと言っていた。確かにあそこは根性勝負みたいなところはあるからね。
ジャスパーさんがストレージ持ちなので、食糧に余裕はあったそうだが、この日は俺のストレージから放出した料理や酒で盛り上がった。ルクスもシャトルも人気者になってたよ。
例によって風呂も出し、皆んな大満足で眠りについた。




